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第1章【第2話:消えたスタッフと、夜の来訪者】

第2話:「消えたスタッフと、夜の来訪者」


 深夜1時すぎ。

 ナオはあやめと共に、スタッフ休憩所の一角にある旧資料室にいた。


 パークの創業初期からの社員記録や運営メモが紙のまま保存されている、ほこりまみれの空間。今ではほとんど誰も足を踏み入れない“裏の倉庫”だ。

 最近のものはデータ化されて保存されていたり、書類等は新倉庫に移動されている。ここに残っているのは移動させる必要がなくなったものばかりだろう。


 「例の指輪に刻まれてた名前──**“MISA”**っての、元スタッフにいたかも」


 あやめが古い名簿をめくると、1枚の紙に目が止まる。


 「……いた。“高宮ミサ”って名前。清掃スタッフ。1ヶ月前に“退職処理済み”」


 「退職理由は?」


 「記録ナシ。面談記録も空白。……不自然ね」


 ナオはあの指輪を思い出す。悲鳴と、暗闇の中で消える気配。

 “ミサ”は、ほんまに辞めたんか? それとも──


 そのとき、外の廊下で誰かが歩く音がした。

 パークの照明はすでに落ちている。従業員も全員退勤済みのはず。


 「またか……。警備映像、まだ見れる?」


 「私の端末でリアルタイムは確認できる。ちょっと待って」


 あやめが社内専用のスマホ端末を操作し、園内の監視カメラ映像を開いた。


 「……は?」


 画面に映っていたのは、誰もいないはずの『迷いの森』前。

 しかし、そこに──少女の姿が映っていた。


 白いジャケット、ジーンズ姿。暗闇の中で、ただ立ち尽くしている。


 「……ミサ?」


 ナオが思わずつぶやいた瞬間、映像がバグった。

 少女の顔がノイズで崩れ、次の瞬間には姿ごと消えていた。


 「記録残す。これは決定的や」


 あやめが映像をバックアップする間、ナオはある直感にとらわれていた。


 


 ──“ミサ”は、このパークで「消された」。


 辞めたんやない。

 誰かに、あるいは“何か”に消された。


 


 旧資料室を出て歩き出した途端、ふと背筋に寒気を感じた。


 窓の外──パークの観覧車のふもとに、一人の少女が立っているのが見えた。


 目が合う。

 でも彼女は何も言わず、ただナオのほうを見ていた。


 “助けて”と言いたげな瞳。


 そして次の瞬間、すうっと煙のように消えた。


 


 「……こらもう、“ヒト”ちゃうかもしれんな」


 ナオは静かに息を吐き、スマホのメモ帳を開いた。


 事件リストの1行目に、こう書き加える。


 > ◎ 高宮ミサ:元清掃スタッフ。失踪疑惑。目撃情報あり。現在、実体不明。


 物語が動き出した音がした。



--

次回予告:「第3話:記憶のアトラクション」


ナオとあやめは、ミサが勤務していたエリア「ドリーム・メモリーライド」へと向かう。そこは“記憶の映像”を投影するパーク初期の体感型アトラクション。しかし、内部には封印された“もう一つの記憶”が眠っていた──。

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