#1 転生なんて夢物語 S
ー異世界転生ー。
それは、主人公が死亡したり、何らかの原因があって起こる、まぁいわゆる人生勝ち組イベントだ。転生先では大体、可愛いヒロインとか、心強い仲間とか、競えるライバル、因縁のある魔王!なんて言うのが、お決まりだな。
だが、僕にははそんな甘くはなかったんだ。
これは、転生先が魔王城になってしまった凪達の二乗転生物語である。
◇ ◇ ◇
異世界転生ってのは、まぁいわゆる、人生勝ち組イベントだ。だが僕、瀬戸内 凪 (17)には、そんな甘くなかったようだ。
◇ ◇ ◇
とある日の学校の帰り道、僕、瀬戸内 凪は、
学校が終わり特に部活もないので即家に帰ろうとしていた。まぁ帰ったら、いつもみたいになろう系でも読むだろう。だが、こんな僕にも異世界転生という人生勝ち組イベントに遭遇しようとは、この時は微塵も思っていなかった。反対側の歩道には、同じく学校帰りの女生徒がいた。確か名前は…澪……だっけ。話したことないな。いや徒歩ならこっちの歩道あるけよ、危ないだろ。
そんな時、澪の後ろから、なにやら細長いナイフ、サバイバルナイフか?を持った男が思い切り走ってきている。おいおい、なんで僕はいつもこう運の悪いイベントにばかり遭遇するんだよ!こんなこと考えている場合じゃないぞ、早く助けなきゃ、
「お、おい!!後ろ後ろ!逃げろ!!」
澪は僕に気づいて、控えめに手を振ってきた。そう言うことじゃない!、車が多くて渡れな、
ぁあア、…え、ぇあ、……澪が刺された。僕は、一人の人も助けられなかった。どうしよう。自分のせいだ。そんなことより!あぁ、犯人が逃げてく、逃げてく、追いかけろ、いやまず助けろ。僕は、道路に車が走っているということも忘れて車道に突っ込んだ。
馬鹿な事だって分かっていたが、それでも、それでも助けに行けなければならなかった。……しかしそう言っても澪だって、もう助からないだろう。だって、首を刺されたんだ。もう無理だろう。あぁ、どんどんネガティブになっていく。あれ、そういえば、なんで死んだのに喋れてんだよ。おかしいよな。
僕は今、なんの感覚もない。でも、強いて言うならば、…一人の人を守れなかった後悔があるかな。
刹那、視界が切り替わった。
◇ ◇ ◇
真っ白だ。なんだここは、天国……ってやつか?案外何も無いんだな。あれ…これって流れ的に…
「瀬戸内 凪様、あなたは死亡しました。」
あぁやっぱりか。知ってるけど、未だに実感を得られないな。友達は少ないと言えど、やはり少し寂しい、信じられないな。寂しい。寂しいな。家族にも、何も出来なかったしな。今頃大騒ぎだろうな…
「あと、あなたも。」
ん?あなたもって言った?……澪?!
澪だ、生きてたのかぁぁじゃなくて、大丈夫だったのか…でもなくて、ここにきてたのか。
「えぇ、そうだとも。ていうか、なんで凪君がここにいるの?」
「あぁ…それは、ね…」
「静粛に。」
体が硬直した。とんでもない威圧感。いや、怒ってはいないんだろうけど、にしてもだな。
「あなたたちは、死んだのです。」
「あぁ、知ってるよ。」 ぁ睨まれた。
「はい、承知しておりますとも…」
「あなたたちには、選択肢が与えられます。一つ目は、輪廻転生をして、また新たな人生を歩むこと。2つ目は、天国に行き、暫く努力してきた人生を振り返りつつ、至福を嗜むか。そして3つ目は、……あまりオススメはしませんが、異世界転生、というものがあります。」
おいおい、これは迷わず異世界転生じゃないのか?!あれ、でもオススメしないって言ってたよな。なんでだ?
「あの、なんでオススメしないんだ?…ですか?」
「異世界の転生先は、ランダムとなっております。異世界転生を望むものは多くいるのですが、大半は地下に埋まり死亡、海で溺れて死亡、まぁ成功する人はあまりいませんよ。」
「成功率はどのくらいだ?…あぁですか?」
「成功率は、おおよそ0.8%程でしょうか。」
少なすぎだろ!!!!!!!!!!!
いやでも、ロマンとかもあるしぃ…!!
んんん………。
「あぁ、異世界転生にしますよ。」
「左様ですか。」
「隣の方は。」
「私は、いや私も、……異世界転生で。」
「はぁ…承知しました。おふたりとも異世界転生ですね。」
おい!遂に感情をだしてきたか!
「それでは、手続きがありますので、そちらにかけてお待ちください。」
僕たちは、異世界転生の手続きが終わるまで、天国のロビー的なところでくつろいでいた。手続きとか、現実味あって嫌だな。
「…なぁ、なんで澪は異世界転生にしたんだ?」
「あら、随分と馴れ馴れしいわね。まぁいいわ。私、実は極度の転生モノ好きなのよね。」
おぉ!!普段清楚な澪にこんな一面があったなんて、お兄さん感激……
「ねぇ、今良からぬこと考えてたでしょ。」
「か、考えてないわ!!!」
澪はクスクスと落ち着いた感じで笑った。
「手続きが完了しました。」
お!ようやくか!っていっても、もうここからは運だからな……正直怖い。澪も隣で震えているし、僕は、ある程度、少し、まだ、覚悟ができたと思ったのに。
………よし、できた。
「「お願いします。」」
「良い旅を、因みに私の名前は、シリウスです。」
「おぉ!いい名前だな!」 睨まれた。
「いい名前ですねぇ…!」
シリウスは、少し肩の力を抜き笑う。
それでは行ってこよう。異世界へ!!!
刹那、目の前には身長を遥かに超えるほどの大きな扉。僕らは、息を飲んで扉をくぐる。
ーそして視点が変わるー。
◇ ◇ ◇
「ぁ痛たっ!」
少し上空に出てきたのか…あイテテ。
薄暗い場所だな、ここが異世界?
例えるなら、大規模戦争の跡地みたいな、
奇妙な感じがする。
かすかな風が頬を撫でる。その風はどこか異質で、不安を感じさせる。ここが現実世界ではないということを実感させられるような。
そしてこの雰囲気、魔王がいてもおかしくないような、……
不安とともに微笑する。
ま…さか、…ね。
ー凪は死亡フラグを立てたー。
刹那、凄まじい気配がした。
……
……
……
……うぅ…風が強すぎる、いや……これは”威圧”ってやつか……?にしても死んでしまう、息ができない。また死ぬか、せっかく運良く地上に転生できたってのに…これって、いやいやそんなはずないよな。
威圧に耐えながらも、(死にそう)薄い意識の中で、軽く土で舗装されている道を進む。
しばらく歩くと、霧の中に大きな城の影が見えた。
そして僕は、酷い立ちくらみに襲われる。
この雰囲気、…絶対に────
◇ ◇ ◇
これからの展開に乞うご期待!
そして、これからは話に応じての重要登場人物に『』を付けます。
話に応じての重要登場人物に『』を付けます。
素直に ”良い” ”悪い” と思ったら是非、ポイントや感想、アドバイス等してくれるとより成長できると思います!
それではまた次回。 【* T/M眷属】