第10話 幸せがないことはもう諦めているからな
幼馴染みとの登校って聞くと、
「ギャルゲーかよ」とか
「うわっ!!青春しているね」とか
言われたりするが、俺の場合はストレスにしかならない。
それは何故かって?
うんなもん、視線が刺さっちまうからだよ。
あれから美優と一緒に登校したんだが、此奴の見た目は美少女なんだよな。
髪の毛は茶髪のセミロングで顔も整っている。
学年1位の美少女は瀬戸川さんだが、学年トップ3の美貌だろう。
そんな女子と冴えない男が一緒に登校してみろ?
針のむしろでしかねえよ。
あの後、会話なんて一切なかったからな。
ただ、玄関に入る前に。
『ねぇ。放課後空いているかな?』
と聞いてきたから、
『今日からバイトだから無理だ』
と言ったら、
『・・・私も行っていいかな?』
『来るな』
ノータイムで出たよ言葉が。
『お前との関係はもう終わったんだ。俺とお前は幼馴染みという関係には戻れないって』
『そんなことは!?』
『俺のことを残念と思っていたんだろう?情けないって』
『・・・・・ゴメン』
『だからさ。お互いフラットな関係で行こうよ。《《北条さん》》』
『えっ・・・・・』
と言って彼女が呆然とした顔になったのを横目に教室に向かった。
兄貴のことが好きだろうし(否定はしていたけど、照れ隠しだろうしな)、
俺が名前で呼ばないほうがいいかもしれないからな。
最初からこうすればよかったってのもあるし、俺の行動が遅すぎたのかもしれないな。
問題は・・・・・
「早く教室に行こう。めっちゃ視線が痛い」
この視線を何とかしなければ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「はぁ~~~」
何で学校に登校しただけで、こんなに疲れるのだろうか?
とため息をすると、隣から凛とした声が俺を刺しにきた。
「あら?今日からバイトなのに朝からそんな調子で大丈夫かしら?」
「・・・ちょっとね」
「・・・すごい苦虫を噛みしめているような顔をしているけど?」
「本当にめんどいことがあっただけだからね」
いまさら関わってこないでほしかったよ、ガチで。
「そういえば、瀬戸川さんの叔父さんの喫茶店は何人バイトを雇っているの?」
「ゼロよ」
「へっ?」
・・・・・嘘だろそれは!?
「叔父さんの家族皆で経営しているからね」
「けどバイトを募集しようとしたのは」
「娘さん・・・私とは従姉妹の関係なんだけど、大学に今年に入学して居ない分、結構大変だったらしいの」
「なるほどね」
今までは家族で経営していたけど、1人いなくなったことで仕事が回らなくなったってことか。
「最初は何とか出来ていたんだけど・・・さすがにね」
「そういうことね」
「・・・ところで、登校の時にざわざわしていたから窓から見ていたんだけど、
貴方の隣にいた人は?」
「・・・幼馴染みだよ」
「の割には仲がいいとは思えなかったんだけど?」
それは正解だよ。
正直、幼馴染って感じじゃなくなっているし、
何だろうな?
もう俺には分からないや。
中学時代に仲が拗れて、そのままずっと話もしなかったからな。
同じ高校なのも今知ったからねこっちは。
今になって関わってくるとは思わないよ。
終いにはバイト先も聞こうとしてきたし。
「はぁ~~~」
「またため息を付いて・・・幸せが逃げるわよ」
「俺に幸せが来ないことは知っているからね」
「何か、ネガティブすぎるわね」
「かといって、ポジティブすぎるのも逆にウザがりそうよね」
「・・・否定しないわ。あなたは逆にネガティブに振り切り過ぎよ」
「・・・ネガティブっていうよりは開き直りってことで」
俺に幸せは来ないことはもうわかっているんだ。
姉貴と兄貴のような天才が上にいるんだから。
ずっと比べられ続けておかしくなった俺に幸せはきっと来ないと思う。
「・・・あなたのその開き直りはどこから来るのよ」
「兄貴という化け物がいるからな。あの人とずっと比べられ続けると壊れるんだよ」
「壊れ・・・なるほどね」
「何がなるほどなんだ?」
「あなたは壊れているっていうよりは達観しているのね」
「達観かな?」
「自分はもう敵わないからどうでもいいやって感じでしょ?
それで、周りのことも気にしなくなったってことよね」
ヤバい。マジで正解だ。
どんなに頑張っても差が開くばかりだし、色んな人に比べられて馬鹿にされたからな。人に対する評価を気にしなくなったもんな。
どうやっても勝てない人にずっと挑むのはきついだけだからね。
「俺は熱血キャラにはなれないからね」
「あなたが熱血は・・・似合わないと思うわよ」
「ズバッというな」
・・・いつの間にか、学年一の美少女と普通に話している俺を教室にいる男子全員が羨望の目で見てくるんだが?
「・・・」
「どうしたの?」
「・・・この後、大変だなぁ」




