第5話 席替えの隣の相手がまさかの?
どうやら席替えをするようだ。
「席替えをしたいって要望が結構あったからね。ちなみに、今は男女で列を分けているけど、別けないでバラバラでやるわ」
ということで、くじを机の上に置いた先生が学級委員長の坂上駿太に後の仕切りを任せた。
「とりあえず、くじをどっちから引かせるかじゃんけんをしようか」
ということで端に座っている男女がじゃんけんをした。
その結果。廊下側から引くことに。
「俺たちは早めに引けるな」
「中央にいる時点でどっちでもよかっただろ?」
「それもそうか」
とマサとしゃべりつつくじを引くのを待ち、自分の番になりくじを引いた。
「タツは何番」
「俺は18番だな」
「黒板に先生がランダムに書いているな・・・ってお前いいな」
「ベランダ側の一番後ろって」
めっちゃ最高じゃねえか!?
ちなみにマサは席が一つ前になるだけ・・・今俺が座っている場所かよ。
「移動楽だな?」
「それは煽りか貴様は」
「いや、煽ってはいないけど・・・ドンマイ」
「くそったれ!!」
って言いながら、席替えの準備に取り掛かった。
自分の荷物を全部机の上に出して、荷物をそのまま新しい席に持って行く。
机事じゃないのが助かるな。机事運ぶってなったらめっちゃ大変だったろうな。
「ここは・・・晴れた時がヤバいかもな」
ポカポカした日、この日の光を浴びていたら眠くなる可能性があるぞ。
・・・一番後ろは逆に狙われるからな。
先生からしたら、後ろの生徒の居眠りは監視するだろうし、気を付ける必要があるよな。と考えていたら、隣の人から声を掛けられた。
「今日からよろしくね。香田君」
「・・・あぁ、よろしく。瀬戸川さん」
まさかの隣が《《あの》》瀬戸川涼香だったとは。
学年で1番の美少女はと1年男子に聞かれたら10人中9人は彼女だと答えるだろう。
成績優秀で中間1位。
入学式の新入生代表挨拶で男子高校生を一気に虜にした別嬪さんなのだ。
男子の何人かが俺をにらんでるのが分かるし、マサにいたってはクスっと笑っているじゃねえか。
はぁ~とため息をついたと思ったら、隣の瀬戸川さんも聞こえたのか、
「私の隣はそんなにイヤかしら?」
「イヤっていうよりも嫉妬の視線がな」
「・・・私の隣がそんなにいいのかしら?」
「瀬戸川さんの隣ってだけで男って生き物は喜ぶものなんだよ」
「私の隣がいいって・・・男って単純なのね」
それは同意しよう。
男って生き物は単純な生き物なのさ。
彼女の前でかっこいいところを見せようと頑張れば認めてくれると思うかもしれない。それは淡い希望でしかないのだから。
「香田君とは一度話したかったの」
「またどうして」
「自己紹介のことよ」
「あぁ。そういえばあの時唯一反応してくれたもんね」
あの時、くすっと笑っていたのが何を隠そう瀬戸川さんなのだ。
「俺の兄のこと知ってる?」
「生徒会長でしょ?」
「うん、あの人とずっと比べられ続けていてね。中学時代に、俺を経由して手紙などを渡そうとする女子が多かったからな」
1年だけだとはいえめっちゃつらかった。
俺が改めて現実を知った時だよ本当に。
俺自身、バレンタインとかチョコを貰ったことないんだもん。
めっちゃ溜息出るよね。
「・・・私と同じね」
「うん?何か言った」
「何でもないわ」
と会話は終了した。
・・・・・・・・・・・・・・・・
「まさかの瀬戸川が隣なんてな」
「何が言いたいんだ?」
「だってあの『難攻不落の女王』だぞ」
そう、瀬戸川はそのビジュアルからか、6月まで2か月間で8人から告白され、全部を断っているんだと。そのうち3人が上級生で5人が同級生だ。5人のうち2人が同じクラスであり、教室にいるのが気まずいとぼやいているんだとか(マサからの情報)。
勉学や異性交流についてあまり興味がないらしく、
ついたあだ名が「難攻不落の女王」。
もしくは撃墜王というあだ名も。
「浮世離れしている感じはあるよな」
「確かに・・・1人だけ同学年じゃないみたいだな」
「気軽に声を掛けてくれたけどな」
「マジでか!?余り話かけられたくない人だと聞いたぞ」
そうなのか?
俺の場合は・・・
「自己紹介のことが気になっただけみたいだな」
「自己紹介?」
「入学式の俺の自己紹介に唯一反応してくれたのが彼女だからな」
「そうなのか?」
くすっと笑ったあの顔を忘れていたとは一生の不覚。
「まっ。1カ月ぐらいで席替えもするだろうし気にしないようにしよう」
「お前・・・聞いていなかったのか?」
「何がだ?」
「今度の席替えは2学期にするんだと」
「2学期すぐか?」
「すぐにやるのかはしらねえ」
・・・ってことは最低でも後2カ月は彼女の隣なのかよ。
「周りの男子の嫉妬の目が怖いんじゃが」
「我慢しろ」
とマサに冷たく突き放される俺なのであった。
気が重いよ~~~。




