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08   賢悟

 峻佑たちが登校して教室に入ると、彼を待っていたかのように渚が近づいてきた。昨日のことがあるので自然と身構える峻佑だったが、

「そんなに警戒なさらないで。今は何もいたしませんわ。ただ、聞きたいことがあるのですが、よろしいですか?」

 渚はニコニコとした笑顔で峻佑に話しかけた。

「聞きたいこと? 校内の案内か?」

 峻佑は警戒態勢を崩さないまま、渚に聞き返した。

「いえ、校内の案内はもう十分にしてもらったのでいいのですが、昨日、うちにこんな手紙が届いたのですが、心当たりあります?」

 どうやら渚はとりあえず行ってみる前に、校内のことについて詳しそうな人物――生徒会長の峻佑に聞いてみることにしたらしく、カバンの中から昨日の手紙を取り出して峻佑に見せた。

「見てもいいのか?」

 峻佑は手紙を受け取ってから確認すると、中を開いた。

「…………!」

 そこに書かれた文面を見て、峻佑の顔が険しくなった。

「心当たりある、って顔ですわね。それを書き、届けた方について教えてくださらないかしら?」

 渚はそんな峻佑の表情から何かを知ってると判断したらしく、そう頼みこんだ。

「心当たりあるっていうか、こんなことするのはアイツらしかいない。姫野さん、この手紙では放課後に旧校舎、ってあるけど、そこへ行けばオレたち生徒会と真っ向から敵対することになる。コイツらは生徒会に異常なまでに敵意をむき出しにして、学校行事で度々悪さをしているアンチ生徒会。まっとうな高校生活を望むなら、行かないほうがいいね。姫野さんが正しい選択をすることを信じてるよ」

 峻佑は手紙の送り主について話し、手紙を渚に返した。

「そう……栞ちゃんと少し話してみますわ」

 渚は手紙を受け取ってカバンにしまうと、そのまま教室を出て行った。





 昼休みは生徒会の仕事をすることに決めているので、峻佑たちはそれぞれ弁当を片手に生徒会室へ向かった。

「ん? ドアに何か紙が貼りつけてあるな……」

 生徒会室が見えてきたところで、両開きの大きな扉の真ん中に紙切れが1枚貼りつけてあるのを峻佑が見つけ、少し足を速めた。

「『生徒会諸君、ずっとやられ続けた我々だが、いつまでも勝者でいられると思うな。我らアンチ生徒会は諸君らに宣戦布告する』だぁ? ナメたマネしてくれんじゃん、アイツら……」

 峻佑は文章を読むと、紙をはがし、ぐしゃりと握りつぶした。

「し、峻佑くん。とりあえず落ち着いて、ね?」

 あまりの形相に、みちるが峻佑をなだめにかかるほどだった。

「ったく、最近アイツらほったらかしにしてたから調子に乗ってやがるな。ガサ入れ、やっとくか」

「うん、そうだね。最近おとなしいと思ってたら水面下で動いてたなんてね。そろそろ完全に叩き潰すべき時が来たのかもね」

 峻佑がボヤき、ちひろも後ろで頷いていた。結局、昼休みは仕事にならなかったのは言うまでもない。



「あー、賢悟。これからアンチ生徒会のアジトをガサ入れしに行くわけなんだが、その前にちょっと話、いいか?」

 放課後になり、一旦生徒会室に集まった生徒会メンバー4人。やるなら早く行こう、とはやる気持ちを抑えられなさそうな賢悟に、峻佑が話を振った。

「なんすか? 生徒会役員として一番楽しみだったことができるから早く行きたいんですけど」

 どうやら賢悟が生徒会に入りたかった理由はアンチ生徒会との決戦(ガチバトル)だったようで、一刻も早く行こうと言わんばかりに足踏みしながら聞き返した。

「まあ、落ち着けって。すごく大事な話なんだ。なあ、賢悟。お前は“魔法”ってものを信じるか?」

 峻佑は賢悟に落ち着くよう言うと、不意にそう切りだした。

「ど、どうしたんすかいきなり? えらい唐突な質問ッスね。んー、“魔法”って、ドラ○エやファ○ファンとかのゲームに出てくるようなものッスよね? 信じる信じないは置いといて、あったら面白いんじゃないすか? で、なんでまたこんな質問を?」

 賢悟はRPGゲームに出てくるものを想像したらしく、そう答えた。

「そうか、良かった。生徒会役員として一緒にやっていく上で、そろそろ話しておかないとならないことがあってな。実は……」

 峻佑はホッとした表情をすると、苦笑しながらちひろとみちるが本物の魔法使いであること、そして自身も彼女たちの始祖の幽霊の力を借りて多少ではあるけど魔法を扱えることを告げた。

「えぇ――――っ!?」

 初めて知った事実に賢悟は驚き、絶叫していた。

「驚くのも無理はないな。ついでに、確かお前のクラスに榊琢磨ってのがいるだろ? アイツはちひろやみちるの従弟で、同じように魔法使いだ。さらに言えば、昨日の放課後、転入してきた双子の姉妹がここに来たとき、お前に先に帰れって言っただろ? あれも同じ理由で、あの姉妹も魔法使いの末裔とのことだ」

 次々と峻佑が明かす事実に、賢悟は声も出せなかった。

「……なるほど、そうだったんすか。それで、先輩はなんでいきなりおれにそんな話を?」

 少し落ち着きを取り戻した賢悟が峻佑に訊ねた。すると、

「もしかしたら、これからアンチ生徒会とやりあう中で、いるかもしれないの。実際に目にして驚く前に、予備知識じゃないけど話せることは話しておいたほうがいい、って思ったのよ」

 みちるが峻佑の代わりに賢悟に話した。

「そうッスか。わざわざすんません」

 賢悟が上級生の気遣いに礼を言ったところで、

「よし、じゃあ行こうか」

 峻佑が立ち上がって3人に声をかけた。すると、

「そこはビシッと“行くぜ!”とか言ってくださいよ、先輩……」

 峻佑の気が抜けるような言い方でガクッとした賢悟がダメ出しをした。

「お、おう……じゃあ改めて、行くぜ!」

『おぉー!』

 峻佑が照れ笑いをしながら仕切り直し、生徒会の面々は生徒会室を飛び出した。

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