第4章【第3話:回廊の扉を開くのは誰?】
第3話:回廊の扉を開くのは誰?
2025年8月25日 月曜日
ナオは閉園後、写真に写っていた“白いワンピースの後ろ姿の女”をじっと見つめていた。
(あいつ……やっぱり、月夜の回廊に存在してるんか)
それは、どことなく1年前に“地下に潜んでいた存在”に似た雰囲気があった。
しおりが言った言葉を、ナオは思い出していた。
「ナオさんに……あの人、何か言いたげな気がする……。」
──月夜の回廊。
それは、もともとヨーロッパ調の雰囲気を再現した小道とアトラクションが並ぶ人気のエリアだった。
しかし3年前、火災が起きた。月夜の回廊は被害の範囲が大きく、その日以降エリアのすべてが封鎖された。
ナオはパークの資料庫に戻り、封鎖前のマップを広げていた。
「……これ、変やな」
図面上に存在しないはずの“曲がり角”が、1つだけ後から書き記されている。
しかも、そこに書かれていた名前は──
“回廊の扉”
その夜、ナオとしおりは再び月夜の回廊エリアへ向かう。
「ついてこんでえぇのに」
「私にも見えたので。それに、あの日“これからも協力してくれ”と言ったのはナオさんですよ?」
「まあ、そらそうやったな。ならなんも言わん。ただ、離れんなや」
「カッコいいんですね」
たどり着いたのはアトラクションの裏側、通常なら行き止まりの場所。
しかし、そこにあった。
古い壁の一部に、**ほんのわずかに浮き出た“扉の輪郭”**が。
ナオがそっと手を当てると、ひんやりと冷たい感触が伝わってきた。
「開けたら……帰れんようになるかもしれへんな」
そんな予感がした。
しおりが目を見開く。
「でも、進まなきゃ何も変わらないんじゃないですか」
ナオは静かにうなずいた。
そして、扉を押した。
──中は、闇だった。
懐中電灯を向けると、埃とクモの巣の張り巡らされた通路が現れた。
進むうちに、妙な違和感に気づく。
壁に貼られている写真たち。
それは、テーマパークに訪れた来園者たちの笑顔。
だが、どの顔にも──
「目」がなかった。
白く塗りつぶされたり、削り取られたりしている。
「悪趣味ですね」
「……また目の無い絵か」
進んだ先にあったのは、ガラス張りの小さな展示室。
そこにひとつだけ、古い衣装が飾られていた。
白いワンピース。
しおりが震える声でつぶやく。
「これ……あの“後ろ姿の女”の……」
すると、ガラスに、誰かが書いたような手書きの文字が浮かび上がる。
『また会えたね。ナオくん』
──ナオの背筋が、凍る。
(……なんで、名前を……!?)
その瞬間、通ってきた通路の扉がバタンと閉まった。
閉じ込められた。
ナオとしおりは、もう“こっち側”に入ってしまったのだ。
次回予告:第4話「名前を呼ぶ声」
ナオを“知っている何か”が、扉の奥にいる。
しおりの過去もまた、“月夜の回廊”とつながっていたことが明らかに……。




