中華料理屋
「ちょっ!!!!!!」
「え、愛ちゃん!?」
秋と翔は2人して狼狽した。
そんな中老人は1人そんな愛の行動をさも当たり前かのような顔をしながら微動だにしなかった。
「じーさん…。もしかしたら気付いてたろ。」
「ほっほっほ。いやぁ、そんなことないぞい。ただあの子なら有り得るとは思ってのう。」
「大丈夫かよ…。あいつがほんとにターゲットなら愛ちゃん危なくない!?」
「…とりあえず目を話さないようにしっかり見張っておこう。」
「お兄さん!1人で何してんのー??」
男は怪訝そうな顔をして別に…。そういってまた酒を飲み始めた。
「1人でお酒飲んでるなら私とおしゃべりしよー!」
そう言いながら隣に腰をかけた。
男はいかにも迷惑そうな雰囲気を醸し出しているが愛はお構い無しに話続ける。
相槌がなくとも楽しそうに話す彼女の顔を一瞥すると男は少し驚いた顔をした。しかしすぐに正面に顔を戻しそして先程と変わらず素っ気なく酒を飲んでいる。
ふと時間に目をやると閉店時間を2時間も過ぎている。翔は満腹になったのか半刻ほど前から船を漕いでいる。秋も流石に気が抜けてしまったのだろう。半目で視線を移すとカウンターの2人は未だに楽しそうに話を続けている。…いや実際は愛が一方的に話しかけているだけなのだが。
老人がトイレに立ち上がり用を足して戻ってくるとカウンターにいた2人の姿がない。
急いで秋に声をかける。
「2人はどこに行ったのか??」
その声に秋も反応し見渡すが店内にはいない。トイレは1つしかないため老人が見間違うはずも無い。
やられた。そう思い翔を叩き起すと急いで会計をする。
「先程ここの席に座ってた男に見覚えは??」
「さあ?たまに見る顔だけど話したこともないよ。」
「じゃあ2人はどっちに消えていった??」
「わからんな。そこまで客の行動把握してないよ俺は。」
店員は答えたが秋は気付いていた。きっとこの店員は男の事を知っている。隠そうとしているが表情に少しぎこちなさを覚える。
このまま問い詰めることも出来るが今は2人を探す方が先決だ。会計を済ませ3人は店の外に出た。