2.ルーティーン
朝。起きる目安としては朝焼けのオレンジ色がかかってきた頃に起床する。朝早くから練習する人達もいるため、これくらいに置きて支度しないと朝食に間に合わない。
水球と乾燥を使って軽く水を浴び、寝間着から着替える。乱れたベッドを整え、カーテンを留め、窓を軽く開ければ朝の用意は完了だ。
部屋は3階、食堂は1回のため下へ降りる。この時間に動く人は少ないため人とすれ違うことは少ない。
食堂の厨房に着けば調理を開始する。
品数は多くなくても満足してくれるが、その分量が必要だ。意味わからないくらい食べる人もいるから。
まず昨日仕込んでおいたパンを焼く。竈の火起こしはそこそこ時間のかかる作業だが、魔法で短縮。
焼けるまではある程度時間ができるから次の物に手を付ける。まずサラダは昨日の残りのマッシュポテトとレタス、トマト。人数分の皿を並べてレタスを敷き、上にマッシュポテトを乗せたらトマトを飾る。彩りがいいから結構気に入っている。
メインは肉だ。昨日の討伐で羽兎の肉が結構手に入ったから、腐る前に食べなければ。
味付けは塩胡椒と香草。いつもの組合せだ。
ただ、それだけだと飽きてしまうかもしれないため香草の香り自体は変える。今日はローズマリーとレモングラスだ。
これでスパイスがあると調味の幅が広がるのだが……、もう少ししたら自腹で買おうと思う。
そうこうしているうちにパンが焼け、焼き立て特有のふわりと甘い香りが立ち込める。朝食の早い人達は食堂へ入ってくる頃合いだ。お盆にお肉とサラダ、お水、カトラリーを置いて各テーブルにパンの入った籠を置く。あとはそれぞれ取っていけば良い。
第二陣のパンを焼き始め、お肉も焼いていく。気が向いたのでパンにも香草を混ぜ込んでみる。不味くはならないはずだが。
もう少しすると一気に人が入ってくるため自分も朝食を済ませておく。パンを上下2つに切り分け間にサラダと肉を挟む。手軽だし片手で食べれるしで一石二鳥。お肉美味しい。
「アリスちゃん! 今日のご飯は!?」
「パンとサラダ、メインは昨日のウサギ肉です」
「お肉! やったー!」
アルさんがワクワクした様子で話しかけてきたため対応する。彼女は朝食前に朝練をする組なのでお腹がすくのだ。
「あ、パンの追加お願いしていいですか。お肉あげるので」
「!! うん!!」
「やったー!」と小躍りしながらるんるんと配っていくアルさんを見ていると、自分よりかなり歳上であることを忘れそうだ。
アルさんはあんなの(失礼)だけど既に20を超えている。多分三十路も近いはず。
ただ、魔術師――というより魔力を使う者たち――の特徴である、見た目的な成長は遅いため、ぱっと見は16歳くらいだ。
私? 私も恐らく結構小さく見られている。リーダーには年齢を伝えたけど、それを他の人が知っているかはわからない。
何故魔力を使う者の成長が遅くなるかと言うと、有り体に言えば魔力が成長を邪魔するからだ。
魔力の働きの一つして、「状態を保存する」というものがある。それが体の成長にも当てはめられてしまうため、魔力が満杯に近い状態を維持すると成長しない。つまり魔術師で年齢相応に成長している人はそれだけ常に魔力を使っている、ということである。そういう人は大抵強い。
アルさんはそもそも魔術師と剣士の両取りだったから、魔力を使い果たすということはあまりなかったそう。
私はいくら使っても回復してくるし、そもそも家では大規模な魔法は使えなかったからあまり成長していない。
取り敢えず作業が一段落し一息ついていると、リーダーが来た。
「さて、アリス。これで約束の1週間が経ったが、いけるな?」
「彼らのやる気があれば。ただ、やり方を叩き込むだけならいつでも」
「うっし、じゃあ明日から頼む。お前も1人でこんだけの量を用意すんのは大変だろ?」
「あまり。単純ですし」
前の家で作っていたものとは比べ物にならないほど雑でいいから、正直あまり大変だとは思わない。量を用意する必要はあるけど、味が対して変わらなくても文句言わないし。
「お前は食い終わったのか?」
