決断
「ここまででなにかわからないことや聞きたいことはあるか??」
そう聞くととりあえず無さそうなので秋は続けた。
「よし。それじゃ、ここからが先に聞いておきたいことなんだが、もし仮に何かのタイミングでクローンを作るとなった場合何を代償に捧げる?」
「え、今答えるの!?」
「ああ。さっきも言ったが今のところ翔のクローンも作ったことはまだない。だが万が一クローンを作った方が命が助かると判断した時に、代償を何にするか何も決めてませんじゃクローン作る前に助からないかもしれない。だが俺の一存で勝手に決めた結果生き延びてその後の人生を歩んでいく時に自分で選択しておけば良かったと思わせたくないんだ。だからこそ先に聞いておくようにしている。」
もちろん秋自身クローンを使わないに越したことはない。もしかしたら作ってもすぐに見破られるような代償だったり、クローンを作ったところで意味がありませんじゃただ損をするだけだ。
けれどもしもの時のために、準備を怠らない。それは自分だけじゃなくて相手を守るためにも必要なことだと知っている。
少し時間をあげるか、そう思って翔の方を見た。
すると先程まで食べていた定食では足りずもう1食頼んで居たのが丁度到着したようで嬉しそうにしている。先程6個入っていたコロッケは全て翔が食べていた。あれだけコロッケ食べてたのに。やっぱりこいつコスパ悪いな。そう呆れつつも見ていたら物欲しそうに見えたのか、秋さんも食べます?そう聞いてきたので丁重にお断りをした。
30分くらい経っただろうか。翔の定食があと数口で無くなりそうなのを横目に決まったか?そう尋ねた。
老人は何がいいか迷うのう。と言葉に出しつつ、いざとなったらすぐ答えてくれそうだ。
秋は愛の方に顔を向け、もう一度尋ねる。すると
「んーどうしよっかなーってすっごい考えちゃう!だってぶっちゃけ自分の身体のどこかでしょ?私別にどこ持ってかれてもいっかなー」
「おいおい、自分の言ってる意味わかってるのか?それは下手したら心臓でもいいって意味になるぞ?」
「うん!別にいいよ!あ、なんならいいね!じゃあ私心臓にする!!」
ニコニコと話す愛。それを聞いた3人は一斉に愛をみる。
「だ、だめだよ!!!!」
「そ、そうじゃ愛ちゃん!愛ちゃんは死んではいかん!それではクローンの意味がないじゃろ!」
「えーだってほんとにどこでもいいもん私。それにもしかしたらの話でしょ?そうなるってことは死んじゃう可能性があるからクローン作るんでしょ?だったらどっちにしても生きれるか微妙なんだし心臓取られても大差なくない??」
なんでもないかのようにあっけらかんと話す愛。秋は今までこの話をして悩みすぎて答えの出ない人や、きっと代償としては価値の薄いものしか言えなかった人、代償を払うくらいならクローンを作られたくないと去っていった人。そういうタイプは居たが心臓を代償にしていいと言い切ったのは愛が初めてだった。
はぁ。ため息をひとつつくと
「じゃあ嬢ちゃんに関しては俺の独断で決める。それでいいか?」
「うん!それでいいよ!むしろそれが1番いい!」
あったまいい!!と笑いながら話す愛に二度目のため息をついた。