こんな世界いらない
▽
俺は未だ図書館の中でうずくまっていた。
愛の呪いだとかいうものが、俺には付いたらしい。
しかし、実感がない。
手を握り開いてみたり、口頭で「愛の呪い」なんて
言ってみたりしたが、なんもない。
仕方がないので、このよく分からない図書館からさっさと、おいとましようと思う。
立ち上がって重たい扉を押した。
しかしおかしいのが、次出た所が記憶にあるはずの
以前の場所ではなかった。
扉を開いた先は衛兵達の居酒屋のような場所だった。
薄汚れているが、綺麗な彫刻壁を見る限り城内である。
丸机と椅子が散らばって立たされており、
それに座った約50人程のエルフの衛兵が、賑やかに
酒や飯を楽しんでいた。
図書館の重たい扉が、俺の後ろで音を立てて閉じると
その扉は、先ほどの風格をなくしており、ごくごく一般的な開扉となっていた。
幸いにも衛兵達は互いの話に夢中で俺には気づいていなかった。
正面奥には大きな、細かい粒子で作られた変な青白く光る空間があった。
それが点滅し、モニターのようになり、
知っている顔2人を写し出した。
衛兵らが盛り上がりをみせた。
その瞬間俺は、衛兵の足や机を避け、履いながらそのモニターにこっそり近づき、凝視した。
そこにはララエルと、プセーマが居たからである。
▽
王はプセーマとララエルを見て再び口を開いた。
「しかしプセーマお前には失望したぞ。
よもや朕を裏切り逃げ切られるとでも思っていたのか?」
プセーマは伏し目がちのその目を大きく開け王を睨みつけた。
「黙れ外道が!」
「プセーマ!」
ララエルが自身を庇うようにして立ち上がったプセーマを諭した。
プセーマは魔法の弓矢を創造し王に向けて狙いを定めた。彼の惑う思いはもうすでに、ララエルのみになっていたのだから。
王は壇下にいる哀れな裏切り者と、死んだと思っていた我が妹を見て、微笑んだ。
「今更どうしようというのだ。
朕を殺すか?その後は?国民にはどう説明する?」
「黙れ!我が主ララエル様こそ真の王に相応しい!」
「プセーマ!!」
ララエルの怒声が響きプセーマがララエルを見た。
ララエルはプセーマが自身のために身を張る理由が分からなかった。妾を今殺して目的を果たし、自由になっても良いのに。
プセーマは冷たい表情のままララエルを横目で見た。
「ララエル様。貴方を認めないこの世界など必要ないのです。」
プセーマが禍々しく渦を巻く魔力の結晶となった矢を王に向けて打った。
その速さは音速をも超える。
王の髪が激しく風に揺れた。
時が止まったように見えた。
その矢を誰かが人差し指と中指で摘んだのだ。
「...?!」
プセーマとララエルが息を呑んだ。
そこには、プセーマの矢を王から防いだ始祖のエルフ ミトラと、ミトラの片手に抱きかかえられた魔女セレーナが居たからだ。