「はい。朝練組が捌けた時に」
「そうか! しっかり食えよ!」
リーダーは盆を一つ持って去っていった。よし、洗い物も終わった。これで私の仕事は終わり。使った食器の後片付けは私と同年代の構成員の仕事だ。
行き先は、訓練場。
――
身体を軽くほぐしたら、ウォーミングアップをする。そこそこ広い訓練場を2周し、自動で矢が飛び出てくる装置を起動させてひたすら避ける。5分ほど避けたら矢がなくなるから補充して終わり。ここから魔法の練習に入る。
今日やるのは水と風を利用した高速移動と飛行の魔法。正確に言えば今日「も」だが。
前の家では目立たないようにする必要があったため大きく動くものは試せなかった。だが、この場所でならある程度高くとんでも音を出しても怒られない。素晴らしい。
閑話休題。
何故風はともかく水を選んだかと言うと、失敗した時に怪我をしづらいことと、古書に『水とはこでありえきでありきである』という言葉が載っていたことを思い出したから。恐らく、水を冷やすと氷ができ、温めると水蒸気になることを言っているのだと思う。つまり「こ」とは「固体」のことで、「えき」は「液体」、「気」は「気体」を表しているのだろうと考えているわけだ。
ただ、これは侯爵家でも解読されていないため合っているとは限らない。もっと別なことを指している可能性もある。
先日は推進力を得ようと水と風を思い切り噴出し、壁に頭から突っ込みそうになった。これは駄目だ。危ない。
その後鳥に「くるっ」と鳴かれたのが非常にムカついたため、今回は別なアプローチで行こうと思う。
これまでは勢いをつけるイメージだったのを、別の「飛ぶ」イメージに切り替える。
即ち、翼だ。
「……」
水で芯を作り、そこに風で出来た羽で肉付けする感じ。翼を広げたら自分を中心に上向きの風の流れを発生させるように。その流れに乗ることが出来るように。
そうだ、多く羽ばたく必要はない。風を作り、そこに乗れば良いのだから。
「『風水翼』」
翼が、風を掴む。
――
「うわ……!」
思わず大きく目を見開いて見上げる。視線の先には宙にいるアリス。危なっかしいものの、彼女は確かに空にいた。
何より、綺麗だった。
アリスの赤い髪がふわふわと風に靡く。日の光を反射し七色に輝く水の翼と相まって、非常に幻想的な光景だ。
翼が1つ羽ばたけば、スウッと滑らかに空を飛ぶ。慣れてきたのかくるりと回る。遠目では詳しい表情を見て取ることは出来ないが、彼女が楽しげなのは雰囲気で伝わってきた。
「アリスちゃーん! 飛べたのねー!」
「あ、ルナリアさん」
アリスが降りてきた。何時もより頬が赤く、高揚しているように見える。
「飛べました」
「見てたよっ! あれは魔法?」
「今は。ただ、アルさんに協力してもらって魔術にするつもりです」
「あら、そうなの?」
「はい。上から情報を探れるなら偵察の幅が広がりますよね?」
「〜〜! いい子!」
多分他にも色々あるんだろうけど、口にした理由も嘘ではないのだろう。
この前、偵察の大変さをアリスに溢したことがあった。もしも、それを覚えていてくれたのなら。
「あ、続きしてもいいですか?」
「勿論! 寧ろ引き止めてごめんね?」
「いえ。あ、上から魔術使うので、気をつけて下さい」
「わかったわ」
畳まれていた翼がふわりと広がって、アリスはまた空へ。……羽ばたいてはいないと思うのだけど、どうやって浮力を得ているのかしら。
「行きます」
魔法や魔術を的へ使う時は先に一言伝えるのがルールだ。好き勝手に使ったら怪我人が続出する。
「『炎槍』」
着弾。だけど何時もより少し軌道がぶれている。それでも複数の魔術と魔法を維持しつつこのブレなら問題はないくらいだ。
「『風刃』、『水刃』」
ランクを一つ落とし、2つの攻撃魔術の同時展開。命中は先程と同じ程度。
……多分、さっき火を使ったからその消火もあるのだろう。相変わらず気の利くいい子だ。
「……『槍となれ』」
「っ!」
くらり、とアリスの姿勢がぶれる。魔法自体は発動したが精度がない。途中で魔力が足りなくなったのか?
