閑話 妹の気持ち
「ふぅ~~~」
「緊張している?風花?」
「そりゃあ緊張しますよ・・・全国大会ですから」
私は香田風花。中学2年であり今は陸上の全国大会の100m走の出場前のアップ中だ。・・・結構緊張はしている。全国大会については1年の時にも経験しているけどその時は補欠だから・・・選手としては初めてなので緊張している。
小学生の時も陸上クラブに所属していて、全国大会に出たことがあるけど
その時より緊張している。
「・・・先輩も緊張を?」
「そうだね・・・初めての全国だけど」
「だけど?」
「やることはやったからね・・・頑張るのみだよ」
「・・・ですね」
お姉ちゃんやお兄ちゃんもこんな気持ちだったのかな。
・・・・・応援、来てくれているかな?
そう思いつつ、予選が開始された。
私は6組目として呼ばれ、レーンに向かった。
その時・・・周りを確認したら両親と兄2人がいた。
・・・お姉ちゃんは来れないって聞いたから仕方ないけど・・・来てくれたんだ。
「これで・・・頑張れる」
私には兄が2人いる。
1人は恭介お兄ちゃん。
頭がよくて学年1位を常にとっている凄い人だ。
それでいながら運動神経もよくて、まさに文武両道を歩んでいる人だ。
私は勉強が苦手だから本当に羨ましい人だ。
もう1人のお兄ちゃんである龍也お兄ちゃん。
龍也お兄ちゃんは周りから「香田家の無能」とか言われていて、
私からしたら馬鹿にするなって怒りたいけど、龍也お兄ちゃんは全然怒ろうとせずにいつも努力している。
勉強だって学年で10位以内に入ったりもしているし、運動だってすべてのスポーツをそつなくこなせる人なのに・・・。
私は龍也お兄ちゃんをすごい尊敬している。
努力を怠ったりせずに頑張る姿が私にはかっこよく見えたんだ。
だから・・・龍也お兄ちゃんの心の本音を知ったとき、
私はなんて最低な妹なんだろうって思ったんだ。
『龍也!!』
『今更なんだよ!!』
『俺はお前のことを思って・・・』
『思っているんだったら、兄貴と比較したりしねえんだよ!!』
『それは・・・』
『あんたに分かるのかよ!!毎回毎回、「恭介はこうだった」「恭介はお前と同じ歳ではこうだった」って言われる苦痛がよ!!』
『龍也・・・』
『なら聞いてやる・・・俺を褒めたことあるか?あんたたちは!!』
『『・・・・・・』』
『ほら!!ねえじゃねえか。・・・・もうほっといてくれ頼むから』
私が小学6年の時、中学校で龍也お兄ちゃんが問題を起こしたらしいんだが、
そのあとのお父さんお母さんとの会話を聞いて絶句した。
お兄ちゃんはいつもずっと戦っていたんだ。
私は運動面で才能があったのか1位を取ることが多くて、陸上クラブに入部してから全国を目指せるところまできていた。
龍也お兄ちゃんのように努力することで・・・・
『俺はどんなに努力しても姉さんや兄貴に・・・風花にも勝てない。
・・・こんな俺が努力しても意味ないだろ』
逆に言えば・・・私はお兄ちゃんを傷つけた1人でもあったのだ・
それからお兄ちゃんは努力することをやめた。
『龍也お兄ちゃん』
『どうした?風花?』
『お兄ちゃんは努力しないの?』
『・・・努力しても無駄だってことが分かったからな』
『・・・私は努力しているお兄ちゃんが好きだよ?』
『ありがとな・・・けど俺はもう疲れたよ』
と言った龍也お兄ちゃんの顔を見た時・・・本当に疲れている表情をしていた。
だから・・・私は証明したかった。努力は報われることを。
けど無駄だった。私じゃあお兄ちゃんを振り向かせることができなかった・・・。
昔のように「風花。よく頑張ったな」って言われて頭を撫でてほしいなぁ。
そのために頑張れば頑張るほど・・・龍也お兄ちゃんとの距離は遠くなった気がした。
・・・いつかは、いつかは、お兄ちゃんと仲良く昔みたいに走りたいな
と思い続けながら、陸上を頑張っているけど・・・、
今の私にお兄ちゃんを癒せることができるのかな。




