プロローグ:妹がタウンハウスを探しています。
新連載です。
とある作品にインスパイアされて書いたので、怒られないか心配…。
みなさまこんにちは、ヴィッツ・ロードンと申します。
私は大陸西側にあるノーソリア王国のロードン侯爵家の次女です。
お父様であるロードン侯爵は王国の農務卿を務め、お母様は元伯爵令嬢という極々ありふれた貴族家の娘です。
侯爵家・農務大臣職の跡取りであるお兄様、お母様の美貌を受け継いで第二王子の婚約者になった長姉様、同じくお母様から受け継いだ美貌で幼馴染の公爵家嫡男と婚約している妹…というのが私の家族になります。
そんな中で、学院時代から歴史、とりわけ建築物史に興味があった私には、両親も期待していないのか、婚約者がおりません。
公爵家から兄に嫁入りする義姉、王家に嫁ぐ姉、義姉とは別の公爵家と縁のあった妹と、家がつながりを持ちたい家はほぼほぼほかの兄弟が関係をつないでおり、昔から容貌に自信のなかった私は博物館の学術研究員として自立し、将来はそのまま研究員として生涯を終えたいと考えています。
母は「行き遅れになる」と心配していますが、すでに条件のいい男性は良縁に恵まれており、そんな中行き遅れ気味の侯爵家の次女という立ち位置は非常に微妙なもので、仕事に生きたいという願いがかなっている状態です。
ついでに仕事についてですが…博物館の学術研究員というのはそれだけで自立しているとはいいがたい仕事です。
私の専門は建造物史という分野で、国内各地、場合によっては海外の種々の建造物の構造を見て、場所ごとに適した建造物という研究をしています。
それだけではお金にあまりならないので、その知見を活かして、建造物の設計士や家を建てる方から場所に適した建造物の構造をアドバイスする、というのが本職のようなものになっています。
「…お姉様、少しよろしい?」
「あらヤマカ、どうかした?」
ここ数日、忙しそうに婚約者である公爵令息と将来住む家を探していると言っていた妹・ヤマカが、仕事がお休みだった私の部屋を訪ねてきました。
仲が悪い、というわけではないのですが、すでに婚約が整っている姉も兄も妹も、婚約者との時間を優先しており、家族である私とはしばらく疎遠になっていました。
「実は、この家なのだけれど…」
久しぶりに訪ねてきた妹は、一軒の屋敷の見取り図をもって、不思議なことを訪ねてきました。