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君の残像を乗せて  作者: 谷中シノン


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第10章【第1話:夜のファンタジアランド】

最終章『影を越えて』

第1話:夜のファンタジアランド


 2025年9月30日 火曜日


 夜のファンタジアランドは、静寂に包まれていた。

 だが、いつもの静寂とは違う。パーク中から嫌な感じがする。

 アトラクションのライトはわずかに点滅し、風に揺れる装飾がかすかな音を立てる。


 「……なんか、変な感じやな」

 

 ナオは巡回用の懐中電灯を手に取り、影の気配を探す。

 夜勤巡回は慣れているはずなのに、今夜は違和感が比べ物にならない程に強く、背筋がひんやりする。


 その時、園内からかすかな声が至るところから聞こえる。

 子どもの笑い声のようで、でもどこか遠く、空間に溶けてしまいそうな響きだった。

 それは、人間の声ではないのは確かだった。


 「……やっぱり何かおる」


 ナオは影を警戒しながら歩みを進める。


 その時、通路の先から小さな足音が近づいた。

  

 「いた、ナオさん……!」

 

 振り返ると、しおりが立っていた。

 聞くと閉店作業を早く終わらし、俺を探していたらしい。


 「もしかして、しおりちゃんも嫌なん感じたか」 


 「……やっぱり、なんか変な感じですよね。しかも、パーク中の色んなところから……」


 「せやな。第六感がビリビリ言うてる……」


 ナオは身を硬くする。


 彼の感覚が、普段の遊園地巡回とは違う異常を知らせていた。


 空中ブランコの方から、不自然な影が滑るように伸びる。

 その影はまるで生き物のようにうねり、ライトの光をかすめる。


 「ナオさん……今の、見えましたか?」

 しおりの声が少し震えていた。


 「見えた……こいつ、やばい気がする」

 影が見えているしおりをここで一人で帰らすわけにはいかない。

 

 ナオはしおりの手を取り、共に慎重に影の方へ歩みを進める。

 「心配せんでええ。俺がついとる」



 プラネタリウムでは、満天の星空が一瞬で黒い染みのように崩れ、ざわめく子どもの声が混じった。


 ウォーターライドの水面には、形の定まらない無数の影が浮かび、ゆらゆらと揺れている。


 観覧車はまるで墨で塗りつぶされたかのように真っ黒で、ゴンドラの内部は光を拒んでいた。


 メリーゴーランドでは、全ての馬の目から暗い液体が溢れ、木馬たちは無言でこちらを見ている。

 


 「このまま園全体に広がるかもしれません……」

 しおりが小さく呟く。ナオはうなずき、周囲を見渡した。


 「せやな……まず、絶対に離れんな。そんで、各アトラクションの異変を確認しながら、影の正体を突き止めるしかない」


 二人は歩みを進めながら、各アトラクションや展望丘へと向かう。


 影の化け物は、まるで園全体を覆うかのように静かに広がっていた。


 「……くっ、やっぱり今までのようなただの影じゃない」


 ナオの声に緊張が混じる。


 その時、ライトの先に無数の人型の影が現れた。

研究者の白衣を着た男、白いワンピースの女性、カメラを下げた青年、泣く子ども、目のない人影たち──そして、小林やミサの姿まで。


 


 そう、ナオが今までの対面していた影が多く見えた。


「ナオさん……あれって……」


「おかしい。本物の彼らの影じゃない。小林も無事助かっとるんやから」


 「じゃあ……全部、偽物?」

 

 「せや。けど、そっくりに作られとるんやろ。多分、俺の記憶まで覗かれとるんや……」


 ナオは息を呑み、懐中電灯を握り直した。

 二人の影が長く伸び、無数の影と混ざり合いそうになる。


「進むしかない……」

 

「私も、ナオさんを守ります……!」


 二人は互いの距離を離さず、異形の影が蠢く夜のファンタジアランドへと足を踏み入れた。

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