第58話 家族との会話と兄貴の思い
「・・・疲れた」
とりあえずの片づけが終わった後、
俺たちはそのまま帰宅した。明日も今日と同じくらい疲れると思うと億劫だな。
「お帰り龍兄・・・ってすごい疲れているね」
「今日の・・・出し物が人が多くてな・・・ずっと立っていたからな」
「それだけ繁盛したんだね・・・雫ちゃんからもメールがきたもん」
「そっか・・・なんて?」
「『龍也さんを発見したけど・・・なんかすごい疲れていたよ。めっちゃ店が繁盛していたんだって。明日行ってみなよ』って」
「・・・雫ちゃん」
俺ってそんなに疲れていたのかな?
人に分かるレベルで?
「午前中だけのシフトでこんなに疲れるとは・・・恐ろしいわ」
「龍也。お帰りなさい」
「ただいま・・・夕食は後にするわ。ちょっと風呂に入ってから寝たい」
「・・・分かったわ」
と俺はいったん風呂に入って汗を流して、自室に向かってちょっとだけ寝ることに。
今日の疲れが明日も残るのだけは勘弁したいな。
「それにしても・・・まさか、瀬戸川さんのお姉さんからあんな話をされるとはね」
俺としては一番びっくりしたことでもある。
天才も天才で苦労することがはあるんだと・・・あの人たちもそうなんだろうか?
・・・絶対ない気がするんだよね。
兄貴が苦労・・・ってなんか似合わない気がするからな。
「・・それじゃあ・・・ちょっとだけ寝るとするか」
とベッドの横になって俺はいったん寝ることにした。
1時間後。
「・・・まだ疲れは残っているんだな・・・早く飯食ってちょっとゆっくりしてから寝よう」
と俺はいったん下に降りた。
そこには・・・俺の飯がラップで包まれていた。
「龍也起きたのね。ちょっと待ってね。すぐに温めるから」
「うん」
「食べたら、台所にそのまま置いていいよ。後で洗うから」
「自分で洗うよ?」
「今日は疲れているんでしょ?だから大丈夫よ」
「・・・分かった」
母からめっちゃ気を使われているとは・・・何か変な気分だな。
今まで、こんな気を使われたことあったけ?
「・・・なんかムズムズするな」
と感じながら、ゆっくり飯を食べていた。
風花は現在お風呂で、兄貴も帰ってきているみたいで部屋にいるらしい。
「ご馳走様」
と食べ終わった俺は台所に食器を入れてから、一旦部屋に戻った。
今は風花が風呂に入っているからな。兄弟とはいっても、さすがに気を付けるよ。
「・・・まさか母さんにあそこまで気を使われるとは」
こんな経験は初めてだぞ俺は?
コンコンコン
「・・・誰?」
「俺だ龍也」
「兄貴か・・・良いよ入って」
と俺の部屋に入ってきたのは兄貴だ。
何なんだ急に?
「・・・今日の文化祭はどうだったか?」
「・・・ただただ疲れた。その一言に尽きるよ」
「友達から言われたよ」
「なんて?」
「『お前の弟が頑張ってクレープ作っていたぞ。しかもめっちゃうまいんだよこれが』ってな」
「喜んでもらえたならよかったのかな?」
「・・・それに、ライブにも来てくれたのか?」
「あぁ・・・友達から聞いてな」
本当は行きたくはなかったんだけどな。
雫ちゃんが行きたいって聞かなかったからな。
「・・・それで、一体何しに来たんだよ?」
「・・・龍也は俺のこと嫌いっていうよりは・・・どうでもいいって思っているんだろ?」
「どうでもいい・・・ってめっちゃ嫌な言い方だな」
「違うのか?」
「・・・どうでもいいっていうかは、勝手にしてくれって感じかな」
「そんな感じなのか?」
何度も言っているが、俺にとって兄貴は最初は越えたい存在だったのだ。
今となっては・・・ただただ頑張ってくれ。こっちはゆっくり頑張るからって感じだからな。
「瀬戸川さんのお姉さんに言われてね」
「・・・何を?」
「俺は俺として、香田達也という1人の人間として頑張りたいんだよ。香田恭平の弟として周りに比べられたとしても、俺は俺を貫くってな」
「・・・そうか・・・俺は俺で頑張ってはいたんだがなぁ」
「兄貴の頑張る量と俺の頑張る量に違いがあっただけだ」
「そんなことはない」
「そんなことはあるの。俺がめっちゃ頑張ってやったことを兄貴は軽く頑張っただけでできるんだからな」
「違うさ・・・俺だってそこまで凄いわけじゃない」
「今の俺には嫌味にしか聞こえないよ」
「そんなつもりはないんだ・・・俺はお前が生まれて、俺の真似をするようになったから・・・失望されたくなかったんだよ」
それは・・・初めて聞いたな。
・・・ただなぁ。
「あんたの場合はそれをやりすぎたんだよ。その結果、俺はあんたを諦めることになったんだからな」
「・・・そう・・なんだな」
なんだかんだ、この人って不器用な人だからな。
愛情表現とかが苦手なんだろうが・・・本当に今更な気がするよ。




