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新時代の最強英雄 ~支配されていた監禁令嬢、伝説の魔法〈秘奥義〉で無双する~  作者: 雪柳 澄
1章 監禁魔法からの脱走。

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第28話 心強い援軍

 村では、至るところから火の手が上がっていた。


 押し寄せてきた大量の魔物によって、村の防衛線は一瞬で崩壊。


 以前にフラリと立ち寄ったという冒険者の少女が構築してくれた、という結界魔法の方が、防衛線よりも遙かにもっていたぐらいだ。


 この村にいるのは、村長を名乗る者が雇った冒険者だ。その辺の村人では本来払えないくらいの金額になったはずだが、確信を持って魔物が攻めてくると言っていた。


 もちろん俺たち、依頼を受けた複数の冒険者パーティーは、本気にしていなかったのだが。


 まさか、本当に村長の言っていた通りになるとは。


 雇われた冒険者の一人であるダンゼは、魔物に吹っ飛ばされて突っ込んだ建物の中で、舌打ちをしながら悪態をつく。


「クソッ……! 多すぎるんだよ!」


 ふざけるな、と言いたかった。


 どこにどんな異変が発生すれば、魔物が湧いてくるのか、訳が分からない。


 余裕があったら、間違いなく天に向かって、この最悪な状況に罵詈雑言を浴びせていたところだ。


 極めてクソなことに、そんなことをやっている暇さえ無いが。


 迅速に仲間が戦っている場所まで戻らないと、戦線が崩壊してしまうので、剣を再度握りしめて、立ち上がる。


 吹っ飛ばされた時に頭を強く打ったのか、フラフラつきながらダンゼは歩を進める。


 こちらの動きが鈍いことに目をつけられたのか、狼型の魔物が複数体まとめて攻撃を仕掛けてくる。


 村の中心部には、村長を始めとした村人たちが集まっている。


 その場所(ポイント)までは、まだ魔物の侵入を阻止できていると信じたい。


 村の全方位を敵に囲まれてしまっている現状、その包囲網を突破するような戦力もなければ、どこにも逃げ場なんてない。


 魔物と戦えるのは、村の青年たちと複数の冒険者パーティーだけだ。


 ひしめく魔物の数が全く減らない一方で、俺たちは魔物から傷を着実に負っていく。動きは目に見るからに鈍化していっていた。


「これ、どうすればいいんだ……」


 後衛の仲間が茫然としながら、言葉を溢す。


 弓で戦うのがメイン戦術だというのに、背負っていた矢筒に入っていた大量の矢も、すっかり底をついていた。


「だが、もう逃げる場所なんかないだろ! どこに行けば良いって言うんだ!」

「ちょ、お前! 後ろっ!!!」


 焦燥感を爆発させた一人が他の仲間に強く言葉を吐き捨てることに気を取られて、左斜め背後の死角から、忍び寄っていた八足の魔物に気がついていなかった。


「ちっ、馬鹿が!」


 多少の怪我から目を瞑り、自分の目の前にいた敵を強引に斬り伏せる。


 舌打ちをしながら全速力で駆け出したダンゼは、仲間と魔物の間にスライディングしながら強引に割り込む。


 ダンゼの顔よりも長い2本の牙が、剣とぶつかり甲高い音を立てる。仲間を食いちぎろうとしていた攻撃を、何とか阻止した。


「ぐっ……うぐっっ」


 お、重い……。力負けする……。


 寸前のところで助けられた仲間が、背後で驚いている声が脳の片隅に聞こえる。


 だが、中途半端な体勢で攻撃を受けてしまったため、徐々に魔物の力比べに負けて、剣が押されていく。体勢が悪くなる。このままだと地面に押し倒される……!


