第55話 あんたが来るんかい
宣伝していたマサと別れた俺と瀬戸川さんは、
一旦、体育館に行くことに。
「本当にいいのかしら?」
「別に構いはしないさ・・・兄貴との差が埋まることを諦めているからな」
「本当に・・・諦めたのね」
「そうだね」
叶わない願いをするもんじゃないからね。
無駄な努力ってわけじゃなかったけども、届くどころか離れていくだけなら、
諦めたほうが気が楽だからな。
「・・・そうね。私も最初は諦めたわよ」
「・・・えっ!?」
「そこまで驚くかしら?」
「・・・だって、あの時の瀬戸川さんの目を知っているからさ」
めっちゃ目が怖かったからな。
絶対に諦めないで姉に追いついてやるって言っていたからな。
「本当に最初は諦めたのよ。この人には勝てる気がしないって」
「そうなんだ」
「けど・・・ここで諦めたら今までの私の努力を否定している気がしたのよね」
「それはなんとなく分かる気がする」
「それに・・・『私に勝てないなんてまだまだだね』って言われたからには・・・ね?」
うん、その目は怖いからやめてほしいのだが。
ていうか、妹を挑発するなよ姉が。その結果で仲が拗れたら意味ねえだろうが。
「なるほどね・・・俺はもう無理ってなったからな」
「そうなのね」
「どんなに頑張っても追いつける気がしないし、両親もどんなに頑張っても褒めてくれないからな・・・その結果、中学で問題が起きたからな」
「中学で問題?」
「同級生と取っ組み合いの喧嘩をしたって感じかな」
「あなたが喧嘩って・・・なかなかね」
そうだろうか?あの時の俺と今の俺には心の余裕に差がありすぎるからね。
「兄貴のことを知っている人ばかりで、先生も俺と兄を比べたりしていたからな。
結構馬鹿にされていたんだよ」
「教職者失格じゃないそれ」
「確かにな・・・つもりに積もりまくった結果爆発してね」
「それは・・・」
「それで学級問題・・・っというか学年全体の問題になってな」
「親にも呼ばれてバレたってわけね」
「そういうこと。その後、両親とも喧嘩したしな」
「両親とも?」
「まぁね。『なんでもっと早くいってくれなかったんだ』って言われてな。
いや、あんたたちがそれを言うのかってな」
「・・・褒めてもくれないで、努力してきたことを認めなかった癖にってわけね」
「そういうこと」
あの喧嘩は今でも響いているからな。
完全に両親との仲は悪くなった原因だろうし。
っていうかずっと俺が我慢していただけで、これから仲良くなることは多分難しいんじゃないかな。
「正直、俺は両親との仲は元に戻らないだろうなって思うからな」
「私の両親は結構平等に見てくれていたのに」
「俺の場合、兄と姉が優秀すぎたから同じぐらいできるだろうと期待していたところもあると思うんだよな」
「そうね・・・」
となんかちょっとくらい話をしながら体育館に向かっていたんだが、
そこでまさかの出会いが。
「スズ姉さん!!龍也さん!!」
「「雫?」」
バイト先の娘さんであり、瀬戸川さんの従妹の雫ちゃんがいた。
そして、その隣には、
「それで・・・なんで姉さんもいるのかしら?」
「雫ちゃんの付き添いだからね。それにしても・・・似合っているわよ」
「それはお世辞として受け取るわ」
「本当に和服が似合うよね。スズ姉さんは」
「ありがとう雫」
「ところで・・・2人がここに来た理由は?」
と俺が質問してみると、
「私は2人の出し物を見たかったんだけど・・・お父さんから1人で行くのはダメと言われて」
「それで私は学校休みだから付き添いとしてきたって感じかな」
「そういうことだったんですか」
「2人はこれからどこに?」
「体育館よ」
「確かライブをやっているんですよね?」
「ボーカルが俺の兄貴だな」
「なるほど・・・ついて行ってもいいかしら?」
「嫌よ」
すごい即答だったな。
それほど姉を嫌っているんだな。
「私もいっしょに行きたいよ!!」
「雫まで・・・香田君もいいかしら?」
「うん、問題はないけど・・・」
女性3人に男1人って・・・しかも全員美女・美少女だからな。
めっちゃ男からの怨嗟の視線が刺さる刺さる。
本当は離れたいんだけど・・・離れた瞬間ナンパする奴らがたくさん出てきそうだからな。
胃は苦しくなるかもしれないけども、ボディーガードを頼まれている以上はやるしかないよね。
「それじゃあ・・・体育館にレッツゴー!!」
「オォーーー!!」
「さすがに声は落としてほしいわね・・・」
「めっちゃ目立っているからね・・・」
本当にこんな感じで大丈夫かな?
ちょっと不安になる俺と瀬戸川さんであった。
「ほら。2人もいっしょにやろうよ」
「「やりません・やるわけないでしょ」」
めっちゃ目立っているし、勘弁してくれませんかね?




