閑話 創造主と世界 2
ファアルは1人の神になったにもかかわらず
自身が創ったこの1つの世界をとてつもなく愛していた。そして同様、始祖の種族となった2人の愛し子も。
彼が初めてその世界に存在しようと試みた時、空気が薄くなった感じがした。彼が歩いた道の草花は枯れ、
彼の創った2人のエネルギーが少しずつだが吸い取られていた。彼が愛した世界も同様、この世界も彼を愛していた。人とは違う彼を存在させる為に世界は周りのエネルギーを彼に与え始めたのだ。
「あ...」
ファアルは初めてその時絶望した。
彼は自身が創った彼らと同等にもなれず
愛した世界も自分の為に動くのだから。
その時ファアルは初めて禁忌を犯した。
自身に死を植え付けたのだ。
初めて神に死が存在した瞬間であった。
ファアルの現状のエネルギーが少しずつ消えていき
無くなる時彼は初めて消えるのだ。
ファアルが自身の存在値の上限を決めると草花は枯れなくなったが、彼らのエネルギーは微量だがファアルの糧へと吸い取られていた。
彼にはすでに死が存在するにもかかわらず。
禁忌を犯した故の呪いである。
彼は結局愛しい存在達の傍に永遠に居る事を叶えられなかったのだ。
ファアルが絶望に打ちひしがれた時
彼の力が無意識下で僅かに暴走を起こした。
彼が叫ぶと天が割れ、彼が泣くと天空に城ができ、
彼が、2人の愛し子を恋しがると、地上からファアルの場へと繋がるゲートが創られた。
しかしゲートはファアルにのみ地上へ出ることを許さなかった。それは己が自身に施した呪縛であった。
彼らに死を与えないように。世界が終わらないように。
彼は分かっていた。
本来はもっと人を、獣を、別の種族を、より創造して彼らを見守るはずだった。
しかし彼が神である為に世界に保とうとすると
これ以上世界が望むように変化しない事を悟った。
自身が彼らの傍にいる限り彼らは自身の他に2人しかいないこの現状で本当に幸せなのかを。
自身の死がくるまで良いから
この美しい世界でファアルは生きてみたかった。
ある時は魔法を創った。
彼らはすぐに習得してこの世界に飽きず美しい術を加えてくれた。これで自身が死んでも、魔法は継いでいくだろう。
ある時はこの美しい世界を分けて
獣達の住処となる荒野や雪が止まない豪雪地帯など
様々な場所を創った。
これで自身が死んでも、生まれゆく生命達はこの世界を旅し、冒険し、より楽しみを発見するだろう。
ある時は意志を持つ神剣を創った。
神々しいそのオーラーはファアルには及ばないが
その剣をみた2人の愛し子は目を輝かせた。
ファアルはその剣を空間へと消した。
この世界に何かが及んだ時に正義感の強い選ばれし人間に神剣が現れ、守れるように。
そう時が経つにつれ彼は自身の限界が近い事を悟った。彼は2人の愛し子を呼んだ。最後の挨拶をしに。
呼ばれて走ってきた彼らを見るとどこか焦りを感じさせた。彼らも悟っていたのではないかとファアルは考えた。
彼らを最初創った時、まだ青年と少女の風貌にしたはずだ。彼らを改めて観察すると人間の方はすでに成人となる風貌になっていた。
しかしエルフの方はまだ幼げがある。種族が長命だからだろう。
禁忌の呪いは月日が流れるにつれ、
正確にはファアルが彼らと会う度に彼らの肉体を
ゆったりと少しずつ成長させていた。
ファアルは気づかなかった。
それ程月日が流れていた事を。
しかし彼に死が近づくにつれ、まだ彼らの傍に少ししか居れていなかったように感じた。




