失踪事件の裏側➁
村西明・失踪時
村西明は失踪日の夜に、自宅に若い愛人を招き入れていた。
妻は友人たち三人と7泊9日のの海外旅行に行っており、あと5日は帰ってくる心配はない。
妻にこのことがバレないように、玄関先の防犯カメラを含めたセキュリティーシステムは事前に切っておいた。
30歳も離れたまだ二十代の彼女が来ると、デリバリーピザを注文して一緒に食事を楽しみ、その後に彼女の若いカラダを堪能した。
芸能界というのは闇深い。村西明のような六十歳手前の男でも、それを利用してテレビに出ようとする者は少なからずいるが、それでも彼女はまだテレビ番組には出れてはいなかった。
散々、彼女で遊んだあと、彼女が帰る。彼女には、タクシー代として3万円渡した。
彼女が帰ってから10分ぐらいすると、再び玄関のインターホンが鳴る。
「どうしたの? なにか忘れ物した?」
モニターを確認せずに玄関のドアを開けると、目出し帽を被った男が3人と立っている。
「别吵、不然我杀了你」
大型のナイフを持った男が村西の喉元にナイフを突き立てて、おそらく中国語でそう言った。
「騒いだら殺す」別の男は日本語で言った。しかし、その声はボイスチェンジャーで機械的な声に変えられている。
村西の股間に温かいものが流れる。
「た、頼みます、い、命だけは助けてください……お金なら幾らでも差し上げますから」
恐怖のあまり失禁してしまっていた村西は、そう3人の男たちに懇願した。
「敢吵就杀了你」
「いいから大人しくついてこい。その前に玄関の鍵を締めろ」
そのあと村西はガムテープを巻かれて目隠しされ、口もガムテープで塞がれる。両腕は後ろ手に太い結束バンドで拘束された。
村西には、夕方から降り続いている雨の音だけが聞こえる。
そこに1台の車が玄関の門の前に停まり、スライドドアが開く音がして、その車に乗せられた。
車の中は、ずっと大音量の音楽がながれているが。男たちがなにか会話をしている様子はない。
随分と長い時間、車に乗せられている。それでもようやく車は停車してエンジンが切られた。
「降りろ」
そう言われて車を降ろされて、建物の中に入らされる。
椅子にロープで固定されて、ガムテープの目隠しを外される。
部屋の中は山小屋のような作りだが、窓はすべて外側から板で覆われている。
それでもエアコンが設置されていることに、村西は少し安堵した。
他には、そのまま床にテレビとラジオが置かれている。あとは部屋の端に仮設トイレが置かれている。あとはなにもない。
口のガムテープも外される。
「どういうことなんですか!? どこなんですか此処は!?」
「别吵、不然我杀了你」
再び村西の喉元にナイフが付きつけられる。
「なんでですか!? 私はあなたたちのことを沢山擁護してきたじゃないですか!? それに私はなんでもない、ただの一般人ですよ!?」
村西は、3日前に失踪した磯部誠の事件についても連日コメントしていた。
「なんのことだ? お前にはしばらくの間、ここで生活をしてもらう」
「安心しろ。毎日水と食べ物は差し入れてやる」
「但し、騒いだり逃げようとはするな。ここには他に誰も来ないし、車も通らない。どのみち騒いでも無駄だがな」
その後、村西明は拘束具を外されてこの部屋に監禁されたが、男たちが言ったように幾ら大声で助けを叫んでも、この男たち以外が来ることはなかった。




