第7章【第1話:沈黙の開幕】
【第7章:月夜の遊行】
第1話:沈黙の開幕
昼間の園内は、いつもより人の流れが重かった。
広場の片隅には、真新しいテントがゆっくりと組み立てられている。
赤と黒の縞模様が、夏空の下で異様に濃く見えた。
ナオは巡回ルートを外れ、足を止めた。
テントの前には十数人の団員らしき人物が並んでいる。
全員が白い仮面をつけ、無言で作業をしていた。
背後から軽い声が飛んでくる。
「先輩、あれ新しいイベントっすよね? なんか……人間味ないな」
シュウが巡回服のまま紙コップのジュースを片手に現れ、テントを見上げた。
「人間味?」
「いや……ああやって重いもん運んでるのに、声も息づかいも聞こえないじゃないすか。なんか人形みたいで」
ナオは返事をせず、団員たちの手元を見た。
重そうな木箱を運んでいるのに、動きが乱れず、息の揺れも一切ない。
規則正しすぎる、まるでプログラムされたような動き。
テントから昼休憩を告げる放送が流れた瞬間、全員が同時に動きを止めた。
仮面の奥からは何も聞こえない。
そして、まるで見えない糸で操られているかのように、同じ速度で歩き去っていった。
その夜、園内の外灯が落ちた時──
巡回していたナオは、テントの影から視線を感じた。
振り返った先には、昼間と同じ仮面の団員が一人、じっと立っている。
白い仮面の口元には、赤い線のようなものが描かれていた。
だが──
瞬きした次の瞬間、そこにはもう誰もいなかった。
夜風が、テントの布を小さく揺らしていた。
「何が始まるって言うんや……」




