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新時代の最強英雄 ~支配されていた監禁令嬢、伝説の魔法〈秘奥義〉で無双する~  作者: 雪柳 澄
1章 監禁魔法からの脱走。

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第09話 憧れの冒険者

 爆風によって巻き上げられた訓練場の土。


 いまだに地面の周辺には粉塵が漂い、ほんのりと土の臭いが漂う。


 自分の予想を遙かに越えたレクセイナの強さに、思わず見とれてしまった。


 最初の攻撃で頑丈な魔導具の大部分が破損していたが、セレカがボーッとしている間に放たれた追撃で、完全に壊れていた。


「なにこれ……。凄いんですけど……」


 攻撃を受け止めて、その強さを測定するような機械だ。


 とてつもなく耐久性は高く作られているし、実際にセレカは試験を数え切れないほど見てきたが、誰1人として魔導具に傷一つ付けることは出来なかった。


 それが、ドロドロに熱せられて溶けているうえに、真っ二つに切断されている……。


 己の目を疑いたいくらいだ。


 魔導具が修復不可能な位に壊してしまったことで、受付嬢のセレカは始末書を書かないといけないことも忘れて、レクセイナの強さにウットリする。


「あ、あのぉ……?」


 試験の結果を仰ぐように、セレカを見ていたレクセイナは困惑した表情を浮かべる。


 まだ攻撃が足りないのだろうか?


 すでに魔導具は、破壊している。これ以上追加で攻撃してしまうと、魔導具が金属片になってしまうけど、いいのかな……。


 それでも更に攻撃を仕掛けるべきか迷っていると、やっとレクセイナの戸惑った声に、セレカが声をかけた。


「レクセイナさん、十分です。素晴らしいっ!!」


「ありがとう御座います!」


 レクセイナは金属片に魔導具をすべく、練り上げ始めていた魔力を解いた。


 好感度の高い反応に、冒険者カードが欲しいレクセイナがソワソワと結果を待っていると、セレカは受付嬢の仕事で磨き上げられた満面の笑みを浮かべた。


「はい、これで()()()()()試験は終了しました。合格です!」


「……えっ?」


 レクセイナの強さなら、どう見ても明らかに合格だ。


 これで、きっと将来には私の昇進に貢献してくれるような高ランクの冒険者まで成長してくれることだろう。


 これが登録試験だったことを何食わぬ顔で告げてくるセレカに、レクセイナは状況が把握できずに目を瞬かせた。


「おめでとう御座います」


 追い打ちをかけるかのように告げられる、祝いの言葉。


 やっと自分が受けてしまったのが、最初の受付カウンターでは断った冒険者になる為の試験だと言うことにレクセイナは気づく。


「えっ、ええと、私はお土産に冒険者カードが欲しかっただけなんですが……」


 冒険者になるつもりが全くなかった私は、困った表情を浮かべる。


 憧れの冒険者。


 だけど、お父様とお母様の監視の目を抜け出して、今日は何とかコッソリと市井を訪れられたのだ。


 どんなに冒険者になりたかったとしても冒険者として私が活動するのは、現実的には厳しいだろう。


 満面の笑顔で、()()()()の合格を伝えてくれた受付嬢にどうやって断りの言葉を伝えようかと考える。


 しかしレクセイナの考えていることは、思いっ切り顔に出ていた。


「試験の判定が終了した後に、冒険者登録の取り消しは出来ません。それでは、受付カウンターに戻って、登録に必要な事項の記入をお願いします」


 さらさらと流れるようにセレカは言うが、もちろんコレもレクセイナを冒険者にさせたいセレカの嘘だ。


 登録の取り止めは、本人の意志で自由に行うことができる。


 冒険者になってもらわなきゃ、困るのだ! 私が仕事の給料はたっぷりと頂きつつ、呑気にサボる地位に就くためには!


「はぁーっ。俺は驚いたぜ……。まさか、登録試験でこんな魔法が放たれるとは思ってもいなかった。不意打ち。不意打ち」


 試験が始まる前までは、壁に背を預けて座っていた冒険者が2人が話している元へやってくる。


 レクセイナがその辺の初心者だと油断していたからだろうか。顔も装備も、すっかり土まみれになっていた。いつも試験を座って眺めやって。ザマァ見ろ、と内心セレカは笑った。


 だが、そんな試験官の冒険者も、セレカが新たについた嘘には気づいているだろうに、何も言ってこない。


 それどころか、「こんな野良のバケモノ、ぱっぱと冒険者にしておけ」とでも言うような、視線の圧を感じる。


「レクセイナさん。冒険者としては、1年に1回は依頼を受けて頂くか、継続金をお支払いして頂くだけでいいのですよ?」


 そうだろう。試験官の冒険者も、魔道具をぶっ壊すようなレクセイナさんの強さを見て、そう思うだろう。パッパと冒険者になってしまえ、レクセイナ。


「1年に1回か、継続金のどちらかだけ……?」


 やはり冒険者について、何も知らなかったのだろう。レクセイナが、小さく反芻する。それならば、私でも冒険者をできるかもしれない。


「そうですよ。それだけです」


「それは、本当だぞ。せっかく試験を受けたんだし、冒険者になっておけよ」


「こんなにも強いのに、勿体ないです」


「そうだな。冒険者になったら、一大活躍待ったなしだ」


 レクセイナを冒険者にするということに、セレカと試験官の目的が一致する。


 冒険者に憧れていたレクセイナが登録を受け入れるのに、時間は大して必要なかった――。

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