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05-1 生徒会室にて(前)

『はぁ〜……』

 放課後、生徒会室に3つのため息が重なった。

「ん? なんだ、みちるもため息なんかついて、どうしたんだ?」

 峻佑がみちるに訊ねると、

「うん、実は……」

 みちるが頷いて事情を話すと、

「あの姉妹、やることまで似てるのかよ……。全く、厄介なことこの上ない」

 峻佑はしかめっ面をして頭をかきながら呟いた。

「似てる、って……確か峻佑くんのクラスには姉妹の姉、渚って子が入ったんだよね? それに、私と同時にお姉ちゃんや峻佑くんもため息ついてたけど、そっちでも何か、あったんだ?」

 みちるが苦笑しながら逆に訊ねると、

「ああ、もう大変だよ。そっちは三角関係で済んでるけど、こっちはもう1人の転入生、九崎ってのも合わさって四角関係だよ。ホント、やんなっちまうよ」

 生徒会で取り仕切る仕事よりも面倒なものを抱えてしまった、とばかりに峻佑がグチをこぼした。

 1年生の春から生徒会に加入した峻佑たちは、その年の秋に行われた信任選挙で峻佑は副会長、ちひろは書記、みちるは会計の役職を経て、2年秋の選挙で今度は峻佑が会長、みちるが副会長、ちひろは引き続き書記を担当し、会計には――

「ちーっす。あ、もう先輩たちみんな来てたんですね」

 そう言いながら入ってきたのは、生徒会会計、2年8組の大谷(おおたに) 賢悟(けんご)。もともと、峻佑が会長になった段階では1年生の生徒会役員はいなくて、書記のちひろが会計も兼務していたのだが、冬を迎え、3学期が始まったその日に、賢悟が突然生徒会室に現れ、「役員になりたい」と言ってきたので、書記か会計どちらが適しているか試したところ、会計の書類整理をあっという間に終えてしまったことから、新会計として賢悟を迎え入れた。そして、現在に至る、というわけだった。

「ん、ああ。オレたちもさっき来たばかりだ、気にすんな。それに、遅れたって怒りゃしないって。うちの生徒会はこのユルさがウリなんだから」

 峻佑が手をパタパタ振ってもっと気楽にしろ、と賢悟に言ってやると、

「そうなんすか。ってか、始業式とその後教室で起こった出来事、全校の噂になってますけど、なんなんすか、あれ?」

 賢悟は納得したようなしてないような微妙な表情をすると、話題を変えて噂の真相を当事者に聞いてみることにした。

「んー、どこから説明するか……そうだな、まず、オレとちひろ、それにみちると生徒会メンバーではないけどオレらの親友、耕太郎ってのが正式に付き合ってる。ここまではいいな? で、今日転入してきた3人のうち、九崎ってのはちひろやみちるが小学校時代にクラスメートだったらしい。だよな?」

 峻佑が賢悟にひとつひとつ噛み砕いて話していきながら確認すると、2人は頷き、賢悟も「わかりました」とだけ言って、続きを促した。

「で、あとの2人、双子の姫野姉妹。姉の渚は――」

 峻佑が姫野姉妹について話そうとしたところで、

「はぁい、呼んだ?」

 いつの間に生徒会室のドアを開けたのか、入口のところに姉妹がそろって立っていた。

「うわっ! いたの? よく迷わず来れたね……って、そうじゃないな。ここは生徒会室だから、基本的に生徒会関係者以外立ち入り禁止なんだけど」

 突然の登場に峻佑は驚き、ちひろとみちるは自分たちの恋人を奪ってみせると宣戦布告してきた相手なので、険しい顔で姉妹を睨みつけていた。

「おい、賢悟。たぶんここはもうじき修羅場になる。今日は特に急ぎの仕事もないから、巻き込まれたくなかったら今すぐ帰った方がいい」

 2組の双子の姉妹のにらみ合いで生徒会室に火花が散る中、峻佑は額に汗を浮かべながらも、この場で唯一無関係の賢悟にそう声をかけた。

「えっ? は、はい! し、失礼します!」

 賢悟は一瞬不思議そうな顔をしたが、峻佑がさっきまでと違う、険しい表情になっているのをみて、危険を察知したのか素早く生徒会室を後にした。

「ふふ、さすが、わたくしが惚れたお人ですわ。あの後輩くんを先に帰らせたのは、秘密を守るためかしら? ねぇ、魔法使いの末裔さん?」

 賢悟が生徒会室を出て行ってから、渚が口を開いた。

『なっ!?』

 突如飛び出した渚の爆弾発言に、3人同時に声を上げてしまった。

「驚く必要はないわ。だって、わたくしたちも、あなたたちと同じ、魔法使いの末裔なんだもの」

 渚は平然とした顔で自分たちの正体を明かして見せた。

「ふーん……確かに魔法使いみたいね。あたしたちに比べてオーラが微弱だから気づかなかったわ。で、それをあたしたちにバラしてどうするの?」

 さりげなくちひろが渚を見下してチクリと口撃しながら訊ねると、

「ずいぶんと余裕ですわね。でも、こうされてもまだその余裕を保てます?」

 渚はこめかみをヒクつかせながらも、冷静さを失わずに、右手を峻佑に向けた。その直後、手から出た光の輪が峻佑を捕まえてしまった。

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