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君の残像を乗せて  作者: 谷中シノン


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第4章【第1話:閉ざされたゲート、開かれる夜】

【第4章:月夜の回廊】


第1話:閉ざされたゲート、開かれる夜


 


 研究区画エリアと並んで、まだ建て壊しや次のアトラクション等の切り替えが決まっていないテーマパークの“旧エリア”の一つ──

 かつて「月夜の回廊」と呼ばれた場所は、今や柵に囲まれ、立入禁止の貼り紙がされている。


 


 だが、その裏で、スタッフの間に不穏な噂が流れはじめていた。


 


 「夜中、あのゲートの前で“手を振ってる誰か”を見た」


 「閉鎖されたはずのメリーゴーランドが、動いてた」


 「誰もいないのに、アトラクションからライトが……」


 


 片桐ナオは、再びその場所に足を運んでいた。


 


 風が吹き抜け、柵の向こうにある古びたアーチ型ゲートが、キィと軋んだ。

 開いている。普段ならガッチリと鍵がかかっているはず。


 


 (まるで、“こっちに来い”って言うてるみたいやな……)


 


 そこへ、しおりが現れる。手には紙袋。


 


 「ナオさん!これ、差し入れです。チーズカヌレ入り」


 「……なんで来たん?」


 「なんか、気になったんですよ。この場所」



 あの後、すぐに帰るようには言った。

 走り去って行ったからちゃんと帰宅したと思ったのに。

 ただ、他の余りものを取りに行っただけだったか。


 


 ナオは、しおりを見てふっと息をついた。


 


 「……ほな、ちょっと付き合うて」


 


 二人は、閉鎖されたゲートの先へと足を踏み入れた。

 そこは、10年前に起きた事故以来、封鎖されたエリアだった。


 


 足元に、誰かが最近通ったような足跡がある。


 


 「誰か、入ってる……?」


 


 やがて、月明かりに照らされた回廊の先に、動いているメリーゴーランドが見えてきた。


 今パークで使われているメリーゴーランドは、このエリアが封鎖されたことで新しく作り直されたもの。

 ここにあるメリーゴーランドはいわば旧型だった。


 


 そこには、ひとりの少女の影が乗っていた。

 古い制服姿のまま、ぐるぐると、誰もいない馬にまたがって──


 


 「……助けて」


 


 回廊中に、透き通る声が響いた。


 


 ナオが叫ぶ。


 「誰や!?なにがあったんや!!」


 


 少女の姿がこちらを向く。


 


 ──その顔に、目がなかった。


 


 しおりが思わずナオの腕を掴む。


 


 「ナオさん、あれ……人じゃない……!」


 


 次の瞬間、コースターアトラクションの方角で、轟音とともに光がはじけた。


 


 コースターが、勝手に動き出していた。


 


 遠くのゲートの向こうには、**白いワンピースの“あの後ろ姿の女”**が立っている──


 


 ナオは低くつぶやいた。


 


 「始まったんやな……“あっちの世界”が、また」


次回予告:第2話「観覧車の写真家」

事故当時、唯一回収されたフィルムカメラの謎。

写された“最後の一枚”には、存在しないアトラクションが映っていた……。

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