第52話 兄との話と家族の確執は・・・
試作もばっちり(要練習の子もいたが、本番前には仕上げるとのこと)で、
着々と準備が整ってきた。
「時間が経つのは早いな・・・入学して半年だぜもう」
「そうだな・・・いろいろあったな」
「・・感傷に浸っていないでさっさと着替えてきなさい」
今は当日の接客用の服の仕上げをしていた。
俺は厨房だからいいだろうと思っていたんだが、
「香田君も素材は悪くないんだから、人手が足りないときは接客をしてもらうわ」
とのことで、着替えていた。
結構シックな格好なのね。
「地味じゃない?」
「派手すぎるのはちょっとね」
「それはそうだ」
「俺の袖が短いわ」
「どれぐらい・・・って結構短いね。別の誰かの服と間違えたのかも」
「どうだタツ」
「・・・馬子にも衣裳だな」
「失礼な・・・俺があまりこういう格好が似合っていないのは事実だけどな」
マサって髪が金髪だからな(高校入学して染めたらしいが・・・期末次第では黒になるかもな)。シックな格好に頭の金髪が派手でチグハグ感が増すな。
「それに対して・・・お前はめっちゃ似合っているな」
「バイトの格好とあまり変わらんからな」
「それもそうか」
「それじゃあ・・・お待ちかねのコスプレ衣装だよ」
「着る人はこっちで選定したからね。どんどん呼んでいくよ」
コスプレ衣装については、全員分は難しいとのことで、
一部のかっこかわいい男女が着ることになった。
その中にはもちろん・・・
「・・・私の格好が」
「瀬戸川さんめっちゃ似合っているよ!!」
「やっぱり瀬戸川さんには着物よね」
「これぞ和服美人!!」
「・・・煽てても何も出ないわよ」
学年一の美少女の着物姿・・・これは凄いな。
「瀬戸川さん・・・めっちゃ似合っているな」
「あぁ。完全に着こなしているよな」
「・・・当日は大丈夫かね?」
「ナンパかぁ」
これは・・・絶対あるだろうな。
ほぼ確定だろうし、外部の人が来ることもわかっているからな。
「けど・・・絶対ナンパが来る可能性が高いよね」
「それもそうよね・・・よし!!香田君」
「何?」
「基本的にシフトは瀬戸川さんと一緒になってもらうけどいい?」
「俺なんだ?」
「このクラスの男子の中で、瀬戸川さんとよく話しているのは香田君か佐島君だからね」
「佐島君は・・・ビジュアルがいいから、外で宣伝してもらいたいから」
「必然的に香田君になるけど・・・お願いしてもいいかな?」
・・・マサは宣伝確定なんだ?
俺が瀬戸川さんを守るのかぁ~~~
「私からもお願いしてもいいかしら?」
「瀬戸川さんなら投げたりできそうだけど?」
「・・・私はそこまで力が強くはないわ」
「・・・分かった」
こうして文化祭の間、俺は瀬戸川さんのボディーガードになることが決定したのだった。
「ナンパされた時は・・・お願いするわ」
「暴力で来られたらどうしようもないけど・・任された」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
文化祭の準備が終わり、俺は家に帰宅した。
「ただいま」
「お帰りなさい」
「お帰り龍也」
「・・・姉さん帰ってきてたんだ?」
「夏休みに帰っていなかったからね」
「応援の時だけか確か」
姉貴がいたのにはびっくりしたが・・・いつものことだろうな。
「そういえば・・・あんたと恭平の学校は文化祭だっけ?」
「そうだけど?」
「・・・見に行こうかな」
「俺のところに来てもクレープが食べれるだけだぞ」
「いいじゃない。甘いもの大好きだもの」
そういえばそうだった。この人、大の甘いもの好きだったな。
「・・・龍也」
「どうした母さん?」
「龍也は・・・私たちのこと嫌い?」
「急になんで?」
「・・・ちょっと気になってね」
「どうだろうな・・・好きか嫌いっていうよりは、ほっといてほしいかな」
「それは!?」
「どうせ俺のことなんてまともに見たこともないだろうしな」
「そんなことはないわよ!?」
「じゃなかったら・・・兄貴・姉貴と比べるような真似はしなかったと思うな」
「それは・・・」
そう。俺としては自分自身を見てほしかった。
「頑張ったね」
「偉いね」
って褒めてほしかったんだよ。
もしかしたら、不貞腐れているだけだとかいう奴がいるかもしれないが。それは違う。不貞腐れているんじゃなく、家族との関係がよくなることを諦めている。
「あんたの努力が足りないだけよ」
「・・・何もわからないくせによく言うぜ」
「何もわかろうとしないことはしていないわよ。あんただって相談とかすれば」
「相談した結果がこうなんだよ!!」
「「・・・・・」」
「相談したさ!!結局まともに取り合ってくれなかったじゃねえか!!」
そうだ。相談したことは2・3回あるんだよこっちは。
けど・・・一切まともに取り合ってくれなかったのはそっちだろうが。
だから俺は諦めたんだよ。この人たちに何を言っても無駄だって。
「部屋に戻るわ」
「・・・・」「龍也・・」
悲壮感漂う表情の母と、苦虫をかみしめたような顔をした姉貴を見つつ、
俺は自分の部屋に戻るのであった。




