表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/97

序章 辺境の策略家

はじめまして、作者です。

本作は「異世界ファンタジー×ミリタリー×学園」の物語です。


【読者の皆様へのお願い】

私は日本語を勉強中の外国人です。

自然な日本語表現になるよう努力していますが、違和感のある箇所や間違いがあるかもしれません。

もしお気づきの点があれば、感想欄で優しく教えていただけると幸いです。勉強になります!


※この物語には、第一章から残酷な描写(流血・戦闘)が含まれます。苦手な方はご注意ください。

激しい雨が、灰燼城の古びた城壁を叩きつけていた。


ヴァン・ラーク は、総突撃の号令を待つ帝国軍を見下ろし、懐のノートを強く握りしめた。

五百の兵で三千の精鋭に挑む。もはや戦術ですらない、ただの玉砕だ。


「このまま全滅されたら、帝都への道が塞がる。面倒だが、手を出すか」


指揮室の扉を蹴り開けると、黴臭い戦術地図を囲む将校たちの殺気が一斉に突き刺さった。


「全軍突撃なんかしたら、全員犬死にだ。俺が三日で敵を退けてやる」


「ふざけるな! ガキが!」


魔力が爆発した。副官の全身に赤熱した魔力回路が浮かび上がり、強化された刃がヴァンの喉元へ迫る。 —— 刃が皮膚に触れるか触れないか、その寸前で、副官の体がぴたりと凍りついた。


ヴァンは顔色一つ変えず、袖の下の指先に魔力を宿し、万が一の時に即座に「高圧魔力(ハイ・プレッシャー)」 を展開できるよう準備を整えた。副作用を覚悟しなければならない瞬間に備えて――


――ガィンッ!


鈍い金属音が響いた。ヴァンの術式が発動するより速く、彼の半歩後ろにいた銀仮面の少女、神鶴(シンカク) が、素手で白刃を掴んでいた。


「……っ!?」

感情の欠落した仮面の奥の瞳。ただそれだけで、副官は全身の血が凍りついたように硬直した。


ヴァンは編みかけた魔力を散らし、司令官に向かって薄く笑った。


「部下の躾が行き届いていますね、司令官殿」


ガルト司令官が眉をひそめ、ヴァンに視線を向ける。


「坊主、どういう算段だ?」


「この城が落ちれば、帝都への道は塞がる。俺の用も潰れる。だから勝たせる。だが慈善じゃない」

ヴァンは地図の松林を指差した。

「敵の兵站を『半分』だけ焼く。魔導回路持ちで気配遮断に長けた兵を五十名貸せ。詠唱なしで動ける連中だ。シンカクが引率して火を放つ」


枝の先が地図の上を滑る。敵の哨戒を全て回避する、蛇行した獣道をなぞる。


「兵站を焼く? 馬鹿を言うな」

ガルトが吐き捨てる。

「食糧を全て焼けば、敵は『死兵』と化す。退路を断たれた三千の精鋭が死に物狂いで攻めてくれば、半日で落城だ」


「だから『半分』残すんだよ」

ヴァンは冷淡に告げた。

「全焼すれば彼らは死ぬ気で戦う。だが、半分残ればどうなる? 『節約しながら撤退すれば、本国まで生きて帰れる』――そう思うだろう?」


「兵站を半分焼かれ、背後に謎の援軍が布陣している。攻城すれば大損害が確定し、責任は指揮官一人が負う。だが慎重に撤退すれば、責任は情報部門と兵站部門に押し付けられる。人間はね、希望がちらつくと命が惜しくなるんだ——特に、ぬくぬくと育った中央の貴族連中はな」


室内が静まり返る。


「さあ,自分の保身が大事な指揮官なら、どっちを選ぶ?」


ヴァンは一枚の白紙をテーブルに滑らせた。


「報酬は先払いです。ガルト司令官名義の、帝国軍事学院宛て推薦状……サインをいただけますか?」


「帝国軍人が策略と後方撹乱で勝ちを拾うだと!? 前線で魔力をぶつけ合ってこそ、それが戦というものだ! お前みたいな臆病者のやり口を、帝国では懦夫と呼ぶ!」

副官が吼える。


ヴァンは笑いもせず、司令官の目を真っ直ぐ見据えた。

「どうせ正面から突っ込んで全員死ぬなら、一枚の推薦状くらい、安い賭けだろ? 書かなきゃ、俺はこの扉から出て、お前たちが玉砕するのを城壁の上で見物するだけだ。選べ」


