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新時代の最強英雄 ~支配されていた監禁令嬢、伝説の魔法〈秘奥義〉で無双する~  作者: 雪柳 澄
1章 監禁魔法からの脱走。

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第16話 国王陛下との密会

「今日は少し遅かったんじゃないかね、レクセイナ」


 長年の苦労が刻まれた隙のない顔に、穏やかに笑いながらも冷静な瞳。そして、この国の王族であることを示す金髪。


「なんでもありません、国王様。ちょっと庭に珍しい花に出会いまして、鑑賞していたのですっ」


 言及されることを避けたくて、誤魔化すように笑う。本当は、他の人に接触するのは禁じられているのだ。


 温室には国王様1人だけしか居なかった。


 レクセイナを待っていた国王は温室の中央で、ティースタンドの菓子と一緒に、紅茶を飲んでいた。いつも通りの光景だ。


 慣れた様子でレクセイナは、国王の前に用意されていたイスに腰掛ける。


 すでに容易されていたティーカップには、紅茶が入れられている。ティースタンドからスコーンを取った。


「レクセイナは、いつもスコーンを選ぶね」


「はい。国王様に用意して頂くスコーンは、家のシェフが作るものよりも美味しいのです。シットリだけどフカフカしていて、好きですっ」


 ついでに、小瓶に入っているブルーベリージャムをスコーンに付けて食べる。


 いつも通りとても美味しい。家でもこの味を再現できれば良いのに……。


 このスコーンがあるお陰で、まだ国王様を嫌いにならずに済んでいると言っても良かった。スコーンはとっても偉大だった。


「それだと、スコーン以外が美味しくないように聞こえてしまうよ」


「美味しくないです」


「そこは、美味しいと言いなさい。私の御前ですよ」


 遠慮なくスコーン以外を「不味い」と切り捨てたレクセイナに、国王が穏やかだった声を少し低めた。


 だが、レクセイナに慌てた様子はない。


 それどころか、少し楽しそうに続ける。


「他のお菓子も、アレノダス公爵家の菓子より美味しくなる日を楽しみにしておりますっ。頑張ればきっと何とかなるはずですわ」


 国王はレクセイナの好戦的な言葉に、少し笑うしかなかった。


 アレノダス公爵家のシェフは、現公爵が揃えた超一流だ。


 外に出れない娘のために、現公爵が食の楽しみだけでも揃えてあげようと、娘に秘密で腕利きのシェフを集めていた。


 国の王として止めようか迷うほどの勢いだったのを覚えている。懐かしい。


「国王様、私はケーキの味が改善されると嬉しいですわ」


「ウチの王太子も、この最近反抗期なのだけどね。レクセイナにも、それを感じるよ。そーゆーお年頃なのかな?」


 2人が温室で交わしている会話は、国王とレクセイナの立場が逆転しているようにも見える。


 他の貴族には秘匿された、秘密裏に行われている面会だという点を除いても、レクセイナも国王も好き勝手に会話を繰り広げていた。


「私は常に反抗期ですわっ」


「そういった反応まで、そっくりだよ。ほんと」


 スコーンを食べ終わったレクセイナが、イスから立ち上がるのを見上げながら、国王は楽しそうに話し続ける。


「アノブールがな、学友と結託して審議会に新しい法案をねじ込もうとしてたりするんだよ」


 菓子が用意されたテーブルと2人が座るイスは、いつも温室の隅に置かれている。温室の中央ではない。


 国王はイスに座りながら、いまだに紅茶を堪能している。


 イスから立ち上がったレクセイナは隣の床に座り込むと、床に置かれていた小刀を手に取り、そして手に()()()()()


「ご学友と仲が良いようで、いいではありませんか」


 レクセイナの手からは、真っ赤な鮮血がダラダラと白い温室の床に滴り落ちる。透き通るつくしい手が、血塗れになっていた。


 苦痛に耐えるように、レクセイナは人形のように精巧に整った顔を歪める。



 ……慣れているけど、やっぱり痛いっ。



 だが、そんな表情をしたのも、ほんの一瞬だけだった。


 直ぐに普段通りの表情に戻ると、魔法陣を自分の血を使って描き始めながら、2人は呑気に会話を続ける。


「それがね。なかなか、きな臭いものばかりで。アノブールも一体、なにを考えているやら」


 昔にお父様とお母様に雇われていた家庭教師が、教えてくれた知識をレクセイナは頭の中から掘り起こす。


 確か、アノブール様は今年で18歳になる方だ。


 この国には4人の王子と1人の姫がいるらしいけど、第一王子のアノブール様が次の国王として王太子になってから、数年は経っている。


 今さら王位継承権争いということも無いはずだ。


「きっと、そのうちアノブール王太子様が考えていらっしゃることも、分かりますよ」


 魔法陣を描き終わったレクセイナは立ち上がると、イスに座っている国王の元へ行く。


 差し出された右腕に、レクセイナは自身の血を使って、魔法陣と同じように魔術文字を正確に書いていく。



「準備、整いました。国王様」


 家に代々伝わる文字を全て書き終わったレクセイナは、顔を上げる。


「ありがとうね」


 穏やかに笑いながらも、一方で隙を感じさせない瞳で国王は頷いた。


 失敗しないように、気をつけないと……。


 国王様が描かれた魔法陣の中央へ移動したのを確認して、地面に両手をつけた私は詠唱をするべく口を開く。


 魔法の詠唱が始まると同時に、魔法陣の存在感が一気に増大した――――。

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