第28話 夏休みは・・・バイトを多めに
期末テストが終わった週末。俺はバイト先に来て働いていた。
「お金を稼ぐことが目的ですか?」
「いや。家にいたくないだけ」
「それだけの理由ですか・・・仲が悪いのですか?」
「めちゃくちゃ悪いって言ったら」
「それはもう何とも言えませんよ」
と俺は雫ちゃんとバイトの休憩中に軽く話していた。
仲が悪いのは瀬戸川さんも同じでしょうが。
「スズ姉は・・・そうだよね」
「勉強会で送った際の顔がなぁ・・・めっちゃ怖かった」
「そんなにでしたか?」
「あれは・・・復讐者の顔だよ」
「・・・ちょっと見たかった」
「雫ちゃん?見ていた俺はめっちゃ怖いって言ったんだけど?」
あの顔は本当に怖かったからな。
めっちゃ憎悪を抱いているのがわかる。
あそこまで憎んでいると・・・仲が戻ることはないんじゃないかな?
「俺の場合、家族全員との仲が気まずいからな」
「家族ってことは、父親や母親とも仲が悪いのですか?」
「悪いっていうかは・・・向うが無自覚に俺を傷つけていただけって話」
そこで俺は雫ちゃんと交代を告げに来た雫ちゃんのお母さんであり、
マスターの奥さんである佳織さんに話した。
「・・・て感じかな・・佳織さん?」
「あっ!?ごめんごめん。交代を告げようと思って来たんだけど」
「いつの間に?」
「ありがとうございます。佳織さん」
「・・・頑張ってね。いろいろと」
「?はい」
なんか・・・気を使われたのかな?
「しかし・・・中々な発言ですね?」
「何がだい?」
「頑張っている龍也さんは一度もほめられなかったんですよね?」
「そうだね・・・兄がすごかったから」
「お兄さんはお兄さん。龍也さんは龍也さんって感じで1人1人を見なかったってことですもんね」
「・・・見ていたのかもわからないしな」
多分・・・俺のことはそこまで見ていなかったのかもな。
姉や兄がすごかったのも相まって、俺がどんなに頑張っても
褒めてもらえることは一度もなかったからな。
「先生たちも特に兄がすごかったのは知っていたからな。
めっちゃ期待されて、勝手に失望されていたよ」
「それは・・・教職者として失格だと思いますよ?」
「・・・それでも人は期待するんだよ。兄が優れていたから弟もそうなんだろうって」
俺はその期待に応えることができなかっただけだ。
・・・マジで居心地悪かったからな。
「とりあえず・・・接客頑張ろう」
「そうですね」
と俺と雫ちゃんは接客を頑張るのだった。
ちなみに。
「香田君」
「何でしょうかマスター?」
「明日から、君にもコーヒーを入れてもらおうと思うけど大丈夫かい?」
「いいんですか!?」
「ぜひお願いしたいと思ってね」
「ありがとうございます!!・・・雫ちゃんにはさせないんですか?」
「あぁ~~~。雫はね」
とめっちゃ濁そうとしている。どういうことだろうか?
「雫はね。コーヒーを淹れるのが苦手なのよ」
「そうなんですか?」
「ちょっとお母さん!?」
「前に淹れてくれたコーヒーを飲んだんだが・・・まさかギャグ漫画のように吹いてしまうとはね」
「お父さんまで~~~」
マスターがそこまで言うってことは本当なんだろうな。
どんな味がするんだろうなぁ?
「俺も・・・飲んでみたいですね」
「やめたほうがいいと思うよ」
「それはまたどうして?」
「泥のような味がしていたわよ」
「泥!?」
「・・・そこまで言わなくてもいいじゃん」
泥のようなコーヒーか・・・本当にどうやったら淹れれるんだろうか?
カランカラ~~~ン!!
「いらっしゃいま・・・紫穂ちゃんか」
「来ましたマスター」
来たお客さんは瀬戸川さんのお姉さんだった。
1人で来たんだ・・・ってことは俺の姉はいないな。ヨシ!!
「ちょっとだけ・・・そこのバイトさんと話させてもらっていいですか?」
「えっ!?」
「それは・・・さすがにダメかな?」
「貴重な労働力を奪わないでほしいわ」
「労働力って・・・」
「バイトが終わった後で大丈夫ですよ。何時に終わります」
「今日は土曜だから・・・15時までだね」
「15時・・・なら全然待てます」
「ということで波多野君もいいかい?」
「えっ・・・まぁ、はい」
俺にいったい何の用事なんだろうか?
と気になりながらバイトをこなし、15時に終わり彼女がいる席に向かった。
「ごめんなさいね。葵の弟君」
「・・・で何の用ですか?」
「ちょっと・・・怖い顔をしているわよ」
「怖いっていうよりは、要件を早く済ませてほしいだけですよ」
「・・・単刀直入に言うけど、あなたは涼香のことをどう思っているの」
「へっ!?」
まさかの質問に俺は驚いて間抜けな声が出るのだった。
この人は俺にいったい何を聞いているんだろうかと。




