第14話 憂うつな予定
外で過ごした時間は、監禁魔法を解除できなかった自分が妄想で見ている夢だったと言われても、信じてしまいそうな位に幸せな時間だった。
薄ピンクの普段着に着替えたレクセイナは、広々としたベットの上に寝転がっていた。
ベットの上にはロングソードと冒険者カード、マジックバックが広げられている。
「楽しかったなぁ……」
どれも外の世界で手に入れた自分へのお土産であり、戦利品だ。
冒険者カードとマジックバックの中に入ったポーションを次々と手に取っては、ウットリとした瞳でレクセイナは品々を見つめる。
お父様とお母様に管理された不自由な生活で、やっと手に入れた一時の自由。自分の時間。
それは私が思っていた以上にずっと素敵で、素晴らしいものだった。
こんな狭い部屋の中では到底知り得なかった、やみつきになるほど美味しい牛串という食べ物や、武器屋やポーション屋を親切に案内してくれたオルデンたち。
2人とは、次に会った時に冒険に行く約束をして解散した。
また、早く外の世界に行きたい。
私が今日、出掛けられたのは僅か数時間だった。瞬きぐらい、本当に一瞬で時間が過ぎていった。
「よいしょ……っ!」
冒険者カードを寝転びながら見ていた私は、ベットの上から勢いよく起き上がる。
一目惚れして買った美しいロングソードを手に取った。
鞘から剣を抜いて、取り出してみる。
武器屋で見た時と同じように、白銀の美しい剣身が光を反射して煌めいた。
部屋のドアは監禁魔法を解くために魔術文字の解読を行っていた時のように、内側から魔法で鍵を掛けてあった。
誰も不意打ちで入って来れないようにしているレクセイナは、試しに剣を振ってみることにした。
「はっ! えいっ! よっ!」
魔法はともかく、剣は全くの初心者だ。
「ハアハアっ……」
自分がイメージする感じに剣を振ってみるが、なかなか上手くいかない。やっぱり剣を扱うのは難しい。
部屋に篭もっているからか、体力もないせいで直ぐに息が上がってしまった。
ベルは短剣使いだし、オルデンも魔法以外に剣も少し扱えると歩きながらと言っていた。
今度2人に会ったら、剣も教えてもらおう。
全然、習得できる感じがしないのだ。
これが魔法だったら、普通の人が何年も掛けて覚えるものだと家庭教師が言っていた上級魔法ぐらい、直ぐに覚えて自由自在に使いこなせる。
難しい書庫の魔法だって、時間があれば1人で覚えられるのだ。
だけど、それくらい剣が難しいということだろう。
ベットの上に散らかしていた品々を、ロングソードも含めて全てマジックバックの中にしまう。
食事の時間になったら、私が部屋を抜け出していることを知らないレリア以外の侍女もやって来るのだ。
他の侍女に見つかってしまったら、冒険者カードも、ポーションも、ロングソードも、マジックバックさえも、全て没収されてしまうだろう。
挙げ句の果てには、お父様とお母様に報告されて、監視が一層厳しくなって、外の世界に抜け出せない地獄の日々がスタート。安易に想像できた。
マジックバックの中へ外世界の品々を一つ残らず片付けたかどうか、ベットの上からカーペットの下まで、何度も念入りに確認した。
そして自分で作っておいた机の隠し蓋の下に、マジックバックを入れておく。
これで侍女たちに気づかれることも、お父様やお母様にバレることもないだろう。
部屋の防音と鍵魔法を解除したレクセイナは、マジックバックを引き出しに隠したついでに、自分のスケジュール帳を取り出す。
部屋に篭もりきりのレクセイナのスケジュール帳には、ほとんど何にも書かれてない。予定管理する必要も無いレベルだ。
本来ならば、貴族の子として私も3年間学園に通わなければいけない。
すでに私は17歳で学園に通っているべき年齢だけど、お父様とお母様は何も言ってこない。
学園に通わなければ貴族として認められない筈なのに、よく分からないけど、問題ないらしい。
きっと学園に行ってたら、スケジュールも楽しい予定でたくさん詰まっていたんだろうな。お陰で、昔よりもさらに魔法が上手くなってしまった。
そんなことを考えながらページを捲る。
ほぼ空白のスケジュール帳だが、それでも私が予定をつけるのには理由があった。
「あーー。そう言えば、そうだった……」
1週間後に予定が入っているのを見つけたレクセイナは、広い部屋の中で思わず何とも嫌そうに独り言を溢す。
ウンザリとした表情を、浮かべる。
レクセイナは深々とため息をつきながら、肩を残念そうに落とした――――。




