第6章【第3話:昼の天文館】
第3話:昼の天文館
パーク中央にそびえるドーム型のプラネタリウム「ナイトスターシアター」。
昼間でも内部は完全な暗闇に包まれ、天井一面に映し出される星々が来場者を静かに迎える。
巡回中のナオは、上映が始まったばかりの客席後方に立ち、非常口や通路を確認していた。
解説ナレーションが流れ、ゆったりと星座が回転していく。
昼間でも安全とはいえない。
しかも、この場所は“夜”を人工的に作り出せる。
ふいに、天井の星空が一瞬だけ赤く染まった。
次の瞬間、視界いっぱいに炎が広がる。
「……やっぱり来ると思ったわ」
ナオ以外の観客は、何事もなかったかのように星空を見上げている。
彼らには炎が見えていない。
炎の中に、長いコートを着た影が浮かび上がる。
その影は星空を背景に、無数の光の糸を操るような仕草をしていた。
──「同期を……完成させる」
低く湿った声が、館内スピーカーの雑音に混じる。
同時に、ナオの頭の奥に焼けるような痛みが走った。
視界が揺れ、別の記憶が流れ込んでくる。
研究室の片隅、椅子に座らされた幼い自分。
額に当てられる冷たい装置。
周りには、泣きながらも座らされる子どもたちの姿。
「やめろ……!」
声を上げた瞬間、映像が切り替わる。
そこは三年前の火事の最中だった。
影の背後で、逃げ惑う子どもたちのシルエットが炎に飲み込まれていく。
ドームの映像は急に正常に戻り、青い地球がゆっくりと回っていた。
だが、ナオの耳にはまだ微かな囁きが残っていた。
──「君は、もう一度必要なんだ」
ナオは唇を噛み、無線のスイッチを入れようとした。
「異常……いや、報告しても信じてもらえんやろ。……俺が止めるしかない」
スイッチから手を離す。
足早に館を出ると、真昼の光がやけに冷たく感じられた。
「俺が、終わらせる」