「……ふう」
「お疲れ様、アリスちゃん。体調は問題ない?」
「はい。魔力を多く使って少し目眩がしたただけですから」
確かに顔色は少し悪いけど、顔面蒼白! というわけでもない。軽度の魔力不足だろう。
「それで、どう?」
「移動する分には問題ありませんね。ただ、飛行状態を維持するだけで2展開、移動するには3展開ですから、魔術に落とし込んでそこから魔導具に……、と考えるといかに省略するかが肝になりそうです」
「……そんなに多く展開してたのね……」
本当に、この娘は。表情が変わりづらいのもあって、涼しい顔で素晴らしいことをやりのける。聞いたところそこまで余裕があるわけではないそうだけど。
「では、私は1度外します」
「えぇ、しっかり魔力を回復させるのよ」
――
割り当てられた自室にて、机に向かい合って考え事をする。
(飛行の魔法はどうやったら省略できる?)
今の私のやり方だと、バランスのために水の骨組み、微妙な調整のための風の羽、そして気流。これらのどれか1つでも欠ければ飛べないし、飛べても調整ができない。
(風の羽は削れない。気流も。だとしたら骨組みか)
魔法で出来ないことは、他のもので代用する。それは己の体だったり道具だったり様々だが、今回はどうするのが手っ取り早いだろうか。
(立つ……座る? 慣れてるのは馬……?)
魔導具で水の馬を作り、風で飛ばす? いや、水は結構重い。非効率的だ。
生きている馬を飛ばすにしても同じ。あれは人間、しかも軽量の装備だから飛ぶ。重戦士が飛ぶのは難しいだろう。
(腰掛けるだけでいいなら別に乗り物である必要はない)
「……いけるかな」
――
「と、いうわけで試作です」
「斬新だね! でも結構良い考え方かも……!」
「うっし、やってみっかー!」
私が作った試作品を手に、持っていない方の手を振り上げたのはガルバさん。魔力が少し多い人で、自分で編み出した魔法で身体を強化しながら戦う近接特化の魔法戦士だ。
「行くぜ!」
「あ、まりょ」
すぐに発動させようとするガルバさんに注意点を説明しようとしたのだが、一歩遅かった。
彼は、魔力を一気に流してしまった。
「うおおぉぉ!?」
まだ乗っていなかったため、ギュン! と加速する試作品になんとかしがみつくカルバさん。必死の形相。だが、あの掴み方では……
「ちょ、止めてくれー!」
「上に行くよね……。止めてきます」
「もー、魔導具の注意点を聞かずに使うとかほんっと頭がないんだからさ!」
プンプンと怒るアルさんを尻目に風水翼を発動させ、気流を発生させて加速する。魔導具は魔力の供給が途切れたことで既に落下し始めている。加速が終わり遅くなってきているから、まだまだ荒削りのこれでも追いつけるはず。
「うおっ! 助かったぜ!」
「次は先に注意点聞いてくださいね」
「気をつける!」
魔導具とカルバさんをそれぞれ掴んで降下に入る。体勢を崩さないよう気をつければ、加わった重みで高度は下がるから新たな魔法を展開する必要はない。
そこそこゆっくり降りていけば、アルさんがぶんぶん手を振ってくる。
「いや〜、死ぬかと思ったぜ!」
「ほんっと、あのままアリスちゃんが止めなかったら赤いシミになってたんだからね!?」
「だってぜってぇ止めてくれんじゃん。別に構わなくねー?」
「そ~いう問題じゃ、ない!」
「……カルバさん」
「ん? あ、さっきは助かったぜ!」
はっはっは、と笑うカルバさん。……反省してないな。
「信じていただけることはありがたいです。ですが、そのように思考放棄するのと信じて挑むのとでは、大きく違います」
「……はい」
「試作品は試運転はしましたが、詳しく調べてはいません。もしかしたら属性の相乗効果で追いつけなかったかもしれませんし、もっとおかしな方へ暴走したかもしれないんです。それに私やアルさんが助けられるとも限りません。自分の身を守るため、きちんとリスク管理をお願いします」
