吸血鬼とブラウニー
すいません。部活やらテストやらで全然更新が出来ませんでした(汗)
目が覚めるとそこは、一面の銀世界でした。
……なんてことは無く、俺が目覚めた場所は暗くじめじめとした空間だった。
どこだ? ここは。何で俺はこんな所に?
手首にひんやりとした金属特有の冷たさを感じた。
「これは……鎖か?」
見てみると、俺の腕は鎖で縛られていて、その鎖は天井につながれていた。
……何故にこんなキリストが磔の刑にされたときみたいな感じに拘束されてるんだ俺は。
首を動かし辺りを確認する。暗いから無理だろう? 吸血鬼なんで問題ないっす。
壁、壁、鉄格子、壁、壁。
はい、牢屋ですね。分かります。
段々意識が覚醒していき脳が働き始めると、俺が何故、拘束されているかが分かってくる。
チンピラどもからランを助けて、そのお礼にと食事に招待され、そこで神父に毒を盛られ俺は意識を失った。
……そこで最後、ブラウニーファミリーに売るとか何とか言ってたから十中八九ここはブラウニーファミリーの牢屋であろう。
つーか、俺ってかなりダサくね? 最強だと思ってたのに毒如きにやられるとは……。
あー、こんな事態になるって分かってたら、チート能力を貰うとき毒耐性についてとか考えていたのに……。まぁ、嘆いてもしょうがねぇ。後でパルに解毒魔法について聞いてみるかな。
カツカツカツ――。
誰かが足音を立ててこちらに近づいてくる。
見回りか?
「お目覚めかね」
現れたのは色々な宝石を身に付けたいかにも金持ちと言う感じの小太りのオッサンと、その護衛だと思われる兵士二人だった。
「あぁ――。最悪の目覚めだったがね」
「そうかい」
「ところで貴様らは誰だ。恐らくブラウニーファミリーの奴らだと思うのだが」
仮面を着けているので男を睨むことは出来ず、少し威圧気味に言う。
「おぉ、恐い、恐い。そんなに警戒してくれるな」
ニヤつきながら方をすくめて見せる男。
こういうキャラはゲームや漫画の中でもウザかったが、実際当事者になってみるとかなりウザさが増すな。
「私の名はブラウニー=コベル。ブラウニーファミリーの頭領さ」
「……ほぅ」
頭領? コイツがか? ならず者たちを統べるものだと聞いていたから、もっと屈強な男を想像していたのだが。
「さて、いきなりだけど今、君が置かれている状況については理解しているかな?」
「あぁ。大方、俺は神父にでも売られたんだろう? 反逆者として」
「理解できているようだね……」
ニヤリといやな笑みを浮かべるブラウニー。
そういえば、パルたちはどうしたんだ?
「俺の他にもここに売られてきた奴はいなかったか?」
「君の他に……? あぁ、パルとかランとか言う上玉の娘たちかい? あれは君のつれだったのか」
なん……だと。
「まさか、その二人に手を出してはいないだろうな」
俺のハーレム候補のパル。俺ですらまだ手を出していないのに、こんな下種野郎どものいいおもちゃにされていたら……。俺はどうなるか分からん。
今すぐにでもこんな軟な鎖を破ってコイツを殺してやりたいくらいだ。そうしないのは、まだパルに手を出されていない場合、本当にパルが襲われてしまうかもしれないからだ。
ランはまだ候補に入れるかは決めていないが、コイツらの毒牙にかかっていたらと思うといても立ってもいられない。
クソっ! ここに二人が居れば、二人を連れてさっさとこんな所から逃げられるのに!!
「安心してくれていい。まだ、手を出していないからね」
そんな俺の葛藤を知ってか知らずか、おちょくるように言ってくるブラウニー。
あぁ、ウザイ。
「……随分と含みのある言い方だな」
……落ち着け。COOLに行こうぜ俺。ここで熱くなってもバッドエンドしか待ってないぞ。
「まぁ、君次第だからね。彼女達の運命は」
俺次第? どういうことだ?
「金も無く、治安も悪いこの町にどうして人が生きていられるか分かるかい?」
俺は首を横に振る。
「それはね、私達が半年に一回開いている大規模な催し物のおかげなのだよ」
「大規模な催し物……裏カジノか何かか?」
「そうだね。それと大差ないさ。私達はコロシアム、と呼ばれるものを開いている。それに貴族様や金を持った商人達がお忍びで沢山やってくるのだよ」
「人間と人間の殺し合いや、人間と魔物との殺し合い、魔物と魔物の殺し合いを見てどちらが勝つかを予想してお金を賭けるという趣向の大会さ」
なるほど……。賭け事と言うのはやるほうより、運営しているほうが儲かる。
この時代にテレビやゲームなどの娯楽も無いだろうから、このような大会にくる奴も多いのだろう。
日本の江戸時代の町人達の娯楽の一つに、処刑を見るということがあったようだし。
だが、それと俺に何の関係があるというのだろうか?
「それがどうした」
「その大会に君を出場させようと思ってね」
カラカラと笑うブラウニー。俺をその大会にだと?
「聞いたよ? 部下達から。何でも君は腕が立つようじゃないか」
「……」
「本当なら、ブラウニーファミリーに逆らうものは死罪に値するんだけど、君は腕が立つと聞いたから、この大会で魔物とでも戦ってもらおうと思うんだ。いやー、例年人間と魔物の戦いは人気だけど数が少なくてね。君が出てくれると私達はとても嬉しいんだけど」
「なに、君がこの戦いに勝てば、君と彼女達も解放してやろうじゃないか。どうだ? 悪い話じゃなかろう?」
確かに悪い話ではない。
恐らくブラウニーは俺が魔物に負けると思っているのだろうな。本来殺すはずだった俺を使って大会を盛り上げさせ、魔物との戦いで俺を殺し、その後でパルとランを奴隷として貴族とかに売るんだろう。
ブラウニーは体よりも頭を使ってのし上がってきたタイプの人間のようだ。
……いいだろう。その考えに乗ってやる。
「その戦いの時だけパルとランを解放するのならその大会に出てやる」
「君は自分のがどういう立場に居るのか本当に理解しているのかな? まぁ、いい。解放は無理だろうが十字架に磔て審判席に置くくらいだったら可能だ」
よし、これでいい。
「構わない」
もし俺が勝ったとき、コイツが素直に解放してくれるとは思わない。恐らく、パルとランを楯に俺を拘束してくるのだろう。
……だが、そんなことはさせねーぜ。
こうすれば、パルとランの居場所がわかるので俺の僕にした男二人で助けられるし、思う存分俺は暴れられる。
「フフフ……それでは大会は明日だ。期待しているよ」
そう言ってブラウニーは立ち去った。
ブラウニー=コベルそれと神父め。この俺を嵌めた罪は大きいぞ。
「吸血鬼を、嘗めるなよ?」
前回の話で、何故最強の吸血鬼のはずのシュウヤに毒が効くんだよ!! というツッコミを数多くいただきました。
これに関してはこの話でもチョコッと書いたように、神様から能力を貰う際にシュウヤが毒耐性についてのことを何も考えていなかったため、毒が効いてしまったということになっています。また、黒魔法についても同様でシュウヤにはで効いてしまいます。こじつけがましいとは思いますがスミマセン……。