 ジワリと脂汗が浮かぶ。


 自分の命が終わる瞬間が、身近に迫っていることを肌で感じる。



 ――――その瞬間だった。


「伏せて…………!!」


 少女の透き通るような声が、夜の村に響く。


 ダンゼは反射的に魔物との押し合いから剣を引き、しゃがむように体勢を低くした。


「【火魔法・メレサイナ】!」


盛大な爆発音と共に、巨大な火の手が一瞬上がった。だが村の家屋に延焼を防ぐかのように、直ぐさま消滅。


 一発の火属性魔法だけで、ダンゼと仲間がいた付近の魔物が一掃された。


 魔物の毛皮を火が焼いた匂いが立ちこめ、村の建物が向こうで燃えている明かりで、大量の魔物の死体が地面に転がっている光景が広がる。


「あのっ……。大丈夫ですか?」


 危機一髪のところだったから、思わず警告した直後に魔法を放ってしまった。


 レクセイナは両膝に手をつき、相手の様子をのぞき込むようにしつつ、恐る恐る尋ねる。


 オルデンとベルには、村の中心部へ向かってもらった。


 きっと村の中心部に非戦闘民が避難しているだろうから、そっちの守りを任せ、私は戦闘が激しそうな場所にやってきたのだけど……。


 8本足の不気味な魔物に殺されそうになっていた冒険者らしき男性が、地面に座り込みつつ、気が抜けたように笑った。


「ハハっ……。お嬢ちゃん、ありがとうな。助かったぜ……」


 助けてもらわなければ、ダンゼは死んでいた自信があった。放心状態で足腰も立たないダンゼの元へ仲間が慌てて駆け寄ってくる。


「私は、レクセイナって言います!」


 地面に座り込んでいたダンゼを背に、息絶えた死骸を乗り越えてやってくる魔物に対峙する。


 ダンゼたちの様子を見るようにチラリと振り返ったレクセイナは、安心させるように笑った。


 私が来たからには、守ってみせる。


 数が多いならば、威力の強い魔法を使えば良いだけだ。単純明快。深く考える必要もなく、魔法でブッ飛ばせばいい。


「助太刀に入ります」


 戦いの高揚感に身を任せ、身体の内側から一気に魔力を練り上げていく。


 魔物のひしめく方に視線を戻したレクセイナの顔には、笑みは消え去っていた。油断も隙もない顔つきで、手を勢いよく振った。


「【水魔法・レノバレバ】、【木魔法・ラレウッド】」


 まずは足の速い狼型の魔物や、八足歩行型の魔物を盛大な火力で一掃する。


 断末魔を上げて地面に焼け落ちていく魔物の姿と、自分の頬を掠めていく高温の空気を感じながら、攻撃が通用することを確信し、さらに術式を展開していく。


「【火属性・ファシール】!」


 先ほどまでの火属性魔法で、高温に温められた強い熱風を利用する。


 すでに私の魔力の影響を受けていた熱風が、少しの指南性を与えられただけで、凶暴な熱風となって、魔物に四方八方から襲いかかる。


「うおおおっ……。スゲえ……」


 明らかに魔物の数が減っていくのを見て、ダンゼの仲間がそれ以上の言葉を失ったかのように、声を漏らす。


 だが、ダンゼにも仲間の気持ちが分かった。


 というか凄すぎて、こんな魔物がひしめく状況下でも目が離せない。Dランクの冒険者であるダンゼたちには、到底お目にかかれないような威力だ。


「こ、こんなヤツが俺たちの知らないところにいたのか。確かに凄まじいな。どんな威力をしてやがるんだ」


 冒険者が茫然としている間に、レクセイナは次々に魔法を魔物の大群に放り込み、壊滅状態に追いやっていく。


 自分よりも背後にいる冒険者たちが安全なのは明白なので、特に気にかけることもなく、自分のスペースで戦っていく。


「うーーん。弱いなぁ……」


 ずっと遠くにいた魔物が近づいてきてくれるのを呑気に待ちながら、顎に片手を抑えて頭を傾げる。


 最初の攻撃を除いて、私は中級魔法までしかまだ使っていない。


 初級魔法と中級魔法で一掃できる程度の強さなんて、幾ら数が揃っていても脅威にはならないのだ。


「【水魔法・レノバレバ】」


 一匹、突出して頭上に襲い掛かってきた猿に似た魔物を、迎撃して地面に叩き落としながら考える。


「主力は他の方面かな?」


 考えている間に接近してきていた魔物の軍団を再度、容赦の欠片もなく魔法を叩き込みながら、村の反対側を振り返る。


 耳を澄ませば戦闘音が聞こえる。村の建物から火の手が上がっているのも、向こう側だ。


 こちらの方面は、残りの冒険者だけでなんとかなるだろう。


 ……多分。

 ちょっと私の魔法ばかりを愕然と見ていて、いまだに攻撃に参加できていないところに、心配を感じはするが……。


 それでも、村の結界魔法が破壊されてからの間は、ここを守っていた冒険者たちだ。きっと何とかなるかなっ!


 ……本当にヤバそうならば、もう一度助けに戻れば良いだけだし。



「【火魔法・サレッド】。――――じゃあ、決まりで」


 次の獲物を狙い定めたかのように、レクセイナの目は苛烈に輝いた。

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