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吸血鬼は仲間を得る



 俺は森の外へと出るために、茂みをかき分けながら進んでいく。


 ついさっき知ったのだが、俺は血を吸う生き物とだったら意思疎通が出来るらしい。その能力を使って、森に住んでいた(俺の周りを飛んでいた)蚊に道を尋ねたところ、親切に教えてくれた。


 うん。前の世界では蚊はとてつもなくウザイ存在だったけが、なかなか役に立つな。この世界ではあまり殺さないように――


 プーーーン


「あぁ! うるさい蚊だな! 纏わりつくな!!」


 ――ぺシンと叩き蚊を潰す。


 ……今のは不可抗力だ。前世での習慣はなかなか抜けないもんだよ。さて、それはどうでもいいとしてこれからどうしようか。


 いや、今のところハーレムを作るという野望は変わってないし、今後は先ず人間の国を旅しつつ、美女探し。そしてその美女達をハーレムに入れ、次は魔族のほうの美女探しをする予定である。


 どうしようかというのは、今、俺が肩に担いでいるこの見た目十六くらいの魔法使いの美少女についてだ。


 ここで一つ、訂正をしておこう。


 ハーレムを作ることを公言(?)している俺だが、節操も無くハーレムを作る訳ではない。俺のハーレムには十八以上二十九以下の美女だけが入れるのだ。

 俺はロリコンでも熟女好きでもないからな。


 ほんと、この美少女どうしようか。さっきの男たちのように従順な下僕にでもすればいいのだが、如何せん気が引ける。まぁ、当然と言ったら当然だが。前の俺はあまり女の子との関係を持ったことはなかった。そして、親からは女の子には優しくしろと刷り込まれている。

 つまり、俺にはこの女の子の扱いをどうするか手に余る状況なのだ。


 ……本当にどうしようか。そんなことを考えていると、美少女が起きた。


「ん……ここは」


「起きたか人間よ」


 起きた美少女に微笑みながら挨拶する俺。高感度アップのためだ。第一印象は最悪の一言に尽きるからな。ここで少しでも高感度をあげておきたい。


「――ッッ!!」


 しかし、現実とは非情である。美少女は俺の顔を見た瞬間、顔を青くして暴れだした。完全に嫌われてるな俺。


 俺は美少女を優しく地面に下ろす。


「オルガさんは!? レンさんは!?」


「落ち着け」


 ……本当はこんなことしたくないんだけ仕方無い。錯乱している美少女に殺気をぶつけると美少女は大人しくなった。


「まず、その質問に答えよう。名前は分からんが、俺を傷つけた銃士と、リーダー格らしき剣士は俺が殺した」


 本当は死んでいないが、自我を取り除いて完璧な俺の僕にしたからあながち嘘ではないだろう。


「そんな……」


 俺の答えに俯いてしまう美少女。

 ほぅ……美少女はどんな表情も絵になる……ゴホン。あの二人を僕にしたのは拙かったか?ただでさえゼロに近い好感度がマイナスの方向に向かった気がするのだが……。


 ハーレムに入れないとしても、こんな美少女から『あんたなんて、大ッッッッ嫌いッッッッ!!』と言われたら俺ショックで寝込むぞ?


「どうして、私を助けたのですか?」


「ん?」


 しかし、次に美少女から紡がれた言葉は俺の予想の斜め上を行くものだった。

 でもまぁ、確かに仲間は殺されたのに、何故自分だけ殺されていないのか不思議に思うよな。

さて、なんと答えようか。馬鹿正直にお前が女だからだ、とか言ったら誤解されそうだし嘘をつくにしても、どういう風に答えるか……。


「なんとなく、だ」


 シンプルかつ応用の利く言葉で俺は答えることにした。というか、これ以外に思いつかなかった。まったくもって俺のボキャブラリーの少なさに情けなくなる。


「なんとなく、ですか……」


「そうだ」


 美少女はそういうと、口を閉じ何かを考え始めた。俺と美少女の間に沈黙が訪れる。


 前の世界でろくに女の子と話したことが無かった俺にこの場を凌げる話題などあるはずも無く、ただ時間だけが過ぎて行った。


「私はこれからどうなるんですか?」


 沈黙を破ったのは美少女だった。そんな潤んだ目で見あげられても困る。しかしどうなるか――。俺は特に考えてないんだが……。


「お前はどうしたいんだ?」


 だから、俺はこの少女に選択させることにする。結局のところ、この少女がどこに行こうが俺には関係ないのだし。かといって、この子を殺す気はない。興が削がれたし、美少女は世界の財産だ。


「私は――――」


 少女は顔をうつむかせる。逃げたいと言わなかったのが意外だった。俺のような化け物の傍から直ぐに離れたいと踏んでいたんだけどな……。

 この少女は、今何を考え何を思っているのだろうか。俺に窺い知ることはできない。いくら吸血鬼とて人の心を読むことは出来ない。読めたら読めたでつまらなそうではあるが。


 やがて少女は顔をあげると、しっかりと俺の目を見て決心したように口を開いた。


「私は、貴方についていきたいです」


 思わずわが耳を疑う。正気か? この子。


「ほぅ……何故だ?」


 俺に殺されかけているというのに……何故、この子は……。


「本当なら私は貴方に殺されていたはずです――けれど、気まぐれで助けてもらえた。なら、この命は貴方のものです」

 

 それに、と少女は続けた。


「私の、いえ私たちの罪滅ぼしのためにも」

 

 罪滅ぼし? どういう意味だ? 少女に聞き返そうとして――止める。俺が踏み込んで良い領域では無い。そう直感したからだ。


 この世界の人間が仲間になること自体に不満はない。俺は地理や歴史に疎いしここの常識を知らない。いずれにせよ仲間を増やす予定だった。なら、この子でも良いか。

 戦闘も出来るだろうし、足を引っ張ることもないだろう。


「分かった……俺の名は如月修也。よろしく頼む」


「はい。私は、パル=レングスです。よろしくお願いします。シュウヤ様」








三月五日 文章改定

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