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新時代の最強英雄 ~支配されていた監禁令嬢、伝説の魔法〈秘奥義〉で無双する~  作者: 雪柳 澄
1章 監禁魔法からの脱走。

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第24話 神属性魔法

「貴女が、怪我をした冒険者さんですね」


 無駄な感情が乗っていない声音で、彼女はレクセイナから視線を離すことなく言葉を続ける。


 壁にもたれかかっているベルや、レクセイナの隣に座っているオルデンに注意を向ける様子もない。興味がないようにも、ベルには見えた。


「ええ……。レクセイナって、言います」


 彼女の圧に押された様子を滲ませながら、レクセイナは名乗る。


 必要最低限しか口を開くつもりはないのか、彼女は無言を貫いて返答する様子はない。代わるようにして、年老いた村人の1人が言った。


「シーシャ様は、この村に住まわれている神属性魔法の使い手だ。迷い訪れた冒険者の方が怪我で困っていると聞いて、お助けするのを決めたそうだ」


「素晴らしい御方だぞ、シーシャ様は。俺の子どもの病気も治してくれたんだ……」


 周りの村人たちが、シーシャ様と呼ばれた彼女に向ける感情が、尊敬と感謝が大いに混じったものだった。


 神属性魔法を使えるかどうかは、天性的に決まる。


 そして、そのうちの怪我を治す回復魔法を使える神属性魔法の使い手は、さらに数が限られている。


 心の中に浮かんだ疑問を、レクセイナは素直に口にした。


「なぜ……?」


 神属性魔法の使い手は全員、教会塔(レルートル)国家に所属して教会で働くことになっている。そう決められているのだ。


 だから、オルデンも私を神属性魔法で治療してもらおうと、村人に神属性魔法の使い手が居るかどうかを尋ねるのではなく、教会の建物があるかどうかを聞いていた。



 教会で過ごしていない神属性魔法の使い手というのはつまり、教会塔(レルートル)国家から身を隠して逃亡しているということ。


 見ず知らずの冒険者を神属性魔法で治療するために姿を現せば、あとで教会へ告発される危険性だってある。


「神の思し召しだからです」


 レクセイナの問いにシーシャが、軽く笑ったような気がした。感情の発露が無い声音に、若干の柔らかさを感じた。


「怪我を見せて下さい、治療します」


 神の思し召し……?


 その返答を理解できず、レクセイナが頭を傾げている間にシーシャは近づいてくる。


 決して軽傷ではない熱火山羊(ファルアゴストル)との戦いによる怪我を、シーシャは戸惑うこともなく直に確認すると、片手をかざした。


「【レ・回復魔法(ヒールトリア)】」


 痛み止めが効いていた傷口に、若干の痛みが走る。


「っ……」


 だが、それも直ぐに収まる。


 温かいモノが流れ込んでくるような感覚。それが、一気に広まったかと思えば、収束するように集まってからパッと消えた。怪我が治っていた。


「終わりです」


 もう本当に必要以上の言葉を、口を開いて話すつもりはないらしい。


 レクセイナが感謝を告げるよりも早く立ち上がったシーシャは、一緒に来ていた村人たちの中から数人と一緒に建物をスタスタと出て行ってしまった。


「あのっ……。ありがとう御座いますっ!!!」


「野良の、神属性魔法の使い手か……。珍しいな」


「ですが腕は確かなようです。良かったですね、レクセイナさん」


 オルデンとベルが感心した様子を見せる。あれだけ酷かった怪我は、すっかり完治していた。


 これなら屋敷に戻っても、侍女たちにバレることはないだろうし、お父様やお母様にも外出がバレなくて済むだろう。




 ***




 レクセイナたちは、村の端まで移動していた。後ろからは、複数人の村人がゾロゾロとついてきている。


「この辺にします。魔法の起点は、障害物がない方がいいんですっ」


 周囲を見渡した後に、畑が広がる村の外よりも一歩手前の場所でレクセイナは足を止める。


 ピンチだった私を助けてくれたのは、地図にも載っていないような小さな村。


 ときどき村の外から現れるだろう魔物を討伐するような冒険者も常駐していなければ、魔物を防ぐ木製の柵さえ、ボロボロで頼りない見た目をしてる。


 それをオルデンに背負われて村に訪れた時に、視界に入っていた。


 神属性魔法で治療してくれた礼に、村に簡易的な結界魔法を張ることを申し出たレクセイナは、どの属性魔法が良いのか少し考えてから、空中に両手をかざす。


 やはり木属性魔法だろう。


 一番私が得意な属性は水属性魔法だが、近くに森が広がっているのならば、そこから流れてくる魔力を流用した方が結界が長持ちする。


「【木魔法・リースファール】」


 体内から、スルッと魔力が抜ける感覚。


 同時に住居が建てられている村全体に、緑に色付いた魔力が一気に広がった後、結界が展開される。


「凄い! これが、冒険者の結界魔法……」


「中級魔法なんて、初めて見ました」


「これで、もっと安心できる」


 広がった結界の魔力が無色透明になる前の、緑に色付いた魔力を一瞬見たのだろう。


 村人から、歓声が上がった。




 結界が正常に機能していることを、丁寧に確認した後。


 見送りに残ってくれた村人たちに、穏やかな笑みを浮かべながらレクセイナは伝える。


「結界の効果は、2週間ほどは持続するはずです」


 本当はもっと効果が持続する結界を張ってあげたかったが、永遠に持続する結界は簡単に張ることはできない。


 複雑な魔法陣を使ったり、補助の魔導具を使わない限り、長期間に渡って結界を張るのは不可能だ。


 だが、それでも数週間は村人たちを魔物の脅威から守ることはできるだろう。


「では、時間がないので私たちは行きますっ」


 時間が随分経ってしまった。


 お父様とお母様が外出から帰ってくる前に、私も戻っていないといけない。


 それに本来はFランクの依頼を受けたら直ぐに都市へ戻るつもりだった2人も、夜には別の仕事でもあるのだろう。


 村人と名残惜しそうに話していたレクセイナに対して、既に2人は少し村の外まで先に歩いていた。


 もう一度ピンチを救ってくれた村人にお礼を言ってから、オルデンたちの元へ小走りで駆け寄る。


「じゃあ、行くぞ」


「うん。ありがとうっ」



 ――――そうして、初めての冒険者依頼は終わった。


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