#5 秘めすぎた鬼才 H
突如魔王城を襲ってきた何者かによって、ワンドリが殺されてしまった。魔王をも一発で殺してしまうなんて、かなりの強者だな。そして僕は、その何者かを感情に任せ渾身の一撃を入れた。
その時のナギに起こったこととは一体―。
"僕がその何者かに一撃を食らわす、…いや、正直謎の力が湧いてきて、触れたかどうかも分からない。僕の身に何が起こったんだ?人は怒りを覚えると、こんなにも覚醒するのか…?
「間に割り込んでくるんじゃねえよ。」
その何者かは、渾身の一撃が効いたのか頬を押さえ、ふらつきながら僕のことを酷く睨んでいる。シークも、動揺しながら僕の方につく。
「ナギ様、彼は勇者セトウチです。」
「勇者セトウチ?!」
僕はつい声を上げてしまった。勇者セトウチってあの…魔王の中で2番目の強さを誇る者を倒した、あの?!
「ナギ…って言うのか、名前からして…お前もに転生者か?しかも”日本”の」
セトウチは、僕の名前を聞いて少し落ち着いた、というか少し興味を持ったようだ。
「そうだよ。でも今そんなことはどうでもいい。ワンドリの件、どう落とし前つけてくれるんだよ。もう戻らない命なんだぞ?!」
相手がたとえ勇者だろうが僕は容赦しない。
だって、知り合いを殺されたんだから。
「…ナギ様、」
すると、シークが少し気まずそうに呼んでくる。何をそんなに不安そうにしているんだ?
「…ワンドリ様、の件ですが実はアンデットとして蘇生することはできます。」
「ほんとか…!」
僕は少しほっとした。それと同時に一つ疑問が生じた。
「シーク、その魔法メイクソウルっていったな。確かその魔法、魔王しか扱えないんじゃないのか?」
僕がそう言うと、シークは動揺しすぎて目が泳いでる。
「シーク、お前…魔王なのか?」
「……」
「お願いだ、答えてk」
「あぁ、そのメイドは魔王だ。」
僕が話終わる前にセトウチが割り込んでくる。…お前、割り込んでくるなって言ったろ。
「…隠していて、すみませんでした……。」
「シークが魔王だったのは驚きだ。話は後でよーく聞こう。とりあえず今は、ワンドリの蘇生に専念してくれ。」
「…承知しました。」
するとシークは、ワンドリの手に触れて、魔法を唱える。
「メイクソウル。」
すると、ワンドリの斬られた傷は見るうちに回復していき、刺さっていた剣も分解され、
彼は意識を取り戻した。
「あ、あぁ、…俺の剣が……」
「事の発端はお前なんだからなぁ?剣の一本、我慢してくれ。」
僕はセトウチに呆れたように返答する。
『……っ!我は、…ハッ!シーク!もしや、メイクソウルを使ったのか?』
「えぇ、ワンドリ様。申し訳ありません。隠せる状況にありませんでした。」
シークはほとんどの魔力を使い果たしたらしく、座り込んでしまっている。
『迷惑かけたな、シーク……ナギ、お前には事実を話さなければな、っナギ?!どうししたのだ?!』
ワンドリも驚愕している。なんで2人とも僕の顔を見てそんなに動揺してるんだ?いくらなんでも、流石に傷つくなぁ…
「どうしたんだ?さっきから。顔になにかついてるのか?」
『あぁ、タレンターを持っているものにはそれぞれの特性で瞳の色が変わってな。魔王以外は通常2つまでしか持てない。だがナギ、お前の瞳の色……』
続けてシークが割り込んで話す。
「ナギ様の瞳の色は、虹色……クリエイションマジック…つまり、創造で魔法を生み出せるのです。」
◇◇◇
【*T/M眷属】小話
シークのメイクソウルによって、剣を分解された勇者セトウチは、あのあとから小一時間ずっと座り込み、
「……剣が、剣…また、作らなくちゃ……あぁ、」
と呟いていたそう。
本当に勇者なのでしょうか。
話に応じての重要登場人物に『』を付けます。
素直に ”良い” ”悪い” と思ったら是非、ポイントや感想、アドバイス等してくれるとより成長できると思います!
それではまた次回。 【* T/M眷属】