ミトラの出会い 《プセーマside》
*プセーマside
プセーマは心配であった。
確かにミトラ様は、あの伝説の始祖の人間を
数千年前に囚われの身にしたと聞く実力者だが、
彼が知る彼女は口が堅く優しいなんてものではなかった。彼女は人をからかうのが好きで、魔法に魅了された魔法バカであり、好奇心旺盛でララエルをエルフの国から隠すには危険な存在だからだ。
プセーマがエルフの国に滞在していた時期、
過去がどうだったかは分からないがプセーマが知っている限りではミトラが公共の場に身を現す事は1度もなかったのだ。
彼女の不老不死に近しい洗練された存在感は
見るものを圧巻させるという。
プセーマがミトラを見たのは夜、魔法の修行後
衛兵に連れられ城の廊下を歩いていた時だった。
「おや、見かけない顔だね」
透き通る声がこだまして響き、プセーマを連れていたエルフの衛兵が体を強ばらせて固まった。
顔を上げると廊下の突き当たりの角から白いヴェールを頭に被った亜麻色をした長い髪をなびかせて1人のエルフの女が歩いてくるのが見えた。
だがその足には足枷があり、先には重りがあった。しかし彼女は気にしていないかのように
引きづりながらプセーマの方へくる。
貧困街で育って奴隷になったプセーマでさえ
神の愛し子、始祖のエルフと人間の伝説を知っていた。
言われなくとも彼女があの、ミトラ様なのだと彼は本能的に察した。
彼女の発する威厳にプセーマは思わず跪いた。
プセーマは、ミトラがあの、エルフの王とその周りいたエルフとは比べ物にならない程透き通った黄金の瞳が淡く輝いたのを見た。
彼女はプセーマを観察しその息を吐いた。
「人間...見たのは数百年ぶりか。
ふむ。素晴らしい魔力。なるほど奴隷か」
プセーマを連れていた衛兵は震えながらミトラに跪いていた。
その時だった。あのエルフの王が廊下に現れたのだ。
最初、城に連れられてきた時からこの時まで彼を目にしていなかった。
彼はその顔に冷や汗をかいていたがこの国の王としてミトラに叱責しようと口を開いた。
「北の部屋から出るなと命令したはず
するとミトラがすかさず言葉を紡ぐ。
「時が経ち、王が継承され変わるたび、その時々の王達はより強く私を拘束しようとし危険視するが未だ誰1人とも私を無力化した事はない」
...」
ミトラが言葉を遮ってそう言葉を放つと彼女の足枷が氷のようになり凍結したのち割れ崩れ去った。
王はその様子を見てさらに顔を歪ませた。
そして瞬く間に足元がおぼつかなくなったかのように、よろけ遂に王も何か見えない力が働いたようにエトラに跪いた。
「そう君も」
エトラは一言発し、笑みを浮かべた後、踵を返して人間の弟子でも良いかもなと呟きながら去っていったのだった。
エトラが離れていった後、衛兵と王が解放されたかのようにどさりと腰を降ろした。
「くそ。あの忌々しい始祖め!」
王はよほど屈辱だったのか顔を真っ赤にし歯ぎしりをし始めた。
それがプセーマの唯一の、始祖のエルフ、エトラとの衝撃的な出会いである。
その後エトラ様が人間の弟子を取ったと噂がプセーマの耳に入ったのは数週間後の事だった。




