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吸血鬼と厄介事

話が少し急展開?

私にはこれしか思いつきませんでしたので・・・。

「お願いです・・・・・・。どうか、どうか私達をお救いください!!」


 そう言って何度も頭を下げる神父。

・・・・・・はぁ、どうしてこうなった。厄介事に巻き込まれることは予想していたが、まさかここまでとは。


 俺はほんの数十分前の出来事を思い出していた。





=====


「着いたよ! ここがボク達が住お家だよ」


 ボクッ娘少女、ランに先導されること五分。俺たちはランが住んでいるという家の前に着いた。


「ここ、ですか」


 俺とパルは言葉を失っていた。

・・・・・・どうみても廃協会です。ありがとうございました。


 ボロボロの外観、所々割れている窓ガラスや頭の無い女性の像。何でだろう、協会というより魔王の住む城に見えてきた。


「さぁ、入って! 贅沢なものは出せないけど、ご飯をご馳走するよ!!」


 扉を開け、早く早くと促すラン。

いや、入りたいのは山々なんだけどね・・・・・・。俺の本能がそれを拒否するんだよ。


チンピラから助けた少女・・・・・・治安の悪い町・・・・・・廃協会・・・・・・。

やっべ、厄介事の匂いがプンプンしてきやがるぜ。



「・・・・・・シュウヤ様」


 パルが小声で話し掛けてくる。


「どうした?」


「ここは廃っているとはいえ、神聖な魔力を纏った協会。シュウヤ様のお体は大丈夫なのでしょうか」


 あぁ、パルがさっきから思案顔だったのは俺のことを心配してくれていたからなんだな。

俺は例外だけど通常の吸血鬼は神聖なものが弱点の一つだといわれているし。


「心配はいらない。俺は特別だからな」


「そうですか」


 ホッとした顔になるパル。・・・・・・あぁ、この娘はなんていい子なんだ。

まだ会って数日しか経っていないというのに俺のことを心配してくれるなんて。


「ありがとうな」


 思わず俺はパルの頭を撫でる。

心なしかパルは顔を赤らめている。ん?ここに来てようやくフラグが経ったか?

・・・・・・いや、それは無いな。俺の行動って何故か裏目裏目に出てるし。


「仮面の方にパルさーん! 早く来てーーー!!」


「分かった」


 元気がいいなランは。






「あなた方がランを助けてくれたのですか。感謝いたします」


 俺たちを出迎えたのはニコやかな笑みを浮かべた神父だった。



「いえ、助けたのはヴァン様ですので、お礼はヴァン様だけにおっしゃってください」


 ヴァンと言うのは俺の偽名だ。ヴァンパイアだからヴァン。そこ! 単純とか言わないで!!


 俺が偽名を名乗ることにした理由は三つ。

 

 一つ目は、この世界には黒魔法と呼ばれる相手を呪い殺す魔法があるらしい。その魔法を相手にかけるには相手の名前を知らなければならないらしい。・・・・・・某死神のノートみたいだな。その対策として俺は偽名を使うことにした。


 二つ目は、自分の信頼する者以外に俺の名を教えたくは無いというもの。


 三つ目は、その、何だ。この洋風ファンタジーの世界に和名は似合わないと感じたからだ。


うん。最初以外まともな理由になっていないね。


「そうですか・・・・・・。それでは改めましてヴァン殿、どうもありがとうございました」


「・・・・・・」


 何でだろうか。この神父の感謝の言葉は素直に喜べない。

なんなんだ。このモヤモヤは。


「ヴァン様?」


 心配そうに見上げてくるパル。


「気にするな」


「そうはいきません。恩人に何の御もてなしをしないのは私の人道に反します」


 そうニコやかに告げる神父。

・・・・・・不気味な笑顔だ。


「食事にご招待しましょう。今日のお礼ということで。ラン、食事場に案内してあげなさい」


「はい。神父様」


 ランはそう言って俺たちを先導し、食事場へと案内してくれた。


「ここだよ!」


「フム。なかなか立派だな」


「えぇ。そうですね」



 ランに指示された席に座り辺りを見回す。


「気にいってもらえてなによりです」


 いつの間に着たのか神父は俺の隣に座っていた。


「食事をもって参りました」


 シスターさんたちが食事を持ってきてくれた。だが・・・・・・これは・・・・・・。


見るからに固そうなパンと少ししかないスープ。ふぅ、仮面を着けてて良かったな。

つけてなかったら俺の引きつった表情を見られるところだった。


「ラン、自分の部屋にもどってなさい」


「はい」


 ここでランが退場。

あぁ、俺の癒し成分が・・・・・・。


「すみません。このようなものしか用意できませんが・・・・・・。これでも私達にとっては贅沢な食べ物なのですよ」


 贅沢?これでか?


