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新時代の最強英雄 ~支配されていた監禁令嬢、伝説の魔法〈秘奥義〉で無双する~  作者: 雪柳 澄
1章 監禁魔法からの脱走。

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第04話 監禁魔法の解除を目指せ

「はぁ……」


 部屋の片隅にある、寛ぐために用意されたソファーに座りながら、レクセイナはため息をつく。


 テーブルには、紅茶と美味しそうなスコーンが置いてあった。


 屋敷のシェフによって丁寧に焼き上げられたスコーンは、窓からの光を表面の焼き茶色が反射して輝いている。


 スコーンには、イチゴジャムも丁寧に添えられていた。


 だが、焼きたてで甘い匂いを纏っていたスコーンも、白い湯気が立っていた紅茶も、すっかり冷め切ってしまっていた。



 アンチ魔法の習得に、予想以上の時間が掛かっているのだ。


 作っている最中の刺繍に、視線を落とす。


 魔法の習得自体には、そこまでの時間は必要ない。


 今回、監禁魔法を解除するために学ぼうとしている魔法よりも、以前に興味から習得してしまった魔法の方が、難易度は高かった。


 私が昔に家庭教師から教えてもらった魔法は、どれも攻撃性の低い魔法ばかりだった。


 お父様とお母様は、万が一のことを考えて、私に攻撃手段を持たせないようにしようと考えているのだろう。


 だから、あの魔法書に書かれていた沢山の魔法の中で、一段と殺傷能力が高そうで、演唱文も如何にもバイオレンスな魔法に、興味が抑えきれなかったのだ。


 人生の大半の時間を、自分の部屋の中で過ごす生活。


 バイオレンスな攻撃魔法を使用する機会は、きっと訪れない。


 だけど、過去最高難易度の魔法を、自分の手にする過程は非常に楽しかった。また時間がある時に、攻撃魔法を習得しよう。


 魔法の習得に手間取っているのは、()()が原因だ。


 レクセイナは座っている膝の上に置かれた刺繍を、何とも言えない表情で見る。


 刺繍は半分ほどしか終わっていなかった。


 刺繍。それはアリバイ作りである。


「おのれっ! 過去の自分っ……!!」


 一日中部屋に篭もりきりの私は、とにかく、とにかく暇だったのだ。それは、非常に時間を無駄に持て余していた。


 家庭教師から教えられた魔法は簡単すぎて、直ぐに習得してしまったし、国の歴史などの暗記も楽勝だった。


 だから、なんとか暇な時間を潰すために、お母様とお父様に刺繍のプレゼントを最近は毎月のように贈っていたのだが、それが自分の首を今になって絞めている。


「なんで、あんな事を言ってしまったのだろうっ!」


 部屋には、レクセイナ1人しか居ない。


 普段なら召し使いの前でも、淑女らしくしている必要があるが、気にすることなくイラついた感情を口に出す。


 頭を抱えた私は、嘆くように天井を仰ぎ見た。


 だいたい過去の自分は、アホなのだ。


 脳ミソはスカスカの、超ポンコツ。


 なぁーーーんにも、何一つ考えて行動していないのだ!! ……いい加減にして欲しい。自分がやったことだけど!


 今すぐ過去に戻って、呑気に部屋で刺繍を楽しんでいる自分の脳天に紙束を丸めたバットで勢いよく叩き、胸ぐらを握って「バカやろー!」と罵倒したい。



 そんなことを考えながら、しょうがないので刺繍の作成を進める。


 監禁魔法を解除しようと企ていることが、親にバレてしまってはいけない。


 露見してしまったら、より自由のない管理下に私は置かれることになるだろう。


 仕方ないので、アリバイ作りが優先だ。刺繍なんて、直ぐに終わらせてやる。刺繍、得意なんだからっ!



 少しでも今日に刺繍を終わらせられるよう、まずはエネルギーチャージからだ!