「……はい……」
「アリスちゃん怖い」とアルさんが言っている気がするが気の所為だろう。私は極普通の元貴族の女の子だし。威圧感なんて無いし。
と、年上相手に説教を続けるのはあまり良くないだろう。そう思い視線をそらす。すると意図を理解してくれたのか、カルバさんはぱっと顔を上げた。
「カルバさん、これからはどうしますか?」
「先にアリスかアルに確認を取ってから使います!」
「最初っからそうすればいいのに……」
「今回は私も教えるのが遅くなりましたから。次は私も気をつけます」
「アリスちゃんは悪くないよー! 悪いのは人の話聞かないこのバカだから!」
「ひでぇな!?」
アルさんとカルバさんのやり取りは他の人達のものと比べ気安い。もともとコンビを組んで冒険者をやっていたらしいけど、安定を求め傭兵団に入ったそうだ。
遠距離から攻撃も支援も出来るアルさんと、盾と剣を巧みに使い敵を押し止めるカルバさん。かなりバランスの良い組み合わせだと思う。
「……ん?」
「どうしました?」
「いや、アリスってそんな目だっけ?」
「なになにー?」
そう言えばかなり魔力を使った。変化していても可笑しくないか。特に興味もなくて鏡で見たこともないけど、魔力の量によって髪や目の色が変化することはよくある。
「……アリスちゃん、ちょっとだけ魔法使える?」
「……? はい、できますが」
手のひらにそよ風程度の風を吹かせる。それにしてもどうしたのだろうか。
「うお、すげぇな」
「うん、アリスちゃん、すっごいきれい!」
「えっと、何が……?」
2人はいきなり褒めてきたけど、本当になんでだ? そんなに変化があったっけ。
……確認しようとも思わなかったからどんな変化があるかなんて知らない。2人の反応を見るに悪いものではないと思うんだけど。
自分の目は嫌いだ。こんな目でなければ、もう少し両親は私を愛してくれたかもしれないから。
「魔力を使うことで目の色がアリスちゃん自身のものに戻るとね、艶のある黒になるの。そこで魔力を使うと、こう、目がきらきら〜って!」
「なんつーか、星空を閉じ込めたみたいできれいだぜ」
「……」
星空。あんなに綺麗なものに似ていると彼らは言う。嬉しくて、どこかこそばゆくてむずむずする。
目の色を褒められたことなんてなかった。みんな、不気味だと言って視線を合わせようとしてくれなかった。
「気にしたことなかったので、知りませんでした」
「あれ、そうなの? 家族が気づきそうなものだけど」
「前は、魔力を使い切ることは、あまりなかったですから」
魔力を使い切るとどうしても疲れてしまって彼らの気分を害してしまう。それにいつ駆り出されるかわからなかったから、回復が早いとは言え役立たずになることは避けたかったから。
「ってことはこれ見れたの私達が最初!? やった、凄い嬉しい!」
「だな!」
「……何故?」
「なぜって、うーん……、優越感みたいな?」
「他のやつが知らないことを知ってるとか、嬉しいじゃん?」
「……よくわからない」
でも、私のことで喜んでくれるのは嬉しい。それに、2人の息の合った様子は見ていて面白い。だから。
「――でも、ありがと」
「あれ、なんか言った?」
「なあなお、早く続きしようぜ! 魔力を1度に流す量は少なくすること以外に気をつけることあるか?」
「基本魔力を流している間は細かい操作が可能になっているはずです。でも流して蓄積された魔力がある間は進み続けるので、旋回くらいなら魔力を流さなくてもできると思います」
「減速は?」
「後ろに取り付けられたやつ、わかりますか? それが減速用です。同時に降下もするので気をつけてくださいね」
「りょーかい! じゃ、リベンジ!」
