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窓際の少年
観光情報雑誌の記者という職業柄
全国を飛び回ることが多い。
今回も
2泊3日という期間で
とある地方の取材に訪れていた。
取材先の旅館に挨拶を済ませて
提供された部屋に着き一服していた。
有名な観光名所はないが
地方の特産物が有名で食材の豊富な町だ。
とりあえず
ここまでの感想をレポートにまとめようと思い、
部屋の窓をガラガラと音をたてて開けた。
「おねーさん、こんにちは」
窓を閉めた。
疲れているのだろうか。
窓の外に学ランを着た少年がいた。
ここは3階。
ベランダはない。
よって少年は浮いている。
少年はニュートンもビックリの重力を無視した
見事な空中浮遊状態のまま、
窓の向こうでアホ面をしている私に
「あれ、俺のこと見えてんだね」
と爽やかに微笑んだ。