「それは、やはりこの町の治安が関係しているのですか?」


「はい。こんな危険な町には行商人も滅多には来ませんし、物を買うにもブラウニーファミリーにお金を通さなければいけませんから」


 あ・・・・・・スープ旨いな。この仮面は着けていても物を食べられるようになっているから不思議だ。


「ブラウニーファミリー、とは?」


「この町を牛耳っているならず者たちの集団ですよ」


 固いッッ!! このパンやっぱり固いよ!!


「奴らは私達を人だとは思っていないのです! 金を巻き上げるためのカモとしか思ってないんです!!」


「・・・・・・」


「この協会に住んでいるものたちは皆、ブラウニーファミリーに何かを奪われたものたちなのです。それは親だったり、恋人だったり、お金だったり、家だったりと様々です。そして、皆この現状を憂いているのです」


「お願いします!! 貴方達の実力はランから聞きました。私達は貴方達のような人を待ち望んでいたのです!! この町を変えてくれるかもしれない人物を。どうか、私達に力を貸してはくれませんか!?」



 こうして冒頭のシーンへと戻る。


=====


厄介事に巻き込まれることは覚悟していた。だが、これはねぇ。



「神父よ。それは都合が良すぎるのではないかね」


俺が神父の話を聞いて、そう発言せざるを得なかった。


「俺たちは成り行きでランを助けたとはいえ、完全に部外者だ。そんな俺たちが何故この町を救わねばならんのだ」


「それは・・・・・・」


 言いよどむ神父。まぁ何が言いたいのか大体わかってはいるけどな。


「まぁ、貴様らにとって俺ほど扱いやすい存在はいないだろうよ。この町の人間ではなく腕も立つ。そんな人物を望んでいたのだろう。その人物にブラウニーファミリーとやらを倒してくれと頼み自分達は高みの見物。その人物が勝てばブラウニーファミリーからの束縛から解き放たれるし、もし負けたとしてもこの町の人物ではないから我関せずを主張できる。なるほど、自分で言っておいてなんだが確かに扱いやすいな」


「・・・・・・」


 うつむき黙る神父。


「それは置いておくとしても、俺は貴様らが愚かにも選んだ選択肢が気に入らない。何故、自分達の未来を自ら切り開こうとせず、他人の手に任せようとするのか」


 神父たちにはいくつもの選択肢があったはずだ。ブラウニーファミリーの束縛から解き放たれる方法が。なぜ、いくつもの選択肢の中から人任せにするという選択肢を選んだのか。


「・・・・・・旅の方には分かりませんよ」


「ほぅ。何がだ」


「リーダーとして一を捨て九を救うことの覚悟が、です」


「なにを・・・・・・」


 瞬間俺は強烈な眠気に襲われる。

一体、どうしたと言うのか。


「ヴァン様!!」


「その女を取り押さえろ!!」


 俺に駆け寄ろうとするパルをシスター達が取り押さえる。

パルは魔法を使う暇も無く取り押さえられた。クソッ! 何が起こってやがる。

もう身体は言うことを聞かず、瞼はどんどん重くなっていく。


「ヴァン殿。貴方が素直にブラウニーファミリーを潰すと言ってくれればこんなことにはならなかったのですよ」


「キ・・・・・・キサマ」


 毒を盛りやがったな・・・・・・。先ほどの飯に。

不覚・・・・・・。吸血鬼の俺が人間ごときに出し抜かれるとは・・・・・・。


「貴方達とランをブラウニーファミリーに渡します。それで、少なくとも半年は私達は生きてられますから」



 なるほど、一を捨てて九を救うとはこの事か。



 俺の意識はそこで途絶えた。







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