遭遇
▽
ユリウスとセレーナはしばらく夢中になって地下を物色していた。
地下にある牢、ミトラの資料、実験内容をみるに
彼ら王家のエルフ達はミトラを人体実験していたのだろう。
セレーナはそれを感じ取り自身の魔力が煮え立つのを感じていた。
横でユリウスはとある資料を手に取り目を開いた。
「神...愛し子...不老不死..力...?」
資料には完全なる神に近づく為の研究が書かれている。不老不死の体を持つ、始祖の生物と我々の違い。肉体を構築する成分。魔力。会得魔法。
実際に人体実験をしなければ得られない情報が数々あった。
王家のエルフ達は何を目指し何になりたいのだろう。
その時地下牢の階段を降りる2人分の足音が聞こえた。ユリウスは神剣を抜き、向き直ったがセレーナに止められる。
「ミトラ様の魔力...来るわ。隠れて様子を伺おう」
セレーナがユリウスの手を引いて
広い地下を支えていた支柱の後ろへ自分たちの身を隠した。
耳を澄ますと男の声とミトラの声が聞こえた。
「なぜ今日は私の元に早く来たんだ?」
「理由なんてありません。
暇だったので早めに研究を終わらせるように尽力しろと王に命令されたので」
鎖と鎖が擦れ合う音が広い地下に虚しく響いた。
階段を降り、積み重ねられた資料を適当に取ったそのエルフはパラパラと紙をめくり目を動かした。
「今日は...そうですね。神というものやらに、かけられた守護を抽質したいですね」
「フン。我々愛し子がファアル様から頂いた魂の繋がりを貴様ごときに...グッ!!」
エルフは鬱陶しそうにしながら額に血管を浮かばせ
乱暴に緩やかな椅子の端に鎖を繋げミトラを拘束した。
「『血を差し出せ』」
エルフがそう言葉を放つとミトラがビクリと体を震わせた後右腕を差し出した。
そして彼女は細長い光のような物を生成し自身の腕を切った。
血が滴り床に落ちる。
セレーナはその間、ミトラと王家のエルフを瞬きもせずに見つめていた。
エルフはその金色の瞳を一時、光らせて
試験管にミトラの血を数滴入れた。
ミトラは彼が背を向けてそれを地下室の隅にある実験台に持っていくのを確認すると呟いた。
「セレーナ。やめるんだ」
ユリウスがミトラの声に我に返りセレーナを見ると
彼女は、その杖をエルフの頭に向け佇んでいた。
「セレーナ。私は大丈夫だ。今まで黙っていてすまない」
ミトラは再度そう言った。
セレーナは視線をこちらに向けない師匠の頭を見て杖を収めた。セレーナは酷く悲しんでいた。
愛しい師匠を傷つける王家のエルフにも
師匠と長い時間居たのに気づかなかった自分にも。




