閑話 創造主と世界 3
玉座に座るファアルが、立って真っ直ぐ連なる階段をゆっくりと降りてきた。その姿は美しく流れるような様であった。
彼の長い銀髪が地を引きずっていた。
彼らもまた気づかなかった。最初に目にした時と今でファアルの髪と身長が伸びていた事を。
身長は僅かに伸びただけだが、彼の段を降りる度に下に引っ張られ落ちる美しい銀髪は、
彼らに月日の流れを感じさせた。
彼らはファアルが最後の階段を降りる時に我に返り
その場に跪いた。
見惚れていたのだ。
彼らは美しい手が頭に添えられ、額に口付けをされたのを感じた。目の前にいる美しい存在の指先が光り空中に消えて行く様をみた。
それはゆっくりと、しかし早く彼の体を進み止まる事はなかった。
「これからも私の愛した世界には私が生きた証が存在し続けるのがこの上ない喜びだな。
私はお前達を愛している。過去も今もこの先も」
ファアルが愛を告げると光が彼を蝕み完全に消滅したのを彼らは感じた。
数秒の沈黙の後、雨が降っている音を捉えた。
この雨は長い間振り続けていた。
まるで世界が泣いている様であった。
城を出て地上に戻ると獣の親子が森を歩いているのを彼らは見た。彼らにとってこれはファアルと自身と同じもう1人の愛し子の存在以外に初めてみた
生命であった。
エルフの女は次々に名付けを行った。
ファアルが創った全てを忘れないように、そして未来へと残していくためにであった。
空気中に散らばるエネルギーから魔法を創造しているからこれらのエネルギーは魔素。
なら、魔素を使って魔法にできる体内の力量を魔力としよう。
そしたら、あの獣達は魔素をエネルギーにしているように見えるから魔法生物としよう。
ヴァルナは彼女の付ける名前に魔法関連が多い事に気づいていた。彼女の魔法への熱中ぶりは魔法を創造したファアルを優に超えていた。
何故ならこの魔法は、エルフである彼女によく適応したからである。
遺跡があった森を出ると数々の集落が出来ているのをみた。ファアルが消えて城に滞在していたのは数時間であったが地上はすでに他の生命が多く存在している模様である。
ファアルが消えて本来のエネルギーが世界に戻り
少しばかりだが時空が捻れたのだ。
集落にいる人間を観察すると
一定の成人以上の年の存在はおらず、この代から世界に誕生したように見えた。
彼らはファアルと同じ言葉を話していた。
ヴァルナは自身と同じ種族を見て心臓が強く鳴るのを感じた。世界に色がつき、彼の興味が惹かれる物が多く現れたからだ。
小さい人間を連れていた親という立場である人間は本能的にこの子を育てるのだと分かっているように見えた。これもファアルに仕組まれたのだろうか。
エルフの女は、世界に点々と散らばった自身と同じ種族を集め荒野地帯の奥地へと旅立って行った。
彼女が言うには、他の種族や君を見ていると
ファアル様が本当に消えたのだと感じさせるのだと。
それはヴァルナも同じであった。
しかしヴァルナはこの人間達と交流したかった。
この人間達には自身と違い寿命が存在しているように見えるが魔法を教えたらこの便利さに、美しさに彼らは魔法を好きになるだろう。
もしかしたら未来へと語り継がれこの先ではもっと魔法が発達するかもしれない。
そしたらこの非現実的な力でファアルを生き返らせる事すら可能かもしれないと。




