第6話 隣の人の毒舌がヤバいんじゃが
学年一の美少女と言われる瀬戸川の隣になって1週間が経過。
う~~~ん、だいぶ彼女のストレスがヤバそうだな。
「何か疲れるんだが」
「どうして疲れるんだよ?」
「瀬戸川さんの言葉が結構強いぞ」
「マジか?」
昼休み。俺はマサと一緒に食べながら話した。
ちょいちょいボソッと彼女が言っているのが聞こえてくるんだよな。
例えば・・・
『あの男。私が好きって言いながら胸しか見ていなかっわね。発情サルなのかしら?』
『先輩から告白って、じろじろと見ながら告白してくるし、十中八九私の体目当てじゃない。そんな男のどこがいいのよ』
『・・・この学校の男は性欲だけの生き物が多いのかしら?』
「ってな感じの声がちょいちょい聞こえてくるんだよな」
「・・・相当参ってることじゃね?」
「多分」
見た目もそうだし、彼女自身のスペックも相当なものだ。
だから、彼女にできれば自慢できるって男もいるだろうし、
性的に見ている輩も間違いなくいるだろう。
そうなると、彼女自身ストレスが溜まっていくのも仕方ないかもしれん。
「・・・また呼ばれているぞ」
「彼女はこれから大変だな」
と憐みの目で見る俺とマサだった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「はぁ~~~~」
と隣からため息が出てきた午後の休み時間。
「何か疲れてるね」
「見ればわかるでしょ」
「それもそっか」
と話すことが億劫そうだったため、すぐに会話を切ったのだが、
「そこで聞かないあたり、あなたはモテないわよ」
「それは心に刺さるからやめてくれない?」
「・・・・・」
「・・・だいぶ参っているみたいだね」
さすがにジッーーーと見られると聞くしかないじゃないか。
「告白してこないようにしたいわ」
「それは・・・」
「香田君は止めてくれないの?」
「1人の一般高校生では無理だよ」
「そうよね」
肯定されたらされたで結構心にくるな。
実際今のところ、1週間で2、3回は呼び出されているからね。
何人撃墜したんだろうか?
「何人振ったの?」
「そんなの数えないわよ」
「ですよね」
まぁ、彼女の気持ちもなんとなくわかる気がする。
「俺も参った時期はあったよ」
「それぐらいモテてたってこと?」
「違うよ。兄貴のせい」
「・・・確か、橋渡しみたいな感じを過ごしてたって」
そう、兄貴に告白したい女子が弟の俺に手紙やファンレターを渡してくるんだよ。
何が「手渡すのに勇気がなくて・・・お願い!!」じゃねえ!!
それがほぼ毎日って感じだったからな。
「毎日、兄へのラブレターやファンレターを貰う日だったからな
マジで地獄だった」
「・・・あなたも苦労しているのね」
「瀬戸川さんよりはマシだと思うよ」
「私はまだ自分のことだからいいけど、あなたの場合兄のおまけ扱いじゃない」
「慣れてるからね」
何度も頼まれるとそれが日常とかすからな。
何とも思わなくなったというか。
「けど、嫌なんでしょ?」
「勿論」
「・・・Mじゃないのよね?」
「・・・待って、どうしてそんな話になるのさ?」
急な発言にびっくりしたぞこっちは!?
「だって、兄のそういう手紙を貰うのに慣れているんでしょ」
「そうだけど」
「本当は貰いたくないわけでもあるのよね」
「それは・・・」
ヤバい。完全に矛盾しているではないか?
嫌なのに慣れて貰っている・・・確かにMって言われるのか?
「嫌なのに、これに慣れてしまった自分がいて・・・ヤバい」
「・・・どうしたの?」
「今の俺って結構おかしいのかも」
「それに気づくには遅いと思うわ」
「ですよね」
最悪。
マジで気づいてよかったのかもしれない。
「・・・フフ」
「何だ。俺がおかしいことに笑っているのか?」
「ごめんなさい。あなたと話したことで気が楽になったから」
「・・・それはどうも」
美人の笑顔ってなんか・・・ズルいよな。
何でも許してしまいそう。
「お互い大変だけど頑張りましょ?」
「大変のベクトルはちょっと違うけども・・・そうだな」
何か、変な同盟みたいになってけどこれって大丈夫そ?
「あなたは部活はやらないの?」
「兄貴がいる時点で察してくれ」
「・・・そういうことね」
「それに、アルバイトをしようと考えているからな」
「なるほど。なら、良いバイトがあるけどどう?」
「良いバイト?」
何か、学年一の美少女からバイトを紹介してもらうことになったんじゃが?
それと・・・
「他の男子の嫉妬の視線がヤバいな」
「私がここまで男子と話しているのが初めてだから仕方ないわよ」
「・・・なるほど?」
彼女と話すのにこれから神経すり減りそうだな。




