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君の残像を乗せて  作者: 谷中シノン


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第4章【第2話:観覧車の写真家】

第2話:観覧車の写真家


 


 ナオとしおりが旧エリアのコースター「フラインジェット」に近づいたのは、午後11時過ぎ。

 このエリアはとっくに閉鎖しているはずなのに、コースター乗り場の灯りだけが光を灯していた。


 


 その灯りの下、古びたフィルムカメラが置かれていた。

 埃をかぶっているが、レンズはまるで今まで使われていたかのように透き通っている。


 


 「……これ、3年前の事故で、行方不明になったカメラマンのじゃ……?」


 


 しおりがそっと口にした。


 


 ──3年前。**“謎の火災事故”**。月夜の回廊でも火災が起き、ここでも数人のスタッフと来園者が巻き込まれ、カメラマンの青年が行方不明になっていた。


 そのことをしおりは知っていたらしい。

 そして、そのカメラマンについての一つの話も。

 


 彼が最後に残した数枚の写真。

 その現像された一枚に、なぜか実在しないアトラクションが写されていたという噂がある。

 背景は間違いないなくこのパーク。しかし存在しないアトラクションの写真。当時のスタッフは気味が悪くなり写真はすでに廃棄されているらしいとのことだった。


 


 ナオがカメラを手に取り、シャッターを切ろうとした瞬間──


 


 「だめだよ」


 


 背後から、男の低い声が聞こえた。


 


 振り返ると、そこには黒い帽子をかぶった青年が立っていた。

 白いカメラバッグを提げ、どこか懐かしげな顔立ち。


 


 「それは、ぼくのカメラだ。返してもらおうか」


 


 ナオは警戒しながらも尋ねた。


 


 「……あんた、誰や?」


 


 青年はこちらに歩み寄り、カメラを手に取った。

 そしてそのままコースター乗り場の光の中に歩いていく。


 


 「このフィルムにはね、写っちゃいけない“場所”が写ってる。……見せたくないんだ、誰にも」


 


 しおりが思わず前に出る。


 


 「ねえ、あの時……あなた、火災事故で──」


 


 青年はかすかに笑った。


 


 「ぼくは、まだここでシャッターを切ってる。忘れられる前に、全部焼き付けたいんだ。……この“もうない観覧車”を」


 


 その瞬間、乗り場の光がフッと消える。


 


 気づけば、青年の姿も、カメラも、跡形もなくなっていた。


 


 


 地面には、古いフィルムだけが1本、転がっていた。


 


 ナオがそれを拾い、無言でポケットに入れる。


 


 「……現像せな、あかんな」


 


 その後、ふたりはパークの事務棟に戻った。

 白いワンピースの女も気になるが、これ以上遅くなれば終電もなくなる。その前に帰路につくことにした。



 「ナオさんに……あの人、何か言いたげな気がする……。」


 


 そして──翌朝、**ふたりのスマホに届いた“無記名の画像”**が、ふたりを凍らせる。


 


 それは、彼が持っていたであろうフィルムカメラで撮られた写真だった。


 


 ──写真には、**“誰も知らない観覧車の夜景”と、“白いワンピースの後ろ姿の女”**が写っていた。




 「この観覧車、このパークのものやないな……」


次回予告:第3話「回廊の扉を開くのは誰?」

なぜ“月夜の回廊”は封鎖されたのか?

観覧車に乗っていた“目のない少女”と、カメラマンの青年の関係とは──。

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