沈黙が室内を凍らせる。

老司令官はヴァンの黒い瞳を長い間凝視し、やがて苦い笑いを漏らし、ペンを拾い上げた。


「……クソガキだ。—— 副官、書類を用意しろ」


命令は震えながらも、即座に下された。

命令が下された夜、ヴァンは炎が上がるのを城壁の上から見届け、冷ややかに目を細めた。


第一夜、敵営の後方に不吉な火光が上がり、黒煙が新月を覆い隠した。

第二夜、山稜に響く太鼓と絶えない篝火が、敵兵を眠らせなかった。

三日目の夜明け。三千の敵軍は、城壁に触れることすらなく、引き潮のように敗走していった。


城壁の上で、双眼鏡を握りしめた副官が、陸に上がった魚のように口をパクパクさせている横で、ヴァンは退散する敵の列を眺め、鼻で笑った。


「これで中央の連中に、俺の存在を気づかせられるだろう」


たった三日、剣も魔法もほとんど使わずに、帝国軍が絶望した戦局をひっくり返した。このニュースは、必ず帝都の中枢まで届く。


その数日後、ガルト司令官がヴァンの元を訪れた。


その手には、約束していたただの推薦状ではなく、漆黒の封蝋に『双頭の鷲』が刻まれた重厚な封筒が握られていた。


「お前の三日間の戦術、詳細を軍部に直報告した。そしたらな」


ガルトはひきつった笑いを浮かべ、その手紙をテーブルに放り投げた。


「帝国軍事学院の院長、ベルンハルトが、直々に指名してきた。灰燼城の戦術立案者を、特別研修に招待するとな。お前、とんでもないものを釣り上げたぞ」


ヴァンは封筒を受け取り、指で封蝋の模様をなぞった。

「ほぅ、俺が思ったより順調だ」


敵軍が完全に姿を消した夕暮れ時。

城壁の上には、西日に染まる草原と、遥か彼方に連なる帝都方面の山脈が広がっていた。


ヴァンは懐から、革張りの表紙に無数の細かい傷が刻まれた古いノートを取り出した。辺境で十数年間、肌身離さず持ち歩いてきたものだ。


シンカクが音もなくヴァンの半歩後ろに立ち、淡々と事実だけを口にした。


「帝都へ向かうのですね。あそこはフィロメラ様が亡くなった場所であり、大元帥の拠点です。あなたが殺される可能性が、非常に高いです」


ヴァンの手が、ノートを強く握りしめる。革の表紙の傷が、掌に食い込む。

彼は帝都のある方角を、真っ直ぐに睨みつけた。


生まれてから一度も顔を合わせていない親父、帝国軍の頂点に立つ大元帅。

——知ったのは、偶然だった。生まれた直後、誰かに抱かれて混乱の中を逃げていた。意識が定まらない中で、声だけが耳に残った。


「これが、フィロメラと大元帅の子か」と。


自分が転生者でなければ、一生気づかなかっただろう。

母さんがなぜ死んだのか。なぜ、このノートだけを残して俺を辺境に捨てたのか。

真相さえわかれば、それでいい。あとは適当に生きる——それだけのために、あそこへ行く。


「だが、行くしかない」


「あなたが死ぬと、私が困ります。ですから、行くのであれば私の後ろから離れないでください」


シンカクはヴァンの背中を見つめ、少しだけ間を置いて、事実だけを述べるように言った。


ヴァンは張り詰めていた空気を抜くように鼻で笑い、踵を返して城壁の階段へ向かう。


「行くぞ、シンカク」


「了解しました」


月が空に昇り、淡い月光がノートの表紙に降り注ぐ。


そこに刻まれた母親の名前――フィロメラの文字が、ひっそりと、だが確かに暗闇の中で浮かび上がっていた。



【序章・終】


ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!


もし「続きが気になる!」「主人公の性格が好き」と少しでも思っていただけたら、


広告の下にある【☆☆☆☆☆】マークから、

ポイント評価(★を入れて応援)をしていただけると、執筆のモチベーションが爆上がりします!

ブックマーク登録もぜひよろしくお願いします。


次回

明日に更新予定です!お楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