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09-2 中庭の決戦(後)

「――来たか」

 中庭で峻佑たちを待ち受けていたのは、神楽、猿義、そして――

「た、琢磨ぁ!?」

 柱の影からひょっこり出てきた3人目の人物を目にしたちひろが驚いて声を上げた。

「ヘヘン、驚いた? ちー姉やみー姉、まだオイラのこと苦手意識もってるでしょ。だから――」

 琢磨が得意げな顔をして話している間に、みちるが携帯でどこかに電話をかけた。

「あ、もしもし英里叔母さん? ちょっと、琢磨のことで話が……え? 今日非番なんですか? なるほど……じゃあ、待ってますね」

 みちるはどうやら琢磨の母、英里に電話をかけていたらしく、待ってる、と電話を切ってすぐに、

「やっほ、ちひろちゃんにみちるちゃん、それに峻佑くんも。またうちの琢磨(バカ)が迷惑かけてるみたいでゴメンなさいね。今日という今日はとっちめてやるんだから。琢磨ぁ! 逃げんじゃないよ!」

 唐突にその場に瞬間移動(テレポート)で現れた英里は、いつもの笑顔で峻佑たちに片手をあげてあいさつすると、急転直下、般若のような形相になり、まさかの母親登場でこそこそ逃げ出そうとしていた琢磨を一喝し、そのあまりの大声に琢磨は転び、あえなく英里に捕まってしまい、ズルズル引きずられながらこの場からは退場、ということになってしまった。


「やあ、久しぶりだね。2年ぶりくらいかな?」

 そして最後に出てきた男がそう峻佑たちに話しかけた。

「お、お前は……!」

 峻佑はその人物に見覚えがあるような気がしてそう返したが、

「…………誰だっけ?」

 名前が出てこず、シリアスな空気をぶち壊し、その場にいた全員がずっこけた。

「こ、このボクを、魔法組織【ノアの箱船】第28代総帥、熱田 輝の名を忘れたとは言わせないよ……! ボクをコケにしたこと、後悔させてあげるよ」

 かつて本気で戦った者に名を忘れられていたことを「コケにされた」と感じた輝が額に青筋を浮かべて名乗りをあげた。

「冗談だ、冗談。テメーの顔はあれから一度たりとも忘れちゃいねえ。あの時のトドメはコータローたちに持ってかれたからな。そん時の恨み、晴らさせてもらうぜ」

 峻佑は怒っている輝をなだめるように冗談だ、というと、きちんと真面目な顔に戻して、輝をにらみつけながら宣戦布告をした。

「そう上手くいくかな? ボクとて2年前のボクじゃない。あの時のままだと思ってると、痛い目を見るのはそっちだよ」

 輝も負けじとにらみ返し、峻佑を挑発する。

「さて、我々の仲間に熱田殿がいることからわかるように、我々は生徒会に対抗するための秘策として魔法使いを招聘した。もう簡単にはやられはせぬぞ。無論、熱田殿だけではない。転校生の――」

 猿義が峻佑たちに、峻佑たちが持っていた魔法という一種のアドバンテージは無くなった、と声高に叫び、さらに何かを言いかけたところで、

「残念だが、姫野姉妹なら来ないと思うぞ。今朝、姉の渚の方がオレのところに相談しに来てな、おそらくてめえらが出したものだと思う手紙を見せてもらったから、生徒会と敵対したくないならそこには行くな、って言っておいたからな」

 峻佑が猿義の言葉を遮り、猿義が期待していた姫野姉妹が来ないだろう事を冷徹に告げた。

「んなっ!? どこまでも我々の邪魔を……」

 峻佑たちが生徒会室で姫野姉妹にコテンパンにやられた、という(一部間違っている)情報をキャッチしたあと喜んで姫野姉妹の家に忍び込んで手紙を置き、仲間に加えられれば対生徒会における最強の切り札になると見込んでいた猿義は愕然とした。と、そのとき。

「ぶっぶー、市原くんもはっずれー」

 その場に響いた、少し幼さの残る声に、全員が声の聞こえた方向――渡り廊下の屋根の上を見た。

「別にどちらに加勢するというわけでもないですが、姫野渚と栞、参上しましたわ」

 渚はクールにキメると、シュタッと屋根を蹴ってジャンプし、くるくるっと宙返りをしながら着地し、後から栞も続いた。

「これで役者はそろったか……?」

 神楽がポツリと漏らしたひとりごとは誰の耳にも届かなかった。

「どっちに加勢するわけでもない……? じゃあなんでここへ来た?」

 なぜ明確な用もないのにわざわざこんな人気もなく、ジメッとした中庭に彼女たちがやってきたのかわからない峻佑は首を傾げて訊ねた。

「ここへ来た理由? 単純に面白そうだから、ですわ」

 渚はそっけない返事だった。と、そこにまた別の声が響いた。

「別に呼ばれちゃねえけれど、愛しのちひろさんを守るため、九崎 翼、ただいま参上っ!」

 翼は旧校舎の屋上から名乗りを上げて飛び降りたが、悲しいことに誰も彼の方を見ていなかった……

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