#22 命に訊くよ u
悪夢から醒めたと思っていたナギの仲間。
彼らの正体はまさかの”D”だった。更に、Dはとある者の操り人形だという最悪の事実も発覚してしまい事態は最悪の方向へ─。
『俺の悪夢、存分に楽しんでくれたかなぁあ?』
「…お前は、私の救世主を殺害した挙句酷く侮辱をし、決めつけにはナギ君の仲間にまで手を出し彼を殺害したのにお前は平然と此処に立っている。しかも、何が酷いかって…………この事象は全てお前の仕業だということよ。」
私は鋭い視線を向けてDにそう言葉を吐き捨てた。
今はナギ君という心強い味方もいないから、私一人でどうにかしないといけない。
『悪いけど、長話は苦手なんだ。俺から見るにぃ今の君はぁ、一刻も早く俺を殺したがっているだろう?……その焦り、惨めで笑えるよ。いいよ?外に出ようか。』
するとその男は、何の躊躇いもなく部屋の扉を開けて出ていったんだ。
何なの……?彼奴…
彼は何を考えているのか全く分からない。けれど、この冷静さの裏には何か恐ろしいものが潜んでいる気がするの。
しかも外に出るってことは……私と戦うつもりなのよね。……でも、私まともな魔法使えないのに。
『何故そんなにもたついた歩き方をするんだい?殺すよ。』
その言葉と同時に男は無作為に手のひらを向け、冷たく黒い光が一閃した。
「っもう!本当に何なの?!あんた?!」
私の足元に、大きく裂け目が入る。目を凝らす間もなく、次々と魔法が放たれる。その正確さと速さは、もはや生物の域を超えていた。
”……まずい。…お城が────崩壊する………!”
刹那、足場の木が一枚ずつ剥がれて落ちていき、窓ガラスは割れ私の皮膚をいくつかかすった。
痛覚を感じる暇もなく、私はとりあえず彼から離れようと落ちてくる瓦礫を避けてはガラスで皮膚を切り、その繰り返しで何とか外に出ることが出来たの…………だが、
時すでに遅し、園庭で倒れている夢に堕とされたナギ君の仲間が────
瓦礫によって潰されてしまった。
周囲には広く血が飛び散り、物凄い勢いで押し潰された事が目で見て分かる。
私は体中に傷を負いながら、息を切らして彼ら、彼女らの元へ駆け寄った。
……
……
……
けれど、そこにあったのはもはや「仲間たち」ではなかった。
それはただの肉塊と化していたものだった。
ルカちゃんは、肩から先が何も無い。両腕は見当たらない。
レヲン君は腹部に風穴が空き、そこからは緑色の、……いや、赤に染まって黒く変色した草が生えているのが伺える。
ニハル君の体は至る所で骨が突き出ていて、皮膚が裂けた隙間から白い断面が覗いている。
ノアちゃんに至っては……もはや顔の原型すら残っていない。瓦礫の下で潰れたその姿は、もはや人間の形を保っていなかった。
あまりに無惨だった。
目の前の光景に息が詰まり、怖くて声が出ず、呼吸も上手く出来なくなった。
「…ごめん、…なさい………」
大粒の涙と共に、震える声が零れる。何も出来なかった。守れなかった。
無力だった私のせいで、こんなにも仲間たちを壊してしまった。
私は…………判断を見誤ってしまったんだ。
もし今の景色をナギくんが見たら、どんなに絶望するだろう……
それでも──頼るしかない。
ナギ君、どうか許して。そして、どうか助けて……
そして再び、澪の瞳に……輪廻色の輝きが灯る。
◇ ◇ ◇
────────────。
刹那、黒い視界に眩しい光が入り込んできた。
そして、目が慣れると共に僕は、今までの記憶と……………現在の無惨な事実を目の当たりにした。
《……Dか…?澪、………何があったんだ。》
澪は暫く黙り込んだ後、この上ない程に枯れた声でこう言ったんだ。
「ナギ…君、ごめんなさい……私、一人でも守ることさえ出来なかった。」
《澪は、こんなに身体をボロボロにしてまで戦い抜いてくれた。なのに……僕が澪を責める理由なんて無いよ。……大丈夫、ここは魔法のある世界だから、何とかして助ける方法を見つけよう。》
ナギ君は、ショックで言葉を詰まらせるどころか、私の事を励まそうとまでしてくれた。ここまで来たら彼は、紳士の域を超えてる。
《そして澪、Dの仕業なのか?これは。》
そしてナギ君は、ほぼ分かりきったような口調でそう訊いてきた。でも実際はそうでもない。私は、彼に事の顛末を順を追って話した。
◇ ◇ ◇
《……Dを操っている?》
「…そう。夢から醒めたと思っていたのは、大間違い。実際には、彼の眷属であるDが化けの皮を被っていたの。」
《分かった。教えてくれてありがとう。そして、操っている本人は何処に………?》
「お城が崩壊してから、見てないわ。」
《それじゃあ、まだ付近に潜在している可能性は大きいな。……一旦僕に代わってよ。》
「でも、……ナギくんはストレスでおかしくなってたし………」
私が心配そうに話すと彼は安心する声で、
《遮断された間、本当に何も考えさせてもらえなかったから、相当マシになったな。》
それを聞いて私は、少し安心出来たの。
◆ ◆ ◆
《ナギ>澪》
◆ ◆ ◆
「とりあえず、ルカ達を……ストッピングタイム・パート。」
すると、ルカ達の倒れている一部付近の時間が止まった。
僕も魔法は慣れてきたから、このくらいのことは出来た。…っていっても、治癒魔法は一つも使えないけど。
《ナギ君……大丈夫なの?ルカちゃん達……》
「あぁ、後でアンデッドとして蘇生してもらう。」
《誰に……?》
「ワンドリやシークは、夢の中に身体まで送り込まれている。故に、助けさえすればシークは ”リザレクション” を使える。」
《まずは、シークさんやワンドリさんを助ける事が最優先ってわけね。》
「まぁそんなとこ。……そして問題のご本人を探さないとな。」
そして僕達(と言っても身体は一人だが)は、二時間程捜索したのだが、どこにもいなかったんだ。
◇ ◇ ◇
そして、更に一時間程捜索した頃だった。
「澪、そっちはどう?」
僕がそう澪に訊くと、
「こっちも無いみたい。」
《こっちも無いみたい。………ナギ君?》
「これ以上は無謀な気がするけど……まだ探す?…………………」
僕は何が起こっているのか、理解するのには時間を要した。何故 融合前の澪がここに立っているのか。
「何で澪がいるの………」────それは、
目の前にいる彼女は、ご本人だからだった。
【*T/M眷属】小話
ナギは、クリエマジック、アルファマジックというタレンター(鬼才)を持っていながら何故強い魔法を使おうとしないのでしょうか。
それは、空気中にある『クライス』という魔法発動に不可欠な物質が希少だということを本で読んだからだそうです。
しかし魔法発動に必要なのは、その物質の極一部。大きな魔法を一度二度 放ったところで特に何も変わりません。…ナギ君は几帳面なのです!
かといって、魔法には体力が相当いるので、皆さんも魔法を使う時はしっかり身体と相談しましょうね。
話に応じての重要登場人物に『』を付けます。
素直に ”良い” ”悪い” と思ったら是非、この作品に評価をお願いします!
それではまた次回。 【* T/M眷属】




