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ANOTHER RAIN(アナザレイン) - テレビコメンテーター失踪事件 -  作者: 志村けんじ


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5/8

監禁

 磯部誠・監禁の朝から翌日


 監禁されたその日は、疲れてそのままずっと寝てしまっていた。


 犯人たちの約束通り、食事も提供されて、精神的な苦痛はあっても肉体的な苦痛はない。


 出された食事はすべてコンビニエンスストアの弁当だったが、だからといってまだ犯人たちになにをされるのかわからないので注文を付けるわけにもいかない。

 弁当は、ドアの横に設置されていたペット用の小さな出入口のドアから出されるが、そのドアから外を覗いても、外の情報を得ることはできない。


 食べ終わった弁当の容器は、そのペット用のドアから外に出して捨ててもらう。


 外の情報がわかることといえば、テレビとラジオからの情報だ。


 ただ、まだ自分が拉致された事件の報道は、どのチャンネルに変えてもない。


 ラジオはずっとAMの公共放送に合わせて掛けっぱなしにしている。


 起きてから、今日一日ずっとテレビのチャンネルを変えながら見ていたが、自分に関する報道は一切なかった。


 なので、23時にはどちらも消して眠った。


 朝起きて、すぐにテレビとラジオをつけると、自分が失踪したという報道があった。


「良いぞー。やれやれー! そして早いとこ俺を見つけてくれ!」

 自分のことが取り上げられていたことにまず歓喜した。


「さすがは村西明。わかってる! 頼むよー、早いところ、俺を捜し出してくれるように、世の中を誘導してくれ!」


 最初に磯部が見たテレビの報道は、磯部にとって実に好意的なものだった。


 だが昼と午後の情報番組からは違う。磯部の身を心配したり擁護するコメンテーターがいる反面、被害者である自分を否定するコメンテーターもいた。


「ふざけるな! 俺は被害者だぞ! 早く俺を助けに来い!」

 そうテレビに向かって叫んでいた。



 村西明・監禁の朝からの翌日


 監禁された朝から、ずっとテレビとラジオ付けて見て聞いていた。


 拉致されたときに濡らしてしまった下着とズボンはもう乾いている。


 元々テレビ局の人間なので、自分の拉致の報道がないことはわかっていた。


 心配なのは自分がレギュラー出演している朝の生番組での報道だ。テレビ局は、自分が番組に不在なことをどう説明するのだろうか。


 答えは簡単だった。


「えー、村西明コメンテーターは、体調不良のために、しばらくの間お休みさせていただきます。皆様もお体にはお気をつけください」

 そう、取って付けたテンプレートのようにメインキャスターから説明された。


「ふざけるな! 俺はここにいるぞ! 早く助けてくれ!」

 そう叫んでも虚しいだけだった。


 怒って朝食に出されていたパンと牛乳を食べる。


「なんでオレが、こんな酷い生活を……」


 急にお腹が痛くなって、部屋の端に置いてあった仮設トイレに駆け込んだ。


 この仮設トイレは一応水洗タイプのようだが、どこかの工事現場とかで使っていたものだろうか。掃除はされてはいるが、使用感が凄い。匂いを押さえる為なのか水洗の水は青色をしていて薬品の匂いがする。トイレットペーパーは、これから何ヵ月の間監禁されるのであろうか、12ロールのトイレットペーパーが仮設トイレの横に置かれていた。


 そのあと一日中、ラジオを聞いて、テレビを見ていたが、それでもやはり自分が拉致された報道はなかった。


 食事はコンビニで買ったパンや弁当が、壁の下に開けられた小さな穴から出される。出たゴミも、そこから返す仕組みだ。


 翌日の朝。待っていた自分の報道が、自分が出演していた生番組でされた。


 ただそれは、拉致の報道ではない。自分が突然失踪して行方不明になっているという報道だ。


「実は昨日は、村西明さんが失踪していなくなってしまっていたことを隠していました。私たちは、村西明さんの安否を心配しています。磯部誠さんと同じく、なにか見かけたなどございましたら、お近くの警察に情報提供をお願いします」

 そうメインキャスターから説明された。


 ここで新たに磯部誠の失踪時の情報が開示される。


「磯村さんは、失踪当日の夜に、ある知人女性とホテルで密会していたと警察関係者からの情報提供を受けました。その後にその知人女性と一緒に外に食事をしに行ったところまではわかっています」


「磯部さんのスマートフォンが滞在していたホテルの部屋に2つとも残されていることから、その後の足取りが不明です」

 それを聞いて、ぞっとした。自分も仕事用とプライベート用のスマートフォン2つを家に置いたままで来ている。


 警察も家の中に入っているはずだし、妻に浮気がすべてバレるのも時間の問題だ。隠し子がバレても逃げ切ったキャスターもいるが、そんなのがバレれば一瞬で社会的信用を失いかねない。   


「頼む! カネならいくらでも出す! だから早く! 早く出してくれ!」

 そう反応のないドアの向こうに叫び続けた。


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