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新時代の最強英雄 ~支配されていた監禁令嬢、伝説の魔法〈秘奥義〉で無双する~  作者: 雪柳 澄
1章 監禁魔法からの脱走。

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第06話 カモがネギを背負って歩いてる(?)

 扉を開けると同時に、外にまで流れ込んでくる熱気。


 冒険者たちの喧噪。


 これから依頼に向かおうとしている完全装備の冒険者たちが、壁一面にビッシリと貼られた依頼の脇を通り過ぎ、レクセイナの横をすれ違って、ギルドから出て行く。


「……すごい。ここが、冒険者ギルド」


 ギルドの重い扉を閉めながら、私は建物をグルリと見渡す。


 入り口の近くには、年期の入った大量のイスとテーブルが置かれている。一部の使われていない物は隅の方に乱雑にグチャグチャと山積みされていて、適当感が溢れている。


 そこから、持ってきた木製の椅子に座りながら、複数の冒険者パーティーがジョッキを浴びるように飲んでいる。


 片手で持つのも大変そうな位、大きな酒ジョッキなのに、どの席でも空っぽのジョッキが幾つもテーブルに転がっている。


 命を預け合って戦い、酒を酌み交わして共に過ごす仲間。熱気に溢れて、漂ってくる度数の高いアルコールのニオイ……。


 この一瞬を最高に楽しく過ごしている職業。冒険者。


「うわぁ……。凄いなぁ~」


 監禁魔法によって束縛された生活の中で、夢にまで見た場所だ。


 沢山思い描いて、想像して、期待していた通りの光景が広がっていた。嬉しすぎて、「凄い」以外の言葉が出てこない。


 冒険者ギルドを実際に目で見ることが出来た時点で、すでに充分すぎる位満足していたが、やっぱり冒険者と言えば、冒険者カードだ。


 冒険者カードは、どこに行けば買えるのだろう?


 何も分からないレクセイナは、取り敢えず近くのテーブルで豪快に酒を飲んでいる冒険者の一団に話しかけてみる。


「すいません、冒険者の皆様。冒険者カードが欲しいのですが、どこでもらえるでしょうか?」


「ん? おおっ」


「これは、これは……」


「……いいな」


 話しかけられた男の冒険者たちが、振り返ってレクセイナを見ると感嘆の声を漏らし、熱が篭もった視線で見る。


 ポニーテールで1つに、高くまとめ上げられた黒髪は切れ毛の1つもない。美しく手入れがされた髪は、質素な服の上からでも分かる上品な胸の上まで流れている。


 好奇心が宿るレクセイナの瞳は、ブラックダイヤモンドの様な高貴で美しい輝きを放ちながら、憧れの冒険者たちを映している。


 男の冒険者たちと同じテーブルについていた女の冒険者が、咎めるように声を上げる。


「おい、ちょっと。オマエら!」


 確かに女の自分から見ても、綺麗な女の子だった。


 端正な顔立ちで、目鼻立ちが整っている。何も分かっていなさそうな純真無垢な感じも、余計に可愛さを押し上げている。


 そんな若い女の子から声をかけられ、質問されたことにも答えずに、ボーッとしている仲間の男どもに代わって、女の冒険者は答える。


「冒険者カードだね。それなら、向こうのカウンターで取得できるよ」


「はい、ありがとう御座います!」


 レクセイナは冒険者から返事をもらえて、嬉しそうに頷く。


 席で唯一の女の冒険者が指差した建物の奥には、確かに手続きを行っているように見える受付があった。


「……頑張りなよ」


 女の冒険者も男たちをたしなめる一方で、自分自身も彼女の可愛さにやられているのを感じた。


「だって、アーリア。彼女、めっちゃ可愛いじゃん」


「あんなに美人な子に話しかけられたの、俺、初めてだわ」


「俺も。ヤバいくらいに可愛かった」


 冒険者に教えてもらった通りに受付カウンターに向かうレクセイナの後ろ姿を、男の冒険者たちはチラチラと見る。


 美人に話し掛けられたという興奮を抑えるかのように、男の冒険者たちは女の冒険者に呆れた表情をされつつ、感想を交える。


 だが、声は抑えられていたからか、胸を高鳴らせて受付カウンターに向かうレクセイナが気づくことはなかった。



 受付嬢の主な仕事は、冒険者の依頼手続きと冒険者登録だ。


 多くの冒険者が受注カウンターには来ていた。レクセイナは、ちょうど前の冒険者が立ち去って手が空いた受付嬢を見つける。


 冒険者ギルドを観光に訪れた自分へのお土産として、冒険者カードが欲しいが、ここで合っているだろうか?


 冒険者ならば持っている冒険者カードを、私はせっかくなら手に入れたかった。


 紺と白の制服を来た受付嬢の元へ向かう。


「すいません、冒険者カードが欲しいのですが」


「冒険者登録ですね。それでは、こちらの紙に名前とメイン戦闘職業を書いて下さい」


 一枚の紙が目の前に差し出される。紙には名前や、メイン戦闘、年齢など、簡単な項目が並んでいた。


「いえ。冒険者登録ではなく、冒険者カードを買いたくて来たのですが……」


 受付嬢は手元を止めると、少し渋そうな顔をレクセイナに向けた。冒険者カードは、お金で買える物ではない。


 冷やかしか? と、一瞬頭によぎった。


 酒の入った冒険者が受付嬢に絡んでくるのは、日常茶飯事だ。


 だが、オドオドとした表情のレクセイナを見た受付嬢は、頭によぎった考えを直ぐに捨てる。


 何も知らないようにレクセイナが見えた受付嬢は、丁寧に説明する。


「冒険者カードは冒険者しか保持することが出来ません。なので一般市民が購入することは出来ないんですよ。冒険者カードは、持っているだけでステータスとなりますからね」


「そっか……」


 落胆の表情でレクセイナは答える。どうやら冒険者カードをお土産として、手に入れられないらしい。


 冒険者に憧れている。多くの戦いを繰り広げ、人生を最高に楽しむ彼らに。


 だが、冒険者なるつもりはなかった。


 今回は外の世界に出かけることが出来たけれども、次はいつお父様とお母様が外出して屋敷を不在にするのかは分からない。


 1日後かもしれないし、半年後かもしれない。お父様とお母様が出掛けるタイミングを見計らって、外の世界へ私も抜け出すのだ。


 だから私には、冒険者活動を行うのは難しい。


 受付嬢に礼を言って、レクセイナは諦めて帰ることにする。冒険者ギルドを観光しただけでも、満足できたのだ。


 冒険者カードをゲットできなかった心残りは少しあるが、冒険者しか持てないなら仕方がなかった。


 だが、そんなレクセイナを後ろからガラの悪い声が引き留める。そして、肩にドスンとぶつかる軽い衝撃。


 顔を上げると、そこにはニタニタと気持ち悪い笑みを浮かべた冒険者の男がいた。


「オイオイ、お嬢ちゃん。肩ぶつかったんだけど? 喧嘩売っているのかぁ?」


 その声に応えず、レクセイナは漆黒に輝く瞳を不快そうに細めた。

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