小学生男子にいらん事教えるととんでもない事が起こる話
小学生男子にうっかり言うと何するか分からないという話。
夕飯作りは少し憂うつだ。
子どもが少し大きくなって、下の子の「おなかすいたよ~!」のギャン泣きと上の子の「お母さん、お腹がすきました!」(なぜか敬語) 連呼の中でご飯を作るという地獄の様な状況から数年がたった頃。
さて今日は何作ろっかな、と支度をしていた頃だったと思う。
ガン、ガン、ガンガンガン
ものすごい音が聞こえてくる。近隣のリフォーム工事にしては響く音がダイレクトだ。
しばらくして。
「おかあさ~ん、本当にバナナで釘を打てたよ!」
と、どや顔な下の子たろうの声。
え?
手を止めて死角になっていたリビングをのぞくと。
まっすぐに釘が打たれた板と。
無惨に散らばったバナナだったものの残骸、実や皮が床に散らばっていた。釘や板もバナナと思わしき物質でべたべただ。
ちょっと、何やってくれてんの!と言おうとすると。
「お母さん、言ってた。バナナで釘が打てるって~」
やってやったぜ!とばかりに躍り回る小学生男子。
そこで私は気がついた。 たろうがバナナを冷凍庫に入れてよいか聞いた訳を。凍らして食べるのかと思ってたよ。
「わ~、たろう。何やってるの~。それ、私の……」
上のはなもあきれた様子で残骸を見ている。
板と釘は、当時木工細工にはまっていたはなの物だった。
「たろう、ちゃんときれいにして!これ私のなんだから!勝手に使うな!」
そうして私達はハイになっている男子を叱りつけながら、ぐちゃぐちゃのバナナが散らばる板と周りを片付けはじめた。
――そう。気温について勉強していた、たろうに
「昔のCMにね、マイナス40度の世界ではバナナに釘が打てるってやってたんだよ」
と話をしたのは私だ。
それを聞いて、マイナス40度で無くても凍ればええやろ、と条件設定する雑さが誰かに似ている……私だよ。くっ。内心、頭を抱えたのは言うまでもない。
そういや、子どもの頃に私も同じことやろうとして母に釘さされたな。冷凍庫はマイナス40度にならないって。
妙な遺伝とおのれの詰めの甘さを後悔しながら片付けた。
バナナは再利用できなかった。
「もったいな」
そう言いながら、たろうには二度としないように言い聞かせたような気がする。
何するかわからん小学生男子にうかつな事をいってはいけない、そう教訓に刻んだ私。
しかし、この後もやつはやらかした。
結晶を作るとかで部屋を塩まみれにするのはやめてくれ。 掃き出し窓の床にべったりこびりついて掃除が大変だったんだ。 塩が取れないってはじめて知ったよ。
一度、たろうに
「お母さん、人の言うことをそのまま信じすぎだよ」
とか言われたことあったな。そういう所は相方に似たのか?
日頃から外面が良いとは思ってた。授業参観では「これ、誰?」と目を疑うような爽やか少年だったし。
一見よい子な外面に騙されて何回も出し抜かれる学ばない私であった。
あのバナナ事件から何年もたつ。今でこそ一人で大きくなった様な顔をしているが、確かにそういう時があったのは良い思い出だ。
それでも。いつか、機会があったらばらしてやろうかなと思う私がいる。
クレイジーエンジニア様、
我が家はこんな楽しい家庭でした。
思い出すきっかけを頂きありがとうございます。
小学生男子、不可解な生き物です。




