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新時代の最強英雄 ~支配されていた監禁令嬢、伝説の魔法〈秘奥義〉で無双する~  作者: 雪柳 澄
1章 監禁魔法からの脱走。

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第39話 お洒落に興味がない少女(美女)

 今日は部屋に5、6人の侍女たちが続々とやって来ていた。


 一着のドレスを私の部屋に運び込む。


 だが、ドレスに付随する同じ薄黄色の帽子や、小さな鞄、派手すぎないように抑えた薄黄緑色の靴まで、全て一式を運び込んでいるので、さながら引っ越しのようにも見える。……私は引っ越しなんて、したことないけど。


「レリア、私をお洒落に目覚めさせようとしているの?」


 数日前にレリアとした会話を思い出す。


 少なくとも今の私にとって、お洒落なんて面倒くさいだけだ。


 他の侍女と協力して、せわしなく部屋を出入りしているレリアを、ジト目で見る。


 私は手伝うわけにもいかないし、部屋の外にも出れないので、部屋の奥にあるソファーに座って、侍女たちが忙しそうにしているのを眺めるだけだ。


「いいえ、お嬢様。違いますよ。もうじき季節の変わり目ですからね。昨年のドレスを持ってきただけです」


 ドレスの内側に着るためのコルセットを、部屋に持ってきながらレリアが言う。


 確かにそのコルセットは、生地が少し薄い。この寒い時期に着ている温かい素材で作られた分厚いコルセットとは違って、春や夏の季節に使うコルセットだった。


「お嬢様、春の準備で御座います」


 隣に髪飾りを置いた侍女の一人が、レリアに追随するように言った。


「私は外に出ないんだし、そんなに細かくやらなくても良いんじゃないかなって……」


 普段着ているゆったりとしたワンピースドレスと違って、コルセットをしっかりと締めなければいけないタイプのドレスは、着るのも重労働だ。


 体力のない私にとっては、思わず億劫になってしまうのも仕方がないだろうと思う。


 侍女たちはドレス一式を運び終えると、ドアを閉める。部屋に廊下の寒い空気が、流れ込むのが途絶える。


 ドアを閉めてくれないと、廊下から部屋の中が見えっぱなしになってしまう状態だったで、今はドアを閉めてくれて良かったと思う。


 やっぱり少し、恥ずかしいのだ。


「さあさあ、お嬢様。立って下さい。着替えますよ」


 例えどんなに言葉を重ねても、コルセット付きのドレスを着ることに関して、私が嫌がる態度を崩さないことをレリアは熟知している。


 促されて渋々ソファーから腰を上げると、侍女たちに手伝ってもらいながら、ドレスに着替えていく。


「ううっ……。キツいよぉ……。キツい……」


 力自慢の侍女が、後ろから私のコルセットを全力で締めてくる。


 私? 私のやる気はゼロ。どんどん締め上げられていく状態にされるがまま、ふにゃふにゃの布切れみたいになっている。


 そんな様子は一切気に留めることなく、レリアはレクセイナの正面に立つと、ドレスの状態だけを他の侍女と一緒に確認していく。


「そうですねぇ……」

「ええ、そうですねぇ……」


 ……何かよく分からないけど、レリアたちは必要最低限の感想と、アイコンタクトだけで意思疎通を交わしているようだった。


 わ、私はそれどころじゃないけど……!


 取りあえず、苦しんだわりにはコルセットは全然締まらなかったが、それは諦めて、コルセットは締まったことにするようだった。


 冬の重厚な生地を使ったドレスとは違って、薄黄色を基調とした明るい色調のドレスを上に重ねるようにして着る。


 着替え終わった。


 社交界の晩餐会や国賓を招いた歓迎会ですら姿を見せないことから、“深層のご令嬢”と言われているレクセイナが美しく着飾った姿が完成した。


 グッタリとした表情を見せている残念なレクセイナの表情さえなければ、本当に社交界の教科書に載せたくなるほどの完璧さを見せていた。


 流れるような黒髪。部屋に篭もってばかりなのもあるだろうが、日に焼けていない陶器のように滑らかでありながら、キメ細かい美しい白肌。


 薄黄色のドレスに合わせて、金細工の髪飾りも変えた。


 淡い色をしている優しげな春の花々をモチーフにして、金と銀を混ぜ合わせて豪華に仕上げなからも、可憐な雰囲気を引き立たせる髪飾りに変更する。


 閉じ込められていて、外の情報を全然知らないこともあるのだろう。


 子供のような純真無垢さと、年頃の淑女らしい生まれたばかりの色気が両立している。


 顔も雰囲気も素晴らしいから、本当に何を身につけさせても似合っていた。


 本来はドレスだけを確認すれば良かったが、部屋に髪飾りや靴など、全て一式持ってきて着させたのは、レリアを始めとした侍女たちの趣味だ。


 公爵家の侍女として仕えているぐらいなので、末端の侍女まで技量は超一流だ。


 それでありながら、美しい令嬢が自分の美貌を持て余しているとなると、どうしても着飾ってしまいたくなるのは、侍女の(さが)とも言えた。


 侍女たちにとっては、レクセイナがドレスを着せられて、つまらなそうな表情を見せていることだけが本当に残念だった。


 きっと、ここにいる全員の侍女が同じことを思っているだろう。


 笑えば、もっと美しいだろうに。


「うーーん、そうですねぇ」


 悩んでいるフリをしながら、靴を履き替えさせて、髪飾りを春用の品に変更させた後、じっくりと完成品のようなレクセイナを堪能した後に、侍女たちは言葉を続けた。


「ちょっと、胸が入っていないですね」


「昨年よりも成長したのでしょう」


「微笑ましいです」


 何食わぬ表情を見せるフリをしながらも、皆一様に同じ部分を指摘した。


「あとは、ウエストが緩くありませんか?」


 レクセイナの脇に立っていた侍女が、ウエストに余ってしまった布地を掴む。コルセットでも誤魔化せないほど、ウエストに隙間ができていた。


「お嬢様が痩せましたね……」


「お食事は、いつもと変わらない量なはずですが……」


 レリアたち侍女に、されるがままになっているレクセイナは心の中でボソッと呟く。


 ……だって、昨年と違って外で運動しているもん。危険な魔物と戦ったり、草原を全速力で駆けているし……。


 冒険者活動やっていたら、細くなるのは必然なんだよね。……もっとご飯を食べて、太った方が良いのかな?


 ウエストから、外出がバレたりとかしない??


 よしっ。もっと太ろう!


 そんなウエストの細さをドブに捨てるような決心をレクセイナがしている間にも、侍女たちの話はドンドン進んでいく。



「つまり胸が育って、ウエストはさらに細くなったと……」

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