カルバさんが楽しげに駆けて行く。先程死にかけたというのに元気。恐怖心がないのだろうか。
「それにしても、なんで形あれにしたの?」
「ここに沢山あり、腰掛けることができ、前と後ろがわかりやすく、程よく軽いものとなると……」
「あー、確かにそれなら納得。でも、変な光景だなぁ」
「……箒が空を飛ぶ、ですからね」
――
「どうでした?」
「すっげえ楽しかった! こう、風を切る感じ! 思ったより魔力消費も少ないし!」
「今回のものは如何に魔力消費を削るかに重点を置いていますから。その様子なら大丈夫ですかね?」
やりきった顔で笑っているカルバさん。かなりスピードも出せていたし、これなら大丈夫だろうか。
「ん〜……。俺は高いとことか平気だからいけるけど、怖いと思うやつもいるかもなぁ。あれ、結構不安定だし」
「でも、これ以上本体の重量が増すと難しいんです。魔力消費がかなり激しくなる」
が、やはり改善点はあるか。
やはり足りないのは安定性。まあ安全のための固定具もない、頼りになるのは座っている部分と柄を掴む手のみという感じだし恐ろしく感じる人はいると思う。
「って、もうお昼だよ! 今日討伐だし、食堂行こっ!」
「おっ、そうだな!」
「わかりました」
2人が駆け出す。私は別に急ぐわけでもないから後ろからゆっくりついていく。……ここから食堂だと結構距離があるから、二人についていこうとすると体力が持たないのだ。
「……ん」
空から1羽、白い鳥がやってくる。純白の羽に赤い目、よく手入れされていることがわかる汚れ1つ無い体。
鳥は、頭上を1度旋回してから腕にとまった。
「『解除』」
鳥の姿が解けて手紙に変わる。封はない。万が一見つかったときのため、自分たちを示すようなものは1つも入れないことになっているから。
「『戦闘準備、教育遅れ、解雇続出、出張希望』ね」
手紙を燃やす。今回のは炙り出しとか薬品系じゃないから捨ててしまって問題ないし。それに、万が一見られたら面倒くさい。
「アリスちゃん、早く〜!」
「早く来いよー!」
「今行きます」
さて、討伐に備えなければ。
――
「アリス、頼む」
「はい」
討伐での私の役割は、まず最初の索敵。これにより魔物の位置を大雑把に把握し、斥候の皆さんに詳細情報を取ってきてもらう。
「一から二時方向、距離300。六時方向、距離250、数3」
「じゃあ、索敵班行くわよ!」
ルナリアさんは斥候班のリーダー。凄い。
武器は短剣だが、そのリーチの短さを補って余りあるほどのスピードと手数、そして瞬発力。また隠蔽行動も大の得意で、もしかくれんぼをしたら彼女が優勝するかもしれない。
索敵が終われば、私の仕事は殆ど無い。予備戦力みたいな扱いだからね。ただ、今日は敵の数が多そうだし、もしかしたら敵の対処が必要になるかもしれないが。
待つこと3分ほど。真っ先に戻ってきたのは一番遠いところを偵察してきたはずのルナリアさんで、その次は慣れている人が順々に。息が切れている人も多い中、汗もかいていないルナリアさんは凄い。
「一時方向誤差2、敵狼と猿の混合。数は4、6」
「六時方向誤差なし、トレントとドライアド。数は両方2です」
「よし。いつも通り囲まれないよう気をつけろ。突出しねぇようにな。今日はアリスが後衛に回るから、後ろは気にせず戦え」
有難いことに、数度、討伐に参加したことで実力は認めてもらっている。戦場を押し付けられることはあったが、命を預かるようなことはなかったため、新鮮な視点だ。
……まあ、もっとも……
「討伐が終われば昼飯だ! さっさと片付けんぞ!」
「肉ー!」
「早く食いてぇ!」
「飯……!」
……胃袋を掴んだだけな気も、しないでもないが。
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