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ルウィーシアと祝福の島  作者: 雨天然
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 ロナ島を出て、半年が経った。


 帰るつもりのなかったその地に、ルウィーシアは再び足をつけた。

 船着き場で見た顔なじみは驚いたような顔をしたが、何も言わなかった。周囲から好奇の目を受けながら、彼女はロザリアの家、ベネットの元に向かった。

 ベネットの家は記憶にあるよりも寂れているようだった。玄関先の花壇はすべて枯れ、園芸用の道具も記憶にあるまま放り出されており、あれ以来動かされていないことが伺われていた。

 扉についている呼び鈴を引く。返事は遅かったが、のっそりとした足音が玄関までやってきた。


「……はい」


 掠れ消えそうな声と共に扉が開けられた。

 ベネットが姿を見せた。彼はルウィーシアを見て、目を見開いた。


「ル、ルウィーシア……」


 ベネットは最後に見たときより痩せ細り、顔色も悪かった。豊かで色濃かった髪も、その多くが白髪になり、急に老けてしまったかのように見える。表情も何かに怯えた様子だった。


「村長」


 名前は呼ばなかった。ルウィーシアはベネットの目を見た。ベネットの目に喜色が映り、涙を浮かべた。


「あ、おお……ルウィーシア……帰って」


 ベネットは焦点の合わない目でルウィーシアに手を伸ばした。動きは緩慢で、覇気のなさも相まって本当に老人のようだった。

 ルウィーシアは半歩下がった。ベネットの手は空を掻いた。


「村長に最後に言いたいことがあって、戻ってきました」

「なにを――」

「私は罪を償うわ。すべてを告白する」

「……な、何を」

「全部思い出したわ。私がロザリアを突き飛ばして落としたこと、あなたが私を庇ってロザリアを捨てたこと」


 ベネットが息を飲む音がはっきりと聞こえた。ルウィーシアは構わず続けた。


「だからあなたの元には戻らない」

「そんなこと、許されるわけないだろう……!」


 ルウィーシアが言い終わる前に、ベネットは彼女の首に手をかけようとした。

 それを阻んだのは、死角に隠れていたエンデだった。エンデはベネットの手を掴み上げ、何も言わずに押し戻した。ベネットは尻餅をついて倒れた。ルウィーシアは目を逸らさずに言葉を続けた。


「あなたの許しなんていらないわ」

「やめてくれ! 何のためにロザリアを見殺しにしたと思ったんだ! お前のためなんだぞ! それをどうして、どうしてめちゃくちゃにするんだ!」


 ベネットの目は血走っていた。


「なんのために! なんのために、娘を捨てたと……!」

「私だけのためじゃないでしょう。結局、やってきたことをバラされたくなかったからでしょう」


 だからあの日、彼は娘を見殺しにした。もし助けてしまえば、いずれ娘から不義のすべてを明らかにされてしまう。彼はそれを恐れた。恐れてルウィーシアから目を離さないようにしていたのだ。

 ベネットは虚ろな目を向けてルウィーシアの言葉を聞いた。やがて、よろよろと家の中へ戻っていった。


「だから、一緒に罪を償って」


 ルウィーシアはその背に今一度声をかけた。しかし、返事が返る気配もなく――。

 部屋の奥から聞こえたのは一発の銃声だけだった。


 ルウィーシアは目を閉じた。

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