弟子
セレーナに気づかれた俺はテントから完全に身を出した。
プセーマは気づいていなかったのか、俺に驚いた様だ。出会った時は表情の変化を読み取るのが難しかったが、今は緊張がほぐれたのか随分表情が豊かに感じられる。
しかし気になるのはセレーナである。
何故彼女はプセーマの事情を知っていて何故エルフの国と関わりがあるのか。
セレーナを観察すると彼女も俺を警戒しているようだ。まだ早朝で肌寒いな。
「なんで彼女はプセーマの事を知ってるの?前から知り合いだったみたいだけど」
プセーマに聞くと彼が口を開いた。
「ララエル様がエルフの国から追放された後
始祖のエルフ、ミトラ様の元に初めての弟子入りを果たした人が魔女セレーナ様です。
僕が奴隷としてエルフの国に滞在していた時期
彼女に少しお世話になりました」
「えマジ?」
始祖のエルフってあのクソ赤髪と同じ言い回しだな。聞き流していたけど、奴が囚われてる空間魔法を創造した存在の心当たりってミトラさんだったりする?
「そういうわけで、私が各国を放浪してる間に
こんな事態になんて...」
セレーナは怒っていた。
ララエルがまだ生きていることに対してでもなく
プセーマがエルフの国からの任務を放棄し裏切った事に対してでもなく
王から命を狙われているララエルと
奴隷でララエルを殺す任務を授かったプセーマの2人でエルフの国に向かっている考えの甘さに対してである。
「私はそもそも王継承権を持つ有力候補を追放して暗殺するなんて行為をしてる現王をあまり良く思ってない。けど私ララエルちゃんにもプセーマにも国に戻った挙句、死んで欲しくない」
セレーナが先程の勢いとは反対に弱々しい声になり目を伏せた。プセーマがセレーナの発言に自身が考えていた彼女の意見と違って驚いたのか彼女の方をみた。
「いやユリウスの魔力回路を治しに行くだけたから
こっそり国潜入して口の堅い優しいエルフにこーっそり見てもらえないかな」
思わず俺が口を出すとセレーナが考え込んだ。
セレーナの脳内に浮かんだ口が堅くて優しいエルフは
彼女の師匠ミトラであった。そもそもセレーナと強く関わりがあるエルフは、ほぼミトラのみと言っでも過言ではないのだが。
「ミトラ様ならきっと力になってくれると思う」
プセーマの顔が心配そうに歪んだ。




