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新時代の最強英雄 ~支配されていた監禁令嬢、伝説の魔法〈秘奥義〉で無双する~  作者: 雪柳 澄
1章 監禁魔法からの脱走。

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第22話 小さな村

「レクセイナっ!!!」


「レクセイナさんっ!」


 悲痛な声を漏らした後に、しゃがみ込んだレクセイナにオルデンたちが声を上げる。


「くそっ!」


 解体するために握っていた小型ナイフで、オルデンは熱火山羊(ファルアゴストル)の心臓部を突く。


 恨みが篭もった一鳴きを最期に上げた熱火山羊(ファルアゴストル)の両眼から、光が消えていく。熱火山羊(ファルアゴストル)は、虎視眈々と死んだふりをして隙を窺っていたのだ。相打ちに持ち込むために。


 俺の失態だ。


 きちんとトドメが刺されているのか、確認すべきだった。


 魔物は死にかけの時に、最も注意しなければいけないというのは冒険者の間では基本中の基本として認知されている。


 だが、冒険者になったばかりのレクセイナが知っているわけがない。


 俺とベルがしっかりと、初心者のレクセイナが魔物を殺せたのか見てあげるべきだった。初心者だと思わせない強さを見せつけられて、それを忘れていた。


「オルデン! ポーションを!」


「分かっている!」


 向こう側から急いで駆け寄ってくるベルに応じながら、熱火山羊(ファルアゴストル)の血がついた短剣を地面に投げ捨てて、ベルトに下げている小バッグを漁る。


 迷いのない手つきで色々な物を詰め込んでいるバッグの中から、目当てのポーションを手探りで探し当てると、蓋を乱暴に勢いよく開けた。


「血止めのポーションだ、染みるぞ!」


 ドロッとした緑色のポーションを、レクセイナの傷口に流し込む。


「うっ……」


 最高級品には及ばないが、低級の血止めのポーションでも十分に効果は発揮される。


 血止めのポーションには痛み止めも混ざっているからか、しばらくするとレクセイナの顔色も良くなってきた。


 顔を上げたレクセイナに、しゃがみ込んで心配した表情見守っていたオルデンが、そっと問いかける。


「大丈夫か……?」


「……うん」


 レクセイナが弱々しく応じる。


 オルデンの目から見て、全然大丈夫ではなさそうだった。


 熱火山羊(ファルアゴストル)がレクセイナにつけた傷は、致命傷と呼ぶまでは至っていないが、普通にしていれば完治するのに数ヶ月はかかりそうな深さだ。


 取り敢えず、どこかに移動した方がいい。


「オルデン、熱火山羊(ファルアゴストル)の素材を回収し終わりました。移動しましょう」


 俺がレクセイナの様子を案じている間に、トドメを刺されて死んだ熱火山羊(ファルアゴストル)の素材をしれっと回収していたベルがあっけらかんと言う。


 ……幾ら熱火山羊(ファルアゴストル)の素材が高値で売れるからって、レクセイナの命に別状がないと分かったら、その反応とは一体どうなんだと言いたい。


 まあベルが本当に慌てるのは、俺に関しての事だけなのは、頭では一応分かるのだが……。


 オルデンは、レクセイナにそっと声を掛けた。


「立てるか?」


 無言でレクセイナが頭を振って、否定する。


「まあそうだよな。怪我したの、足だもんな」


 オルデンは少し恥ずかしがるように頭を掻いてから、しゃがみ込んでいるレクセイナに背中を向けた。


「ほれっ。俺の背中に乗れ。近くの村まで移動するぞ」


「……ありがとっ、オルデン」


 レクセイナは礼を言って、怪我した足を庇いながらオルデンの肩に手を伸ばす。


 そして、そっと身を預けてオルデンの背中に乗った。


 筋肉質なベルと比べると、オルデンは長身だけど、筋肉がムキムキについている感じではなくて、スラリとした外見をしている。


 きっと私は重いだろうし、オルデンだって移動魔法をたくさん使っているから、きっと疲れているだろう。


 大丈夫かなっ……。申し訳ないな……。と、レクセイナは心の中で思った。


 だがオルデンは、一切ふらつくことなくレクセイナを背負って立ち上がる。


「ベル、近くの村はどこにあったか?」


「南西の街道から少し外れたところにあったはずです」


「分かった」




 ***




 そこは、小さな村だった。


 レクセイナはオルデンの背中から、畑に囲まれた村の住居を落ち着かない様子でチラチラと見る。


 傷の痛みは随分とマシになっていた。


 オルデンに言われて、移動の途中でマジックバックに入れていた最高級品の痛み止めポーションを使ったからかもしれない。


 怪我の痛みに慣れてくると、思考がグルグルと回り始める。


 オルデンの背中に身を預けながら、我に返ったレクセイナは今の状況に対して静かに焦っていた。



 ……どうしよう。


 擦り傷程度だったら、まだ良かった。


 部屋の物につまづいて擦りむいてしまったのだと、侍女に言い訳できる。誤魔化せる。お母様とお父様に、後で軽くたしなめられる位で済んだだろう。


 だが、魔物との戦いで負った傷は、誤魔化しがきくようなレベルでは到底なかった。


 外出していたということが、バレてしまう。


 どうしよう…………。


 自然と身体が強ばって、オルデンの首に回していた両腕に力が入る。


「レクセイナ、どうした……? 大丈夫か?」


 オルデンの心配するような問いかけに、答えるようなことはしない。背中でギュッと口をつぐんで、自分の心を抑えようとする。


 オルデンはレクセイナにそれ以上、問いかけてくることはしなかった。


 代わりに、こちらへ視線を向けていた村人の1人に近づく。


「どうしたのかね?」


 観光地もなければ特に重要な施設もない、潰れかけの村に客が訪れるのは珍しい。


 村に長年住んでいる老人は、物珍しい表情で畑に運ぶ予定だった重い種袋を下ろしながら声をかける。


「仲間が怪我をしてしまったんだ。近くに教会はないか?」


 神属性魔法の使い手なら、レクセイナの傷を治せる。


 本来なら致命傷ではない傷を神属性魔法で回復させることはないが、レクセイナはどうも訳アリな感じだ。


 治してあげたい。


 オルデンは、縋るような思いを心に秘めて村人に尋ねた――――。

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