霧の夜森で出会う
霧の夜に森で迷う。そんな不用心な事態に陥ってしまった。残念ながら灯りがない。仕方がないので大声を出す。うろついて沼にでも嵌ったら万事休すである。
「誰かいませんかぁ!」
目の前は分厚く灰色だ。
「誰かいませんかぁ!」
霧の中に、うっすらと人影が見える。
「誰かいますかぁ!」
「おおい!大丈夫かぁ!」
叫び返してくれた人は、カンテラを持っているらしい。
「周りが見えないので動けませぇん!」
若く美しい若者がカンテラを掲げて現れた。
「なんと旨そうな子鹿だ」
「やめてくださぁい!」
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