 レクセイナは、先ほどまで一切手をつけていなかった紅茶とスコーンに手を伸ばす。


 紅茶はすっかり冷めてしまっていたが、口に含むと滑らかなミルクと一緒に香り高い紅茶の香りがいっぱいに広がる。


 喉を潤して、次に別皿で用意されていたスコーンに手を伸ばした。


 ガブッと、お母様に叱られない程度に大きく口を開けて、イチゴジャムをつけたスコーンを頂く。


 まどろっこしくない程度に砂糖で煮詰められているイチゴジャムを、ふかふかスコーンと一緒に食べることで、元気が一気に湧いてきたのだった。




 ***




 食事を食べた後の昼過ぎ。


 基本魔法を何個も重ねがけしたことにより、防音性が高まった自分の部屋の中で、レクセイナは緊張した面持ちをしていた。


 防音の魔法が正しく機能しているか改めて確認し、監禁魔法の解除に失敗して反撃の魔法を強く食らった時のことを考えて、さらに部屋を守る魔法を張っておく。


「よしっ」


 これならば、何が起こっても大丈夫だろう。準備万端だ。


 私は解読した魔法文字をビッシリと隙間なく書き込んだノートを片手に最終確認をする。


 部屋の端から端まで、目に見えない状態で敷かれている監禁の魔法陣は、水属性の魔法を中心として構成されているが、補助として他の属性魔法も使用されている。


 そのため、最終的には書庫で新たに習得したアンチ魔法【浸食の土煙】で監禁魔法の解除に挑む。


 だが、中核の魔法より先に解除しなければいけない他の属性魔法は、すでに私が習得していた魔法を組み合わせて解く。


 複雑に構成されている魔法陣だ。


 解除の順番を1つでも間違えれば、反撃の魔法が飛んでくる。


 そして普段の解読で使用している下級魔法と違って、魔法陣を解除できるような魔法を途中で攻撃判定されたら、普段の水鉄砲とは比較にならない反撃が飛んでくると思う。


 ゴクリ、と生唾を飲み込む。


 自分が緊張していることが、部屋の隅に置かれている全身鏡を見なくても分かった。


 それでも、つかの間の自由を手に入れるには、監禁魔法は解除しなければいけない、自由への道を塞いでいる壁だ。


 覚悟を決めて、書き込んだノートを脇に置いておく。


 息を一回大きく吸い込む。


 自分ならできると信じて、レクセイナは演唱を始めた。


「【木魔法・ソイフィス】、【木魔法・レイフィス】、続けて【水魔法・ホノバレイフィス】……」


 解除の演唱を始めた瞬間。

 部屋に敷かれていた監禁魔法の魔法陣が魔法に反応して、可視化。床から数センチ浮き上がった空中に現れる。


 ブワッ、とこれまでに見たことがないような強い青の光で輝き始めた魔法陣は、確実にレクセイナの解除魔法に反応していた。


「……【火魔法・「炎の光る場所に全ては無に帰する」コラファリア】」


 焦ってはいけない。


 まともに普段は運動していないせいか、この短時間の間に、汗が滲み始めているのが分かった。分かっていたけど、結構つらい。


 魔力も勢いよく削られていく。


 だけど、大丈夫。予想の範囲内だ。


 きっと大丈夫だ。


 私の魔力量なら、解除に必要な全ての魔法を使える魔力は持っているはず。



 魔法陣の端から、青く光り輝く魔術文字が浮かび上がっては解け、そして宙に消えていく。


 もし失敗したら、どうしよう。

 お母様や、お父様にバレてしまったら?


 次々と頭の中に湧き上がってくる不安を必死に頭の隅に追いやり、目の前の魔法陣になんとか集中する。


 どんどん削れていく私の体力と、魔力。心の中では不安と戦いながら、暗記した順番通りに解除の魔法を使っていく。


 部屋の隅から隅まで、巨大な魔法陣だった監禁魔法は、レクセイナが立っている部屋の中心部分まで小さくなっていた。


「【サニ・エンラルフエ・リー・ナルセ・ドー・メルラッサ……】」


 独特な演唱文を口ずさみ、このために新しく習得した書庫の魔法を行使していく。


「【……ノレスダ・ダレート・ル・トルッサ・サニ・エントルフ】」


 知らない外の世界へ、行ってみたい。


 部屋の外に広がっている世界を知って、自由に駆け回りたい。


「【木魔法・ダレヌ】……!!!」



 魔法が完成した瞬間。魔法陣が大きく光を放った――――。

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